海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「もっと多くの戦争という考えに反対する」と題する『ツァイト・オンライン』の論説。

2008年08月02日 | アフガン問題
アフガニスタンでは、うまくいっていない。治安状態は、ますます悪くなり、爆弾テロや自爆テロの数は増大している。カルザイ政府の腕は、カブール市の境を越えて遠くへは及んでいない。地方の軍閥や麻薬売買のボスは、内閣で閣僚の傍に座っている。腐敗とコネ経済とがこの国ではやっている。経済的失敗と誠実さの義務の驚くほどの欠如が手を組んでいる。経済は落ち込み、失業は多くの人々にとって永続的な状態だ。ケシの花の栽培は、多くの村人にとって、唯一の収入源である。伝統的な部族構造が、国家建設の努力を妨げている。
もっと多くの軍隊を送れば、何か変わるだろうか?それは疑わしい。5万名の兵士が既にいる。たとえば一平方キロあたりコソボと同じだけの密度で兵士を置くためには、30万人から40万人の兵隊を派遣しなければならないだろう。これは端的に考えられない。このような外国軍隊のプレゼンスは、もっとも大きな確率で、過激派の蜂起をもっと激化させるだろう。
しかし、また、民間の復興援助の拡大も、万能薬ではないだろう。確かに、国際的な国家共同体は、これまで、十分なことをしてこなかった。150億ドル(1兆5千億円)の援助資金は、2001年以来アフガンに約束された金額の半分に足りない。この金額の3分の1は、外国人顧問、外国の援助団体、外国の大手の供給者に支払われた。この金額のかなりの部分は、貪欲なアフガン人の役人や政治家たちの懐に入った。同様に、西欧は、それに加えて数十億ドルを承認したが、プロジェクトのよりよい調整もなく、金の使途についての厳格な監視もないために、効果は限られたままだろう。
少し前に、公表された研究報告によると、アメリカのシンクタンクである「ランド・コーポレーション」は、米国政府が「テロに対する戦争」をはじめからから考え直さねばならないという立場をとっている。軍事作戦は、ゲリラに対してはあまり効果がなく、警察と情報組織の仕事はもっと重要だと述べている。結局、政治的解決に到達するためには、反乱軍との交渉をも嫌ってはならない。
 この主張は理性的である。必要な資源と手元にある資源との間に大きな裂け目が開いたと白状しよう。2,300年前にアレクサンダー大王が失敗し、19世紀には英国が失敗し、20世紀にはソビエト連邦が失敗したところで、軍事的に成功することができるなどと信じ込まないでおこう。また、われわれがアフガン社会を西欧の模範にしたがって作り直せるという仮定にも別れを告げるべきだ。単なる試みでさえも、深く根ざした伝統的宗教的価値に反するだろうし、それゆえ、挫折するように断罪されている。
結局、タリバン風の政権がわれわれの到達できる最善の政権であるかもしれない。敬虔だが、アルカイダとの結びつきがなく、イスラム教的だが、テロリスト的でない、西欧的ではないが、反西欧的でもないそういう政権である。
[訳者の感想]アフガンに西欧風の民主主義を押し付けてもううまく行かないとヨーロッパの知識人は感じ始めているようです。筆者は以前『ツァイト』の主筆だったテオ・ゾンマーです。
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