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「新しい種類の軍事行動と開発援助」、リフキンの近著『ユーロピアン・ドリーム』より。

2006年04月01日 | 国際政治
 ヨーロッパ連合の外交安全保障政策は、二本の柱の上に築かれている。第一の柱は、軍事的参加の役割を領土の防衛についての古い国民国家的考え方から離れて、「平和維持と人道的介入」という新しいトランスナショナルな考え方にむけて再定義することである。第二の柱は、国民と国家の間のより大きな協力を確保するために、「経済援助」を外交政策として使用することである。危機紛争の解決がヨーロッパの軍事的目的の中心になっている。過去半世紀の間、ヨーロッパ連合のメンバーは、世界中の紛争地域に派遣された平和維持軍の80%を提供し、再建のための基金の70%を拠出した。時に「しっかりした平和維持」とか「第二世代の平和維持」といわれるヨーロッパの軍事作戦の目標は、戦っている当事国の間の暴力を停止し、効き目のある平和的合意を確立するための条件を作り出すことである。この種の軍事的介入は、全く新しい軍事的戦略を必要とする。「安全な港」や「飛行停止地帯」や「人道的廊下」というような新しい軍事用語は、近年、事典の一部になった。 新しい軍事的方式は、通常の軍事的参加とは反対の仮定から出発する。古い軍事的図式では、考え方は、敵に最大の兵員の損害を与えることであった。新しい軍事的図式では、目標は、紛争当事国の双方における兵力の損失を最少にすることである。兵士に対する命令は、もはや、自分の生命を危険に曝し、敵を殺すことではない。平和維持部隊は、別の使命を持つ。市民の生命を救うために自分の生命を危険に曝すことである。ロンドン経済大学の「グローバルな統治と人権」担当教授であるメアリ・カルダーは、次のように簡潔に言う。「合法的な武器の担い手である兵士は、自分の国のために死ぬ覚悟がなければならかったが、平和維持軍の兵士は、人道のために自分の生命を危険に曝すのだ。」ヨーロッパ連合の構成国が提供した平和維持軍の兵士の数は、米国の10倍に達する。「ヨーロッパは、世界の警官であるという責務をアメリカの肩に背負わせている」というしばしば聞かれるアメリカ人の主張は嘘である。 ヨーロッパ連合は、人権についてのヨーロッパ合意を侵害する場合には、秩序回復のために、どの構成国の国境へも軍隊を送ることが出来るという考え方自体、革命的である。軍事行動の目的は、もはや土地を占拠したり、人々を支配したり、財産を蓄えたりすることではなくて、むしろ、人々の普遍的な人権を保護することである。雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載された論文の中で、レスリー・ゲルブとジャスティン・ローゼンソールは、この新しい種類の軍事的思考の歴史的な重要性を指摘している。EUのような統治制度は、彼らが軍事的行動の目的をどのように感じるかの点で根本的な変化を示している。「考えても見たまえ。道徳が主権を打ち負かすという原理を国家が是認しているのだ。」 
 ヨーロッパ連合の外交安全保障政策のもう一つの柱は、「開発援助」である。大抵のアメリカ人は、合衆国が世界中で一番気前の良い国だと思っている。それは事実ではない。アメリカの対外援助は、国民總収入(GNI)の僅か0.1%であり、ヨーロッパ諸国の3分の1に過ぎない。ヨーロッパは、世界中の民間の開発援助の50%を提供し、世界中の人道援助の47%を提供している。米国は36%を提供しているに過ぎない。2002年には、EUの人道援助は、殆ど12億ユーロ(1680億円)に達した。人道援助は、難民や避難者への援助を含み、緊急援助は、自然災害や民族紛争の犠牲者を助けている。だが、合衆国は、食糧援助では指導的供給者である。ヨーロッパの開発援助の増大する割合は、構成国からEU自体へと移されている。現在、EUは、構成国によって集められた開発援助基金の17%を管理している。(以下省略) 
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