ある日、彼女は見知(みし)らぬ男に呼(よ)び止められた。男は小さな声で言った。
「あなた、警察(けいさつ)に目をつけられてますよ」
何もしていない彼女は、怪訝(けげん)そうに男を見た。男は切迫(せっぱく)した感じで、
「あなた、好きな人に告白(こくはく)してませんね。これは告白未遂罪(みすいざい)にあたります」
「なにバカなこと言ってるんですか。そんなの聞いたことありません」
「それは公表(こうひょう)できない事情(じじょう)があるからです。あなたの回りにもいるはずですよ。急に引っ越しをされたお友だちとか、転勤(てんきん)を命(めい)じられた同僚(どうりょう)の方とか…。みなさん、告白未遂罪で逮捕(たいほ)されて、恋愛(れんあい)リハビリセンターへ送られてしまったからです」
「そんなこと…、あるわけないじゃありませんか。変なこと言わないで下さい」
「私はあなたのためを思って言ってるんです。今の生活(せいかつ)を捨(す)てるのか、それとも告白して幸せな結婚(けっこん)をつかみとるのか。勿論(もちろん)、この選択(せんたく)はあなたの自由(じゆう)です」
彼女は急に不安(ふあん)になった。本当(ほんとう)にそんなことがあるのか…。男は笑(え)みを浮かべて言った。
「心配(しんぱい)はいりませんよ。私共(わたしども)が全面的(ぜんめんてき)に告白をサポートさせていただきます。告白の段取(だんど)りはすべてこちらにお任(まか)せ下さい。あなたは告白だけに集中(しゅうちゅう)して下さればいいんです。今なら格安(かくやす)のお値段(ねだん)でやらせていただきます。勿論(もちろん)、これは成功報酬(せいこうほうしゅう)ですので、断(ことわ)られた場合(ばあい)には無料(むりょう)になっております。ですから、成功するまで何度でもご利用(りよう)いただけます」
<つぶやき>これは新手(あらて)の商売(しょうばい)なのでしょうか? 告白できない人はお気をつけ下さい。
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