みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0029「ママの楽しみ」

2017-05-06 19:24:07 | ブログ短編

「ごちそうさま」
 愛子(あいこ)は箸(はし)を置いて、ため息をついた。その様子(ようす)を見て母親は、
「どうしちゃったの? いつもなら呆(あき)れるぐらい食べるくせに」
「別に…。なんか、食欲(しょくよく)ないの」
 母親は娘の額(ひたい)に手をあてて、
「熱(ねつ)はなさそうねぇ。あっ! もしかして、好きな人でも…」
「そ、そんなんじゃないよ。な、なに言ってるの」愛子はあきらかに慌(あわ)てていた。
「そうなんだ。よかったわ。あんたもやっと恋(こい)に目覚(めざ)めたのね」
「やっとって何よ。私だって、それくらい…」
「で、誰(だれ)なの? 高校の同級生? もう、告白(こくはく)したの。それとも、されちゃった?」
「勝手(かって)に決めつけないでよ。そんなんじゃないってば…」
「ママにも憶(おぼ)えがあるわ。あれは、小学六年の夏だったなぁ」
「まだ、子供じゃない。そんなの恋じゃないわよ」
「なに言ってるの。恋に齢(とし)は関係ないのよ。今度、家に連れてきなさい。いいわね」
「えっ? そんなの、無理(むり)だよ。パパがなんて言うか…」
「そうね、パパにはショックが大きいかもね。でも、パパがどんな顔するか楽しみだわ」
「ママ、何を期待(きたい)してるの? やめてよ、もう」
<つぶやき>父親の心をもてあそばないようにして下さい。繊細(せんさい)な生き物なのですから。
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