海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「長引く植民地戦争」と題するタリク・アリの論説。

2006年07月23日 | 国際政治
 1967年の6日戦争の後で行われた彼の最後のインタビューで歴史家のアイザック・ドイッチャーは、次のように言った。「アラブ諸国に対するイスラエルの戦争を正当化したり、大目に見ることは、イスラエルに対して非常に悪いサービスをすることであり、その長期的な国益を損なうことだ。」イスラエルとプロシャとを比較しながら、「ドイツ人たちは彼ら自身の苦い経験を『勝ったために死ぬこともある』と表現した。」
 今日、イスラエルの行為において、われわれは傲慢のいくつかの要素を探知する。つまり、帝国の傲慢、現実の歪曲、その軍事的優位を意識していること、弱い国の社会基盤を破壊する際の自己正当化、人種的に自分たちが優れているという信念などである。「ガザやレバノンにおける民間人の生命の喪失は、たった一人のイスラエル兵士の死ほどは問題にならないのだ。この点で、イスラエルの行動は、アメリカによって、正当だと認められている。
 ガザに対する攻勢は、選挙に勝ったという理由でハマスを破壊するように計画されている。ガザにいた「国際社会」は、集団的な処罰を蒙った。無辜の人々が死につづけている。このことはG8のメンバーにとっては、なんでもない。何もなされなかったのだ。
 イスラエルの無謀さは、アメリカ政府によって承認されている。この場合、彼らの利害は一致している。彼らはヨルダンを手本にしてレバノンをイスラエルとアメリカの保護国にすることで、シリアを孤立化し、転覆したいと思っている。彼らは、これがレバノンのもともとのデザインだと主張している。現在のレバノンは、大部分フランス殖民地主義の人工的な産物だ。少数派のマロン派キリスト教徒によって支配された地域を形成するために、それはシリアから切り取られた。
 この国の信者の分布は、一度も正確に人口統計に記載されたことがない。そのわけは、多数派モスレムが政治的システムにおいて正当に代表されることを恐れたためである。パレスチナ人難民の苦境によって高まった宗派的緊張は、1970年代に内戦に発展し、アメリカの暗黙の承認のもとで、シリア軍の介入を招いた。
 レバノン首相ラフィック・ハリリの暗殺は、シリア軍の撤退を要求する中産階級による巨大なデモを引き起こし、西欧の援助組織は、「レバノン杉革命」の進行を助けにやってきた。ワシントンとパリに後援されて、シリアは撤退し、ベイルートに弱い政府ができた。だが、レバノンの諸派は、羽を広げたままだった。(シリア寄りの)ヒスボラは、武装解除されなかった。
 私が5月にベイルートにいたとき、イスラエル軍がレバノンに侵入して、パレスチナ人の集団出身の二人の「テロリスト」を殺した。パレスチナ人のグループは、ロケット砲で応戦した。イスラエルは、国境近くの村と司令部に50発の爆弾を投下した。
 最近のイスラエルの攻勢は、敵の城を取るように計画されている。それは成功するだろうか?長引く植民地戦争が控えている。なぜならば、ヒズボラは、ハマスと同様、大衆の支持を得ている。アラブ世界は、その力を植民地占領軍に抵抗する「自由の戦士」だと見なしている。
イスラエルの収容所には、9千人のパレスチナ人政治犯が収容されている。それがイスラエル軍兵士がつかまる理由なのだ。結果として囚人の交換が行われる。イスラエルの最近の攻勢を根拠にしてシリアとイランを非難することは、軽薄である。パレスチナ問題が解決され、イラクの占領が終わるまで、この地域には平和はないだろう。「国連」がヒズボラを抑え、イスラエルを抑えないというのは、馬鹿げた考え方だ。
[訳者の感想]レバノン紛争についてアラブ側の意見を聞いてみたいと思って訳しました。
タリク・アリは、小説家、歴史家、評論家、映画製作者で、『ガーディアン』紙以外にもよく寄稿しているようです。
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