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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0032「戦場の架け橋」

2017-05-15 19:34:15 | ブログ短編

 とある有名(ゆうめい)ホテルで創業(そうぎょう)三十周年のパーティが開かれていた。各界(かっかい)の名士(めいし)が招待(しょうたい)され、その子女(しじょ)の方々も奇麗(きれい)に着飾(きかざ)り花を添(そ)えた。このパーティ、ホテルの御曹司(おんぞうし)の結婚相手を見つける目的(もくてき)もあった。だから、お嬢(じょう)さまたちの力の入れようといったら、すごいものだった。御曹司が現れたとたん、水面下(すいめんか)で壮絶(そうぜつ)なバトルが繰(く)り広げられた。わざとぶつかってドレスを汚(よご)したり、御曹司に近づこうとする女性の足を引っかけて転(ころ)ばせたり、まるで戦場(せんじょう)である。
 その戦場の中で一人だけ、御曹司には目もくれず黙々(もくもく)と食事を楽しんでいる女性がいた。彼女は、隅(すみ)の方で淋(さび)しげに座っている娘(むすめ)に気がついて声をかけた。
「ねえ、これ美味(おい)しいよ」とご馳走(ちそう)を盛(も)った皿(さら)を差し出した。娘はそれを受け取り、
「あ、ありがとうございます」娘は悲しさを隠(かく)すように微笑(ほほえ)んだ。
「あら、大変(たいへん)。ドレスが汚れちゃってるわ。あなた、もう諦(あきら)めちゃうの?」
「私は、そんなんじゃないんです。ただの友だちで…。大学で知り合っただけで…」
「そう。あいつが呼(よ)んだんだ。ふーん、何か分かる気がするな。いいわ、私が呼んであげる」彼女はそう言うと、大声で御曹司を呼びつけて、「ダメでしょ。彼女をひとりにさせて」
「姉(ねえ)さん、大声出さないでよ。仕方(しかた)ないだろ、動けなかったんだから」
「さあ、これでいいわ。後は二人で楽しみなさい。じゃあねぇ」
<つぶやき>こんな小粋(こいき)なお姉さんがいてくれると、ちょっと楽しいかもしれませんね。
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