白鷺だより(476)台本 ある夜の忠治

梅沢武生演出による
弥太 梅沢富美男
お吉 竹澤隆子
吉兵衛 梅沢智也
忠治 梅沢武生
金蔵 市川吉丸
権蔵親分 梅沢修
梅沢劇団には台本はない
全て口立てである
資料の為 まとめて残します
一景 居酒屋
弥太、お吉夫婦がいとなむ居酒屋の中
お吉の父で目明かし吉兵衛が子供を抱いている お吉奥より出て二人のやりとりがあって
弥太が木戸口より帰って来る
吉兵衛 おお弥太帰って来たか
弥太 ええ、只今帰りました
吉兵衛 なあ、弥太 ちょっとお前に話して お きたい事がある お吉 子供を抱い て 奥 へいってくれないかい
お吉、吉兵衛 より子供を受けとり奥に入る
吉兵衛 弥太、あの忠治親分が山を下りなす ったそうだ いつかこの店にも立寄 る こともあるかも知れん その時は 丁重 にお断り申しあげろよ
折角幸 せ になったお前ら夫婦だ
子供もいる‥‥
堅気になった弥太の昔の親分である国定忠治の為に弥太夫婦に火の粉が降りかかる事を心配している吉兵衛 二人のやりとり暫くあって
吉兵衛 弥太、それじゃあ解ったな
吉兵衛木戸外に出る
外は吹雪
お吉奥より出て
お吉 お前さん、それじゃあ私は使いに行っ
てくるよ 奥に子供が寝てるから
お吉使いに出る
弥太、一人でイロリの火を見つめる
忠治 木戸口より出る
弥太 ああ、親分 ようこそお出で下すった
さあどうぞ火の側へ
親分、今日は 泊まっていっておくんなさ い
父から止められている弥太だが親分に対しての忠誠心がもちあがる 二人のやりとりあって奥から赤ん坊の泣き声 忠治、気付いて
忠治 弥太、お前には子供がいるのか
弥太 へえ、あっしにもどうにか男の子が
一人
忠治 そうか、それは良かった、それじゃあ
俺はこれで帰るとするか
忠治子供を気遣って帰ろうとするが弥太、忠治を引き止める
弥太 どうか親分、今夜一晩だけでも泊ま っ ていっておくんなさい、親分
忠治 それ程まで言うのなら今晩だけでも
厄介になるか
弥太、忠治を奥に連れて行く
弥太、戻って笠を隠そうとした時お吉帰って来る
お吉 お前さん、今戻ったよ !あれ!誰か
来てなさるんかい
弥太 お吉、今忠治親分がお出でなすって
奥にいったところだ 何か温かい物で
作ってあげなよ
二人のやりとりあってお吉奥に入る
木戸口より金蔵入る
金蔵 弥太、兄貴が土手下で待っているか ら
すぐ来いってさ
二人やりとりあって金蔵木戸口より出る
お吉奥より出て弥太とのやりとりあって
弥太、匕首を持って外へ
お吉 あんた!無事で帰って来て
心配するお吉
そこへ鮫の権蔵一家が忠治を探しに出る
お吉とのやりとりがあって 家中を探し回るが見つからず
権蔵 忠治を匿ったりすると承知しないぞ
権蔵一家去る
弥太、息を切らして帰ってくる
弥太 お吉、親分は、親分は大丈夫かい
奥に入って忠治がいないのを気づき
弥太 お吉、テメエ親分を売りやがったな
お吉 お前さん、私ゃ知らないよ 本当に知 ら ないよ
弥太 うるせぇ、じゃあ何で親分はいねえん だ(と お吉を追っ掛け)
匕首でお吉を刺そうとする時 吉兵衛出て
吉兵衛 おっとっと、そんな物騒なものを
いくらお前さんでもそれだけは
勘弁 して下せぇ (止め入る)
三人縺れて店の中へ
お吉 お父つぁん、どうか十手を返して下さ い そうでなければ私達夫婦は駄目 になってしまいます お願いです
お父 つぁん
吉兵衛 考えながら、ふと弥太の異変に気づき
吉兵衛 弥太、おめえ何かやらかしたなあ
弥太 とっつぁん、実はたった今土手下で 人 を殺って来てしまった
お吉 なに!お前さん
驚き、やりとりあって
吉兵衛 弥太、てめえ人殺しを‥‥御用だ!
十手を振りかざす吉兵衛、止めるお吉
その時忠治、木戸より出て
忠治 おっと外はえらい雪だぜ
雪を払って囲炉裏の方に向う
弥太、吉兵衛争いを止め 吉兵衛十手をおさ める
忠治 よく冷える晩だぜ 熱いのを一本頼む ぜ
お吉 はい
お吉奥に入り熱燗を持って来て又奥に入る
吉兵衛の目合図に気づき弥太も奥に入る
忠治、吉兵衛 指しつ指されつ呑みながら二人芝居が続く
吉兵衛 それじゃあそろそろ見廻りに行かな くっちゃなあ
吉兵衛台の上にそっと通行手形を残して出て行く 奥より弥太出る
忠治 おい弥太!おいらの手に縄を掛けろ、 お前のとっつぁんの手柄にさせてやんな
弥太 親分、出来ねえ、いくらなんでもそれ だけは出来ねえ
忠治 うるせぇ、早くしろ! 俺は気がみじ けえんだ
その時鮫の権三一家木戸より出る
権三 やい、弥太、土手下の殺しはテメエが やったんだな 神妙にしろ
子分 御用だ
弥太とのやりとりがあって
忠治 うるせぇな
権三 何っ、テメエは誰だ
忠治 俺の名前が聞きてえか 聞きたいなら聞かせてやろう、耳の根さらってよおーく聞け
俺の名前を掌に三度書いてペロリと舐めりゃ
瘧はおりる熱は下がる 真男の守り本尊、上州は佐井郡為我井の荘国定村、長岡忠治、人呼んで国定忠治のツラをよおーく見ろ
権三 忠治、御用だ!
忠治 女将さん、呑み代はここへおくぜ 余った金があったら可愛い子供に何か買ってやっておくんなまし 弥太、何の土産もなかったが土手下の殺しは誰でもねえ、この俺だ
権三 何、忠治 御用だ
子分 御用、御用
忠治 じゃかましい(木頭)表に出ろ
盆が廻る
雪の降る中 子分達が走り出て
子分 来たぞ
(ムーンライトセレナーデ)が流れる
忠治VS 権三一家の立ち廻り
一家皆殺し
忠治掛かってくる男が吉兵衛だとわかって刀を納め捕まろうとする 吉兵衛、忠治を捕らえようとして お吉、弥太に止められる
吉兵衛思い直して忠治の首に通行手形をかけてやる
忠治男泣き
お吉 三度笠、弥太、合羽を忠治に
忠治受けとり三人顔を見合わせ泣き上げる
忠治行きかけるのを弥太止める それを引き戻す吉兵衛
弥太 親分!
忠治 弥太!
忠治決まって(木頭)「赤城の子守歌」
降りしきる雪の中、忠治花道へ
キザミにて 幕
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