おめでとう田中博康騎手！！

私はこのユニコーンＳを走る前から田中博康騎手の騎乗に対してやや否定的でした。
領家厩舎はその気になればいい騎手を手配できる事を知っているからです。
たしかに田中博騎手に落ち度は無く、降ろす理由はありませんでした。
しかし、今回は重賞。普通ではありません。経験が必要です。
しかも人気馬ですからマークもきつくなり、思うように競馬ができない事は容易に想像できます。
私はすかさず騎手交代を考えました。
やはり、ここ一番には相応しい騎手がいるからです。


田中博康騎手は埼玉県の新座市の出身。
中学時代には剣道で全国大会にいったほどの人物です。
私も中学時代は剣道部でしたので全国大会に行くことがどれだけ大変かよく分かります。
彼は剣道で礼節を学びました。
そして高橋祥先生の下で修行して、技術はもとよりその人間性に磨きがかかりました。
三年は免許を取らないという師の教えを守り、浮つく事も無くしっかりと地に足をつけて、休日にも牧場などに馬に乗りに行くような努力を積み上げてきました。
彼は柴田善騎手を目標に、あたりの柔らかい馬の力をストレートに出す騎乗スタイルを模索してきました。

そしてフリーになりめぐってきたチャンスがシルクメビウスでした。
彼はくすのき賞快勝のあとで領家先生に「次も乗せてください」と申し出たそうです。


相当緊張しています。
表情はこわばっています。きっと眠れなかったでしょう。
しかし、彼はレース展開よりも「メビウスとの折り合い」を考えていたようです。

スタートを上手に出てどのポジションにつけるのかは素人の私には最大の関心ごとでした。
しかし彼は迷いもなくメビウスとの折り合いに専念し、後方３番手のポジションとなりました。
私は思わず「まずい…」と思いました。
馬場を考えても後ろ過ぎるからです。
しかし、折り合いをつけて直線で解き放てば必ず伸びるという馬への信頼を垣間見るような気がして思わず熱くなりました。
（しかし折り合いに苦労している感じもあってすぐに素に戻りました）

彼はいつものようにメビウスを３コーナーくらいから動かします。
元々積極的に前に行って馬の力を出し切る騎乗スタイルの田中博騎手にあっています。
直線に向いた時には絶好の位置まで来ています。
田中博騎手は早めに仕掛けます。
メビウスはとき放たれた矢のように馬場の中央を前のグロリアスノアをめがけて突っ込みました。


お辞儀をしながら表彰式に向かう田中博康騎手。　謙虚です。


初重賞おめでとう！

多くの人の祝福を受け、田中博騎手は汗びっしょりになり私と握手をしてくれました。
「ありがとうございます」彼は私の目を見てこう挨拶をしました。


これからもメビウスを頼んだぞ！新座の星、博康！！