海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「科学だけが気候変動からわれわれを救う」と題する『ガーディアン』紙の評論。

2008年01月20日 | 環境問題
のだめカンタービレ (16)
二ノ宮 知子
講談社

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 人類があまりに大きすぎる現実に耐えられない実例があるとしたら、それは、気候変動についての目下の議論である。理性のある人なら誰も、平均気温が上昇していること、この変化が人間の活動によって引き起こされたということをもやはや疑わない。この科学のはっきりした発見を拒否する集団は別として、われわれがこの前例のない挑戦に直面しているということは、誰もが認める。同時に、これは、オーガニックな食物を食べ、飛行機に乗るのを拒否し、屋根の上に風車発電機を載せるというような気休めのジェスチャーによっては解決されない危機である。
 しかし、なさるべき決断をする段になると、環境保護主義者を含めて大抵の人々は、現実的な考え方に伴う不都合を見て、たじろぐ。ジョージ・W・ブッシュは、気候学がアメリカ経済を破壊する左翼のたくらみではないと説得されたように見える。しかしながら、われわれの他の政治的指導者と同様に、彼は成長には限界はないと主張し続けている。われわれがバイオ燃料のように環境にやさしい新しいテクノロジーを採用する限りは、経済的拡大はこれまでと同じように続くというわけだ。
 しかし、自由市場主義者の反対側にいる環境保護派も、持続可能な増大や再生可能なエネルギーが存在すると信じている。彼らが言うには、環境危機の根は、化石燃料にわれわれが頼りすぎている点にある。われわれが風力発電や太陽発電に切り替えさえすれば、すべてはうまくいくと彼らは信じている。(中略)
 だが、環境保護派の定番となったこの主張は、うまく行かない。多くの再生可能なものは、それほど効果的でもなく、環境にやさしくもない。効率の悪い風力発電は、化石燃料を断念することを可能にしない。オーガニックな食糧生産への移行は、動物の生態に有利で燃費を減らす長所があるが、増大する人口を養うために農地が拡大されることに伴う原生林の伐採を止めることはできない。(中略)
 環境問題の議論で無視され、否定されている不愉快な事実とは、世界の富裕な国々がエンジョイしている類のライフ・スタイルは、国連が今世紀の半ばに起こると予測している90億あるいは100億の人類全体には、拡大されないということである。資源にかんして、人類の数は、維持可能ではないのだ。(中略)
 環境保護派も自由市場を唱えるエコノミストも宗教的原理主義者も、みんな人口過剰などいうものはありえないと信じている。配分を改善したり、成長を早めたり、人間的価値を変えれば、解決できないことはないと彼らは信じている。(中略)
 とどめがたい地球温暖化にもかかわらず、人間らしく生活できる世界は追求する価値はまだある。だが、それにはリアリスティックな思考能力が必要だ。人間的条件のための技術的解決は、存在しないのにそしていまや不可避となった環境的崩壊をうまく処理するのに、テクノロジーを知的に使用することが不可欠である。ハイテクによる解決に対する非合理的な敵対のゆえに、環境保護派は、ジョージ・W・ブッシュと同様、環境に対する脅威になりおわる運命にある。
{訳者の感想}筆者は日本でも有名なイギリスの政治哲学者ジョン・グレイです。かなり、ひねくれた議論ですが、耳を傾ける値打ちのある議論だと思います。
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1 コメント

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マルサス (yosi29)
2008-03-09 17:59:06
100年後中国共産党の実施した一人っ子政策が
世界史の教科書で賞賛されるかも知れない。

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