海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「無力な陰の操り手」と題する『南ドイツ新聞』の記事。

2006年07月18日 | 国際政治
昨年レバノンからシリア軍が撤退するまで、シーア派のヒズボラ運動はシリアとイラクに密接に結びついていた。イデオロギー的にも、世俗的な日常の決定においても。それ以来、ヒズボラの羅針盤はますますテヘランの方に向いていた。なぜなら、シリアは、西欧からの圧力とイスラエルの空爆を恐れて、アメリカ政府によってテロリストだと刻印されたヒズボラとの協力をあからさまにすることに関心がなかった。
それどころか、シリア政府は、最近数ヶ月、密かにシリアの港湾を経由するイラク北部のアメリカ軍の後方支援の輸送を許可していた。それによって、バシャール・アサド大統領の顔に吹き付けていた強風がゆっくりと弱められた。
紛争に巻き込まれないこと、これが、ガザ地区とイスラエル北部の戦火が勃発したとき、シリア人が保持しようとした原則である。彼らがこれを維持できるかどうかは、確かではない。
というのも、この全地域におけるイランの立場にとって、シリアは、前哨となっているからである。まさに現在、シリアは重要である。なぜなら、イランは核開発を巡って西欧の安全保障を取り付けようとしているからである。
シリアとヒズボラとは、テヘランが簡単に手放せないカードである。核問題におけるイランの交渉者であるアリ・ラリジャニは、レバノンでの戦闘の開始の後、急いでダマスカスへ旅行した。
アフマディネジャド・イラン大統領は、イスラエルがシリアを攻撃した場合、手をこまねいていないぞと警告した。だが、緊急時に、以前の紛争に際してアラブ系の元首達がそうだったように、大言壮語に終わらないために、彼に何ができるだろうか?彼の軍隊は、イスラエルを射程距離に入れる1300キロの中距離ミサイルを持っている。
だが、イラン人たちは、信頼できる情報によると、そのミサイルの数は10発以下だと言われる。特に数年は、核弾頭や他の大量破壊兵器を取り付けることはできない。その誘導システムは大部分、テストされておらず、目標への正確さは不確かだ。
古臭くなった空軍は、殆ど機能しない。地上の作戦には、長距離輸送の能力が欠けている。特にイランとシリアの間の国際的国境の故に殆ど考えられない。イスラエルの敵であるアフマディネジャド大統領がそれを越えて活動したいと思っている赤いラインは、ガザにある。
イランがこの地域でなしうることを、ヒズボラがイラン製のロケットをイスラエルの軍艦めがけて打ち込んだときに示した。この地域では、イラン人は、武器庫を開発し、世界市場で買った。
彼らは、海面すれすれに飛行するミサイルと小型潜水艦をかなりの数持っている。それはロシアの「シュクワル」型ミサイルの真似である。
ペルシャ湾にいるアメリカ艦隊にとっては、これらの武器は危険であり、ホルムズ海峡を通る国際的な航行にとっては、使用されれば、致命的かもしれない。
これに対して、スンニー派のアラブ人がよく口にする地中海からペルシャ湾に到るイランの権力道具として「シーア派の弧」というのは、戦略上の詩に過ぎない。
シーア派は、レバノンでは人口の40%を占めるが、シリアでは、アサド大統領が属するアラウイ派に支配されている。できかかっている新生イラクやスンニー派の首長に支配されたバーレーン、サウディ・アラビアのハッサ地方では圧倒的にシーア派住民が多い。これらの民族集団のどれもテヘランによって命令される用意はできていない。
[訳者の感想]イスラエルの軍事的な優勢にたいして手も足も出ないイスラム諸国の不甲斐無さが暴露されていますが、シリアやイランも大したことはできないだろうというのがこの記事を書いたルドルフ・ヒメリ氏の判断だと思います。彼は「ドイツ・マーシャル基金」の研究員だそうです。
コメント
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