今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

やよいちゃん

2014-11-23 18:18:16 | 物語
これは一羽のうさぎと少年のお話です。

みなさん、
月でうさぎがお餅をついていることはご存知ですよね。
でも、そのうさぎは同じうさぎでないことはご存知でしたか?
だって、考えてみてください
ずっと同じうさぎだったら疲れちゃいますよね。

そこである期間が過ぎると
他のうさぎに交替するのです。

月の裏側は地球から決して見えませんが
そこにはたくさんのうさぎが住んでいて
お餅つきの練習をしながら
交替の時を待っているのです。

その監督役をしているのが
実はかぐや姫の一族なのです。
竹の中に生まれ
おじいさんとおばあさんに育てられたかぐや姫は
やがて月に帰ってしまいましたが
それはそんな仕事が待っていたからなのでした。

さて、ある期間、一生懸命お餅つきをしたうさぎは
交替すると、どこにでも行ってもよいことになっています。
そのまま月に残って暮らしてもいいし
他の星に行って住んでもよいことになっているのです。

とあるとき、とあるうさぎがお餅つきをしていました。
そのうさぎはお餅つきの期間が終わると
地球に行こうと思いました。
夢のなかに現れた男の子に会いに行こうと思ったのです。

かぐや姫から
「お餅つきをありがとう。
 さあ、好きなところに跳んでいきなさい」
と言われると、うさぎはぴょ~んとひとっ跳び。
地球にやってきました。
気がつくとペットがたくさんいるお店にいました。
そしてうじっと自分を見ている男の子に気がつきました。
その子はうさぎが夢で見た男の子でした。

「ママ、このうさぎがいいよ」
男の子が言いました。
そしてうさぎは車に乗せられ
男の子の家に向かいました。
ダイニングのテーブルのそばが
うさぎの新しいすみかとなりました。
男の子の家は山の方にあり
春が来るのが街よりも少し遅いのですが
三月になり、
窓から温かい日差しが差し込んでいました。

「三月にやってきたら、やよいちゃんだね」
男の子が言いました。
こうしてうさぎの名前はやよいちゃんとなり
男の子の家族と一緒に暮らし始めました。

うさぎは、時々、
月の仲間のことやかぐや姫のことなども
思い出したりするのですが
今の楽しみは男の子と遊ぶことと
お正月前になるとどこからともなく聞こえてくる
ぺったんぺったんという音を
ピンと耳を立てて聞くことでした。


月と山と海と


最新の画像もっと見る

コメントを投稿