田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

札幌軟石あれこれ

2014-11-18 18:34:09 | 講演・講義・フォーラム等
 札幌軟石をはじめとして、小樽の軟石、さらには美瑛軟石の現状について関係者が語った。そしてまた、札幌軟石のこれからの可能性についてチャレンジを続ける若者の話も聞いた。

          
          ※ 札幌軟石を使用した代表的建造物である「札幌市資料館」の外観です。

 あちこちと興味関心が散漫な私である。今度は「札幌軟石」のセミナーに出かけた。
「札幌軟石」について私は、2010年に「札幌建築観賞会」なる団体が主催する「札幌軟石発掘大作戦」に参加したという過去もあり、多少は関心を抱いていたこともセミナー参加の動機だった。

 セミナーは、11月16日(日)午後、札幌軟石を建築材に使っていることで知られている札幌市資料館(旧札幌控訴院)を会場に開催された。
 テーマは「北海道の軟石文化『これまで』と『これから』」題して、札幌軟石文化を語る会代表の岩本好正氏、小樽市総合博物館の大鐘卓哉氏、美瑛町役場の中山勝利氏(代理)の3人が軟石文化の「これまで」を語った。
 続いて、軟石工房「軟石や」の小原恵さん、東海大デザイン文化科の須永涼さんが軟石文化の「これから」を語った。

 まず、それぞれの軟石の出所であるが、札幌軟石は支笏カルデラの火砕流がその源であると岩本氏が語ったのに対して、小樽軟石は海底火山の噴出物がその源であると大鐘氏は語った。また、美瑛軟石の方は大雪山の噴火による火砕流がその源であるという。そのいずれもが多少の性質の違いはあるものの全てが凝灰岩である。

          
          ※ 札幌軟石を産出した跡を公園化した石山緑地です。

          
 ここで悩ましいのは小樽の場合である。小樽には軟石が使用された建物が市内に数多く現存しているのだが、その一部には札幌軟石が運ばれて使われている場合があるということだ。
 というのも、小樽軟石は産出量が少なく札幌軟石を加えることによって多くの石造建築が建てられた(例:小樽運河の倉庫群など)ことから「小樽の軟石」と呼ぶこともあるそうだ。

          
          ※ 小樽運河の倉庫は小樽軟石と札幌軟石が混合しているとことです。

 一方、美瑛の方であるが、こちらで有名なのがJR美瑛駅である。さらに、美瑛の町並の区画整理事業の際に建物の腰の部分に美瑛軟石を使用する建築協定により、本通りの新しい建物全てで美瑛軟石が一部使用されているということだ。
 ただし、美瑛軟石は現在生産されておらず、保管しているものだけという状態ということだった。

 このように今現在もそれぞれの街の各所で軟石が使用された建物が現存はしているが、これからの建築材としての将来は必ずしも明るいものではないようだ。
 そうした中において、新しい動きで出てきていることを「これから」の部で二人の若者が語ってくれた。

          
          ※ 東海大生が考案した札幌路軟石に彫刻を施した石版(?)です。

                     
 小原恵さんは、もともと札幌軟石の産出企業である辻石材工業の社員だったそうだ。社員として札幌軟石の端材の活用法を考えているうちに、置物やアクセサリーといった小物の制作を思い立ったということだ。それが人気となり、社業としては限界があるため「軟石や」として独立したということである。特に、軟石に香りを浸みこませた「かおるいえ」という作品が人気とのことだ。

          
   ※ 小原さんが考案した「かおるいえ」です。札幌軟石にアロマオイルを染み込ませたアイデアが人気を呼んだそうです。

          
 一方、東海大の須永涼さんは、小原さんが大学に商品開発を持ちかけたことにデザイン科として取り組むことになった学生の一人として発表した。学生らは若者らしい斬新なアイデアをいろいろと手がけ、それらをオータムフェストで試験販売したところ大変好評だったということで、引き続きさまざまなアイデアを持ち寄って商品開発に繋げたいということだった。

               
               ※ こちらは軟石の表面を磨いて書の台紙(石?)に見立てたものです。横の小物にも注目!

 札幌軟石は質感の柔らかさとともに、レトロ感を醸し出す雰囲気を有しているように思われる。効率一辺倒の現代建築の中の一部に用いられることも増えてきたようだ。
 さらには、端材として廃棄物化される札幌軟石を活用する動きが出てきたことも札幌軟石にとっては明るい材料である。
 多くの近代建築が林立する札幌市内において、札幌軟石は目立たない存在であるかもしれない。しかし、一時期建築材として隆盛を誇り、今なお市内各所で息づく札幌軟石が札幌の文化財として末永く現役として存在し続けてほしいものである。