詩の現場

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俺の引く線の向こうには

2016-04-14 | フリー Poem
空に直線を引きたくて、
男がそう言った

だから電線工事の仕事屋をはじめたんだ、

直角を出すのが難しくてね。
そうさ、捕まるところの無い、
足場のない、
空中にだよ、
一体どうやって直角定規を当てると言うんだい。

だけど、俺には持って生まれた感覚があるんだよ。
鳥が飛べるようにさ、
猫がクルッと高い所から、いつだって着地できるようにさ、
ミュージシャンの耳に音がなだれ込んでくるように
俺の目には幾筋もの線が空から降りてくるんだ。
空は、自分が球形なものだから、
たまには直線を引いてみてくれというんだ、
憧れているらしい。

だから俺は、空に電線というやつで、線を引く。
こっちの空にも、あっちの空にも。
どうだいって、たまには空に出来を聞いてみるが、
ゴキゲンな時もあれば、そうでない時もあるみたいさ、
そりゃね。
けれど、紅をさしてみたり、雨を降らせてみたり。
そして、その調子だ。って、いつも言ってくれるのさ、
空はいいやつだから。

1人、2人、時々俺と空のやりとりに気づく人間がいて、
なにやら電柱の下の方で会話しだす時がある。
そうだよ、空の線、
みんな怖い顔するのをやめて、見てごらん
家に帰る前にね、見上げてみたらいいさ。

空がほんのちょっと、笑って見えたりするものだ、
俺の引く線の向こうには。



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