乾いた大地アフリカのサヘル地域を西から南まで8,000kmわたって横断する植林プロジェクト、グリーン・グレート・ウォール(緑の長城)が計画されているという。マリ出身の世界的ミュージシャンのインナ・モジャが計画の成功のためにサヘル地域横断の旅に出た…。
アフリカのサヘル地域とは、アフリカの北部に位置するサハラ砂漠の周辺の乾燥した地域で、気候変動の影響にさらされて地球温暖化により約80%の農地が退化し、常に食糧難と水不足にあえぎ、世界でも最も貧しい国々が集まっている地域といわれる地域である。
その現状の改善のために関係諸国が2007年に人類史上最大規模となる8,000kmにわたって横断する植林プロジェクトが計画されたという。しかし、現実にはさまざまな困難が立ちはだかり、必ずしも計画どおりには進んでいない現状がある。
そこでマリ出身のミュージシャンのインナ・モジャ(女性)は、その現実を見、そこに住んでいる人たちを勇気づけようと8,000km横断の旅に出る。
モジャは行く先々で、部族紛争や政変などで危険にさらされているのが常に女性であることに心を痛める。また、貧しさゆえに国を脱出しようとする人たちの姿にも触れ彼女の心は深く傷つく。そうした中、行く先々で音楽仲間と交流を重ね、楽曲を制作し、ライブを重ねながら人々を勇気づけようとメッセージを発信続けた。
※ アフリカ・マリ出身のミュージシャンのインナ・モジャさん。
映画は最後の訪問国エチオピアが飢餓に陥った過去から立ち上がり、大地に緑を復活させた実例を見ることによってモジャの中に希望の灯が灯った。そして最後に彼女は国連においてアフリカの現状を訴え、支援を呼びかけたのだった。
彼女は8,000km横断の旅に出て、現実の過酷さに衝撃を受けつつも「夢を信じてほしい」と、夢を抱ける母なる大地アフリカのためにこれからもメッセージの発信を続けていくという。
今回の映画会は「プラン・インターナショナル」という国際NGOの日本支部が主催して行われた映画会である。「プラン・インターナショナル」とは、女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組むことを目的としている組織だそうである。映画もそうした観点から取り上げられて上映されたようである。
女性の地位向上問題は我が国でも大きな課題であるが、アフリカのそれは我が国などの現状とは雲泥の差があるほど酷い状況である。モジャのようなメッセージ力のある女性の活動によって状況の改善が図られることを期待したいし、応援もしたいと思う。
と同時に、映画を観た私の関心は地球温暖化の解決策の一つとしての大規模な植林プロジェクトのことにあった。確かに地球温暖化対策の一つとして大規模植林は有効な手立ての一つだとは思うのだが…。しかし、昨今の地球規模の異常気象の現状はすでに沸点を超えてしまったのではないか、と心配してしまう。過日の北海学園大学で開催されたシンポジウムで京都大学の藤原准教授が話された「食権力」の存在は、もっともっと大規模に地球環境の改変に手を染めていたのではないか?と思わされてしまったのだが…。杞憂なのだろうか?今のところ気象科学者などからの警鐘が大々的に報道されていないところをみると、私の杞憂なのかなぁ……??