今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

『ヤコブへの手紙』

2013-01-13 10:18:28 | 映画・音楽

人は自らが包まれている光を

自らの絵具として

思いを紡ぎだすのだという。

北欧の淡い光。

そのはかなげで繊細な光を

作品として見事に紡ぎだした映画に

『ヤコブへの手紙』がある。

舞台は1970年代の

フィンランドの片田舎。

白樺に囲まれた古い牧師館。

盲目の老牧師

牧師宛に来る手紙の代読と代筆を

行うために雇われた元受刑者のレイラ

手紙を届ける郵便配達人。

登場人物はわずか3人である。

老牧師と郵便配達人との間に

レイラが加わることで歯車が変わり

今まで来ていた手紙が

ぷっつりと途絶えてしまう。

老牧師は自分のよりどころ失い

励まされていたのは

自分の方であったことに気づく。

牧師は生まれながらの善人であった。

温かく広い心の持ち主であった。

だからこそ、誰もに愛され

年老いて盲目となっても

昔ながらの生活が続けていけるよう

支えられてきたのだろう。

だからこそ、である。

絶望のうちに

淡い光さえもやがて閉じ

昏い闇が訪れる。

けれど、彼の存在で

心を開き始めたレイラによって

闇の中に再び光が現れる。

今度は7色に輝くオーロラのような…。

そして老牧師は天へと召される。

この作品は

親愛なる牧師

『ヤコブへの手紙』であり

まぎれもなく

『ヤコブからの手紙』なのである

私たちぞれぞれに届けられた…。

『ヤコブへの手紙』(2011年1月15日公開)より

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大山町(鳥取県)

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