「えぇ! ど、どうして、そんなこと言うのよ。そんなことあるわけないじゃん」
校門(こうもん)のところで顔を合わせた友だちに、さゆりは目を丸(まる)くして答えた。その友だちは、
「だって、すごい噂(うわさ)になってるよ。さゆりと三組の相沢(あいざわ)が付き合ってるって」
何でそんな噂が…。そりゃ確(たし)かに、相沢君のこと気になってはいたけど、ただそれだけで。まだ、話しもしたことないのに…。誰(だれ)がそんないい加減(かげん)な噂を――。
さゆりの頭に芳恵(よしえ)の顔が浮(う)かんだ。彼女だ。相沢君のこと打ち明けたのは彼女しかいない。さゆりは駆(か)け出した。息(いき)を切らしながら教室(きょうしつ)へ駆け込み、芳恵を見つけると、「あなたなの? 何でよ、変なこと言いふらさないで」
芳恵はさゆりの耳元(みみもと)にささやいた。「大丈夫(だいじょうぶ)よ、あたしに任(まか)せて。きっとうまく行くわ」
その時、誰かがさゆりの名前(なまえ)を呼(よ)んだ。振(ふ)り向くと、教室の入口(いりぐち)に相沢君が立っていた。
芳恵が声をあげた。「ここです。この娘(こ)が、さゆりで~す!」
さゆりは何が起(お)きているのかまったく理解(りかい)できないでいた。相沢君は、さゆりに言った。
「ちょっと、いいかな? 話があるんだ」
さゆりの思考(しこう)は停止(ていし)した。もう、何が何だか…。芳恵がさゆりの背中(せなか)を押(お)して、
「やったね。これで話しをする機会(きかい)ができたじゃない。がんばってね」
さゆりは芳恵の方を振り返り、「なに言ってるのよ。こんなことでうまく行くわけないでしょ。ムリだから、どう考えても…。もう、私、どうすればいいのよ」
<つぶやき>果(は)たして、相沢君の話って…。この恋(こい)は先(さき)へ進むことが出来るのでしょうか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。