白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(159)コロッケ公演「神隠し」を見て

2016-11-13 09:15:48 | 観劇
コロッケ公演「神隠し」を見て考えた

新歌舞伎座にコロッケの公演を見に行った 日頃から可愛がっている若い関西の役者Uくんがいい役を貰ったので是非見てくれと招待してくれたからである

なるほどいい役である 聞くとこの公演は今年の6月に明治座でやった芝居の再演である 
明治座のメンバーはコロッケの長兵衛はじめ特別ゲスト中村メイコ(山田スミ子)青木隆一(U君の役)佐藤B作(寛太郎の役)山崎銀之丞(井田國彦)らで嫁役の水町レイコはそのまま 近江屋主人の北町嘉朗もそのまま あとの大勢の役も殆どが関西の役者ということで明治座に比べて三分の一は安いギャラでの公演である 明治座は最後宙乗りもあったらしいのでその分も安くなっている

Uの役はショーのゲストの青木隆一のお遊び的出演の役だったので演出家はカットするつもりであったがUくんを買っているプロデューサーの強い押しで消えずに済んだのである
Uの尊敬している先輩寛太郎がやっている死神の助手という「そのまま」の役である
実際よくやっていて評判もいいらしい 役が良ければ少しでも見に来てもらいたいのは人情で彼は関西の役者の中で山田スミ子に次いで切符を売ったらしい

この「神隠し」・・もうちょっとましなタイトルはなかったのかしら・・は「文七元結」と「死神」の落語が原作となっている 
どちらも三遊亭円朝の作と言われている落語である
「死神」は円朝がそのころ輸入されたグリム童話「死神の名付け親」にヒントを貰ったらしく珍しくどことなく洋風ではある 
昔梅田コマで装置家のKさんの道具帖が公演タイトル名のところに紙を貼り付けてあったので失礼ながらめくってみると「明治座・死神」とあった ロウソクだらけの岩場のセットであった どんな芝居か興味があったので調べると三木のり平さんの「死神」であった

それにしても長い 気づいたら二時間弱もあった
幕開きの女郎屋(店名は佐野槌・僕は梅沢派だからいつも角海老にした)は長すぎる 
原作通りかも知れないが金を貸す代わりに娘お久を預かる話だけでいいのであって女将の娘などもいらない それにしても衣通の女将は何だ? 関西にはもっとギャラも安くていい女優が一杯いると思うが・・
二杯目の川端 決まりの心中話に死神二人が絡む 
あとは死のうとした主人公に死神が取り付いて 医者でぼろもうけの話もトントンと六道の辻でのロウソクのくだりもどういう風にオチをつけるか興味があった(落語ではそこが見せ場だ)話の展開上主人公を死なせる訳にはいかないのでこのオチは仕方がないか
大詰めはもっと短く家族の絆を歌いあげた方がいいと思った 文七とお久の気持ちを聞く場面は大家(役者名不祥)の演技が弱く なくてもいいのかも知れない
お久と一緒に幕開けの女郎たちもやってきて賑やかに明るく終わる方法もあったのではないか 梅沢の「文七元結」のラストは近江屋の手代たちが角樽をもって居並びその後ろに角海老の女郎たちが5~6人居並ぶ 
以上自分だったらこうすると思うことを書き並べてみた

(2016 10・31 昼の部 新歌舞伎座にて観劇)