高橋まゆみ・創作人形「まゆみの気まぐれ日記」

農道をかっぽして歩く笑顔のおじいちゃん。姿が見えなくなるまで手を振るおばあちゃん。やさしさはいつもそばにいた。

干し芋と出版社

2008-01-24 12:07:42 | まゆみのつぶやき室



この季節、千葉の知りあいから干し芋が届く。
箱一杯に詰められたやわらかくて、自然の甘みがあって、こんなに美味しい物はない。
ついつい、お茶を飲みながらつまんでしまう。店で売っているような、粉が真っ白く吹いているわけではなく、最初頂いた時「何これ?」と食べず嫌いだった私の舌を唸らせた。

聞くと、茨城産の手作りだそうな。
味を見てもらう訳にいかないので、目だけ、おすそ分けします。


さて、最近残念なニュースを知った。
私の初版本「まなざし」を出版した、新風舎が倒産の危機・・・再生不可能との事である。

今のように会社が着いて、作品展を廻る以前、個人でギャラリーなどで作った人形を販売していた。
しかし、売れば売るほど、何か空しさも感じていた。
その時の思いや勢いをぶつけて出来た作品は二度と出来ないからだ。
そんな時ふと「本を出しませんか?」と言う文字が目に飛び込んできた。
電話をかけた。

「手元から離れる作品を本と言う形に残したい・・・自分の証が欲しい」と。
出版社の方と会う約束を交わし、たまたま行われていた穂高のギャラリーで、作品を見てもらいながら打ち合わせる事にした。

そこに一人のすらっとした、30代くらいの女性が現れた。
名刺には 名前の上に社長の文字。
え?彼女が??クエスチョンであったが、物静かなその女性は好感度が高かった。
しかし、作品に対して、真剣に見入るわけではなく、さらっとした感じで打合せに入る。
「出版には、3通りあって、個人で全て負担する自費出版、会社と個人で半々という共同出版、そして会社が全て負担する方法」
私はその中の共同出版と言う提案をされた。

人形を売って得た全てのへそくりをはたいて、出版を決めた。
写真も、知りあいのアマチュアカメラマンから地元のカメラマン、また、自分でも撮影した物を使った。
構成もほとんどが自分のイメージで作り「こんな感じで」と、印刷する前のゲラを渡した。

手をかけた分、出来上がった「まなざし」は愛着があった。
地元の本屋で見つけたときは胸が高鳴った。

それからは、全国巡回展という状況になったので、作品展会場でも売れるようになり、へそくりは、戻ってきた。

新風舎はその後、コンテスト形式の出版を募り、個人向け出版の王道となっていった。

今考えれば、社長と書かれたあの女性も、出版後は自分と関わる事もなく連絡もとれない。今に至って、どのくらい増刷されたのかもわからない。
しかし
私が出した頃は、まだ先駆けだったので良かったのかもしれない。
何処で歯車が狂ったのか解らないが、社員の方々の気持ちを考えると残念でたまらない。

ただ、一つ言える事は

私にとって、この「まなざし」は、手元に一つも作品が無かった作り手の証として、今の仕事に繋がっているという事だろう。