海外のニュースより

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「アメリカン・ドリームの終焉」:リフキンの近著『ユーロピアン・ドリーム』紹介。

2006年03月31日 | アメリカ社会

 アメリカの新聞でジェレミー・リフキンの近著『ユーロピアン・ドリーム』の書評を読み、原著を読んでみた。この本の副題には、「ヨーロッパの未来像は、静かにアメリカン・ドリームをしのぎつつある」と書かれいる。その冒頭の箇所を要約してみた。 「アメリカン・ドリーム」(アメリカの夢)という言葉は、歴史家のジェームズ・アダムズが1931年に『アメリカの叙事詩』(The Epic of America.)という著作で初めて使った言葉である。 「アメリカン・ドリーム」は、アメリカ人に固有のものだと考えられる。アメリカ人は、アメリカン・ドリームはアメリカという土壌の上でだけ実現可能な夢だと思っている。 英国からアメリカに最初にやってきた「ピルグリム・ファーザーズ」と呼ばれる清教徒達は、自分たちの危険な旅をイスラエル人のエジプト脱出の物語と重ね合わせた。彼らは古代イスラエル人と同様、自分たちは「神によって選ばれた民」であると確信していた。アメリカにやってきた清教徒達の目には、アメリカの自然は、神の栄光のために征服されべき自然であり、そこに新しいエデンの園を建設することが神によって与えられた使命であると考えた。この「選ばれた民」という観念は、その後「アメリカの夢」の通奏低音となった。多くのアメリカ人が自分たちは選ばれた民であり、アメリカは、「約束の地」だと考え続けた。彼らはアメリカが偉大になるように運命づけられており、「アメリカのやり方」は「神のやり方」であると信じた。自分たちが成功することは、自分たちが本当に神に選ばれているということの証拠であると信じた。 大抵のヨーロッパ人にとって、「神の選民」という考えは、奇妙であり、ちょっと恐ろしい。 ヨーロッパでは教会へ出席する人は、ますます減っているが、アメリカではかなり多くの人が熱心なキリスト教信者である。リフキンによると、アメリカ人の48%が米国は神に特別に護られていると信じている。ある福音主義教会の指導者は、世界貿易センタービルとペンタゴンがテロリストによって攻撃され、3千人近い人命が失われた理由は、神がアメリカの誤ったやり方を喜ばず、もはやこの選ばれた民に特別の加護を与えなくなったからだと示唆した。 これに対してヨーロッパ人の多くは、もはや神の存在を信じていない。デンマーク人、ノルウエー人、スエーデン人の約半分は神は、自分たちにとって問題にならないと考える。リフキンは、この点で、アメリカ人の考え方は、低開発国の人々の考え方に近く、他の工業化社会とは折り合わないと主張する。 自分たちは選ばれた民であるという信念は、アメリカ人を世界中で最も愛国的な国民にしている。ある調査によると、アメリカ人の72%は、自国に誇りを持っているおり、この割合は、26ヶ国中の第1位である。 イギリス、フランス、イタリア、オランダ、デンマークなどの西欧の民主主義国の国民の半分以下は、自分の国を非常に誇らしいと感じていない。 アメリカ人の10人中6人が、自分たちの国民は完全ではないが、自分たちの文化は、他の文化より優れていると思っている。これとは対照的に、英国人の37%、ドイツ人の40%、フランス人の3分の1しか自分たちの文化が他の文化よりも優れていると思っていない。ヨーロッパや他の地域では、ジェネレーションが若くなるに連れて、国民としての誇りが下がっている。 この意味で、ユーロピアン・ドリームは、グローバル時代の最初のトランス・ナショナルな夢だとリフキンは言う。そして彼は自分たちは選ばれた民であるというアメリカ人の信念のほうが新しい時代には有害だと言う。 [訳者の感想]アメリカン・ドリームよりもユーロピアン・ドリームのほうが、21世紀のグローバルな世界では役に立つというのがリフキンの主張のようです。 

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