淡水魚は洪水時になぜ流されないのか? ヤツメウナギは不可解な繁殖行動をするらしい。 ニホンザリガニのDNA分析でわかったこと。等々…、淡水魚の謎に包まれた生態を聴いた。
新しい北大の市民公開講座が始まった。地球環境科学研究院が主催する「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」と題するテーマで、計6回の講座が予定されている。
8月19日(水)夜、その第1回講座が開催された。
講座のテーマは「北の淡水魚アラカルト」と題して、地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授が務めた。
※ 淡水魚のフィールドで調査・研究する小泉逸郎准教授です。
小泉准教授の専門である「生態学」は、文字どおり生物の生き方について調査・研究し、そこから自然の仕組みを明らかにする学問であるが、氏は非常に楽しい学問であると語り、氏の研究活動が充実しているらしいことを伺わせてくれた。
さて、リード文で紹介した淡水魚の謎についてだが、洪水時の魚の行動を探ることは調査する研究者に危険が伴うため、その実態は長い間謎だったそうだ。その難問を解決したのが、ダムに貯水された水の臨時放流だったそうだ。つまり人工的に洪水を引き起こし、その際の魚の行動を探ったということだ。
それによると、台湾ヤマメは大きな石の下などに避難していることが分かったという。また木曽川のアユは川岸の流れの緩い場所に避難して洪水をやり過ごすらしい。自然の生き物たちの逞しさをみる思いである。
続いてヤツメウナギの不可解な繁殖行動についてだが、通常淡水魚の繁殖はメスが川底などに穴を掘り、そこに産卵するという行動をとる。ところがヤツメウナギはオス・メスが共同どころか、集団で産卵用の穴掘り作業をするそうだ。その際の動画を見せられたが、川底の石を自らの口を吸盤のようにして器用に取り除く様子が確かめられた。
小泉氏は自らが指導する学院生の研究の様子についても話された。その学生は一匹のヤツメウナギに蛍光塗料でマーキングをして、そのヤツメウナギの行動を撮影し、そのビデオ解析を行ったという。わずか一日分のビデオの解析に数カ月を要し、850回の交尾と3700回の石運びを確認したという。研究生活も大変である。
次に外来種によって絶滅が危惧されているニホンザリガニのDNAを解析していくと、北海道に住むニホンザリガニと本州に住むニホンザリガニのDNAが近いことが分かったという。このことから、本州と北海道がその昔陸続きだったことが明らかになったという。
小泉氏の話は水の中だけではなく、陸上に棲む生物にまで及んだ。例えば、街中の公園などに棲むエゾリスと、山中に棲むそれとでは、ヒトに対する警戒心に違いがあり、街中に棲むエゾリスはヒトがかなり近づいても逃げないという調査結果が出ているとか、フクロウとアライグマは木の洞(うろ)を巡って競合関係にあるとかいった話も披露してくれた。
そして最後に小泉氏は、人の幸せとは「好奇心を持ち続けることであり、足るを知ることだ」とまとめた。
その思いは、富みを追い続けることは自然を破壊することに繋がってしまう。足るを知ることで、自然との共生を図り、自然に対する好奇心を持ち続けることこそが人の幸せではないのか、と氏は私たち受講者に訴えたのだと理解した。
北大の全学共通のテーマでもある「持続可能な社会の実現」ともリンクする小泉氏の訴えでもあり、そうした考え方が広く流布されていくことを願いたいとも思った。
新しい北大の市民公開講座が始まった。地球環境科学研究院が主催する「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」と題するテーマで、計6回の講座が予定されている。
8月19日(水)夜、その第1回講座が開催された。
講座のテーマは「北の淡水魚アラカルト」と題して、地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授が務めた。
※ 淡水魚のフィールドで調査・研究する小泉逸郎准教授です。
小泉准教授の専門である「生態学」は、文字どおり生物の生き方について調査・研究し、そこから自然の仕組みを明らかにする学問であるが、氏は非常に楽しい学問であると語り、氏の研究活動が充実しているらしいことを伺わせてくれた。
さて、リード文で紹介した淡水魚の謎についてだが、洪水時の魚の行動を探ることは調査する研究者に危険が伴うため、その実態は長い間謎だったそうだ。その難問を解決したのが、ダムに貯水された水の臨時放流だったそうだ。つまり人工的に洪水を引き起こし、その際の魚の行動を探ったということだ。
それによると、台湾ヤマメは大きな石の下などに避難していることが分かったという。また木曽川のアユは川岸の流れの緩い場所に避難して洪水をやり過ごすらしい。自然の生き物たちの逞しさをみる思いである。
続いてヤツメウナギの不可解な繁殖行動についてだが、通常淡水魚の繁殖はメスが川底などに穴を掘り、そこに産卵するという行動をとる。ところがヤツメウナギはオス・メスが共同どころか、集団で産卵用の穴掘り作業をするそうだ。その際の動画を見せられたが、川底の石を自らの口を吸盤のようにして器用に取り除く様子が確かめられた。
小泉氏は自らが指導する学院生の研究の様子についても話された。その学生は一匹のヤツメウナギに蛍光塗料でマーキングをして、そのヤツメウナギの行動を撮影し、そのビデオ解析を行ったという。わずか一日分のビデオの解析に数カ月を要し、850回の交尾と3700回の石運びを確認したという。研究生活も大変である。
次に外来種によって絶滅が危惧されているニホンザリガニのDNAを解析していくと、北海道に住むニホンザリガニと本州に住むニホンザリガニのDNAが近いことが分かったという。このことから、本州と北海道がその昔陸続きだったことが明らかになったという。
小泉氏の話は水の中だけではなく、陸上に棲む生物にまで及んだ。例えば、街中の公園などに棲むエゾリスと、山中に棲むそれとでは、ヒトに対する警戒心に違いがあり、街中に棲むエゾリスはヒトがかなり近づいても逃げないという調査結果が出ているとか、フクロウとアライグマは木の洞(うろ)を巡って競合関係にあるとかいった話も披露してくれた。
そして最後に小泉氏は、人の幸せとは「好奇心を持ち続けることであり、足るを知ることだ」とまとめた。
その思いは、富みを追い続けることは自然を破壊することに繋がってしまう。足るを知ることで、自然との共生を図り、自然に対する好奇心を持ち続けることこそが人の幸せではないのか、と氏は私たち受講者に訴えたのだと理解した。
北大の全学共通のテーマでもある「持続可能な社会の実現」ともリンクする小泉氏の訴えでもあり、そうした考え方が広く流布されていくことを願いたいとも思った。