田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

都心まちづくりフォーラム2016

2016-03-19 20:05:06 | 講演・講義・フォーラム等
 時代の激変が予想される中、札幌の都心を今後どのように設計しようとしているのか? 若干の興味があり、参加してみることにした。大都市札幌のまちづくりとは、一筋縄ではいかないことはもちろんなのだが、周到な検討、そして議論が必要なことを痛感した。 

             

 3月16日(水)夜、かでる2・7ホールにおいて、札幌市が主催する「都心まちづくりフォーラム2016」が開催され、参加した。
 フォーラムは市民にも開かれていたが、内実は都心にビルを所有する会社や、関係する行政の方を対象としていたようで、内容が若干専門的な話に終始した感がある。

 フォーラムは、第1部が基調講演として北大名誉教授(都心まちづくり計画策定協議会 座長)の小林英嗣氏が「次代につなげる都心のレガシー」と題して、法政大学教授(都心まちづくり計画策定協議会 部会長)の保井美樹氏が「札幌の個性を活かしたエリアマネジメントの提案」と題して、それぞれ講演した。
 
 小林氏は、札幌は官が主導することによって、計画的なまちづくり(札幌本府計画)が行われ急成長を遂げたパイオニアレガシーと、1972年に開催した冬季オリンピックによって札幌の先駆性を象徴したオリンピックレガーシの二つの遺産があるという。
 この二つのレガシーを引き継ぎながら、次代に繋げる都心のレガシーを構築することが必要だとした。その新しいレガシーを構築するためには、新たな時代をけん引する都市の『エンジン』が必要である、論じた。

                    

 一方、保井氏はこれまでの日本は〈パブリック=行政〉という図式だったが、これからは行政依存だけでは解けない課題が山積しているという。(ex. 保育、介護、雇用など)
 その課題解決のためには、自治体圏域などの意思決定から離れた、新しいプラットフォームを模索していく必要がある、とした。
 その具体例として、札幌市が取り組み始めた「都心まちづくり計画とまちづくり会社」があるという。
 まちづくり会社、特に「札幌駅前通まちづくり会社」の場合は、札幌駅前通の公共空間整備について新たな官民連携の新しい形のアプローチを試みているものである、と論じた。

                  

 お二人の講演のまとめとしては、かなり乱暴なまとめではあるが、要旨は以上のようだったと私は理解した。
 つまり、小林氏が指摘した『エンジン』とは、今のところ「まちづくり会社」(札幌駅前通まちづくり会社、札幌大通まちづくり会社)
を指しているのかな?と思われた。

 続いて行われた第2部のパネルディスカッションは、「戦略的な都心強化を支えるまちづくりの一手」と題して、講演された小林氏がコーディネーターを務め、パネリストとして講演された保井氏をはじめとして、札幌市立大学学長の蓮見孝氏、札幌駅前通まちづくり会社社長の白鳥健志氏、札幌市の都市計画担当局長の浦田洋氏の4氏が議論する形となった。

             

 ここまで来て、相当に感度の鈍い私もようやく気が付いた。「これは一種の出来レースなのかな?」と…。というのも、蓮見氏も話の中で札幌駅前通まちづくり会社の運営に関わっているということを話していた。
 とすると、全ての登壇者が、現在の都心のまちづくりの計画策定に関わっている方ばかりではないか!
 私はそのことをネガティブにとらえているわけではない。小林氏も保井氏も、都市計画に関しては相当の専門家のようである。そうした方々が議論している都心のまちづくりについて、「現在ここまで検討が進んでいますよ」的な報告の場だったのだと理解できたからだ。

 私は過去に、小さな町のまちづくりの策定委員として関わったことがある。その際に感じたのは、行政の側ですでに青写真が出来上がっていて、策定委員の会議はある種のアリバイ作りに利用された感をもった経験があった。
 しかし、今回の札幌市の取り組みは、少なくとも行政がレールを敷くのではなく、民の側の専門家の議論を十分に尊重し、連携してまちづくりを進めよう、という姿勢が見えたので期待したいと思うのである。

 保井氏がいみじくも言った、「今や、行政だけでは解けない課題が山積している」という言葉を札幌市も痛感していると思われる。
 これまで先駆的なまちづくりをしてきた札幌市が、次代のまちづくりにおいても全国に先駆けるようなまちづくりの在り方を提起してほしいと願ったフォーラムだった。