大都会の幹線道路沿いに
その喫茶店はあった。
地方都市でも
もう見かけないような
昔ながらのたたずまい。
もちろんレトロモダン
などというふうでもない。
ただ古めかしいのだ。
待ち合わせの時間まで間があり
いくら探しても
喫茶店はそこしかなかった。
ガラス窓越にのぞくと
客は誰もいない。
意を決して入ったが
中はいたって清潔だった。
女店主もいたって普通で安心した。
しばらく過ごしてそこを出た。
去年の暮れのこと。
その都会に浮かぶ
ガラパゴス島のような喫茶店は
以来、時々の意識の表に浮上する。
心の底から聞こえる声となって…。
ガラパゴス島のような存在故
記憶にない記憶と絡み合い…。
シャコバサボテン〈サボテン科〉
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copyright Maoko Nakamura