それほど激しい言葉ではなかったけれど、ジャーナリストの江川紹子さんは日本のメディアアの腰の引けた報道ぶりを突いた。成熟した(?)日本社会においては、どうやらメディアに属する人たちもおかしく成熟しまった??
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昨日(12月2日)午後、北大大学院のメディア・コミュニケーション研究院主催の市民公開講座が開催され参加した。テーマは「メディアの沈黙とジャーナリズムの力」と題するものだった。
その冒頭に、ジャーナリストとして度々メディアの姿勢に対して問題提起をされている江川紹子さんが「オウム事件取材から旧統一教会・ジャニーズ問題まで」と題して基調講演をされた。講座は、その後江川氏を始めとして、北大から東大に転じた遠藤乾教授、HBCTVで「ヤジと民主主義」を制作した報道部の山崎裕侍氏が登壇してパネルディスカッションが行われた。本稿では、江川氏の講演に絞ってレポすることにする。
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江川さんは最初、「ジャニーズの性加害」問題を主としながら日本のメディアについて語った。
江川氏によると、ジャニーズ問題について週刊誌が盛んに報じたにも関わらず大手メディアは一向に報じず沈黙したままだったが9月7日にジャニーズ側が初めて性加害を認めたことでNHKが番組「クローズアップ現代」において検証番組を初めて報道したという。
その中の証言で、「性加害(被害)というと女性の問題」という意識が関係者の中で働いていた。週刊誌が報じる芸能ゴシップはニュース性がない。といった意識と共に「ジャニーズには触れない。触れると大ごとになる。やり過ごした方がいい。」といった空気が関係者間では共通した認識だった、といったような証言が報じられた。
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そしてその後、民放各社も次々と検証番組を報じたが、江川氏によるとそれらはNHKのものと大同小異だったという。
このことは何を意味するかというと、メディアの中に厳然として存在している ヒエラルキー(階級意識)だという。江川氏によるとその順列は①全国紙、②NHK、③地方紙、④民放、⑤週刊誌という順だそうだ。つまり、全国紙、NHKが報じないものは報じないという同調圧力的なものがメディア界を覆っている現状があるというのだ。したがって、週刊誌が報じることなどにはニュース性がないと無視する空気も存在するという。
また、メディア界には「警察が動かねば報じない」という空気も存在するという。警察が発表して初めて事件が報じられるケースも増えているそうだ。メディアが独自に動いて報道する調査報道の数は減少しているともいう。
このようにメディアが肝心の伝えねばならないことに対して “沈黙” するケースが増えていると江川氏は指摘する。テーマにもあるようにオウム問題、旧統一教会問題、ジャニーズ問題、さらには最近の宝塚問題についても言えるのではないかという。
なぜいま、そうした傾向が強まっているのか?お話を聴きながら考えてみると、メディアに属する人たちの中に「危険はおかしたくない」、「提訴されるようなことは避けたい」、「ほかのメディアと同調するほうが安心」等々、という風潮が広がっているのではないかと思ってしまう。
こうした風潮に対して明確な対処策は今のところ見つかっていないようだ。
その後のパネルディスカッションで、誰もが発信できる現代にあってSNSなどさまざまな手段を使って勇気あるメディアを後押しする(応援する)ことが必要ではないか、といった提言もあったが、有効な決定打はないのが現状のようだ。
成熟した社会が、真実が見えなくなる社会であってはならないのだが……。