増刊をつくるので、過去の雑誌を引っ張り出している。
懐かしいというよりも、こんなのを出していたのかと恥かしくなる。
私が編集の道を進んでいるのは、そのほうの勉強をして編集者になりたかった訳ではない。本を読むのは好きだったが、編集という仕事にはまるで縁がなかった。
それが、ひょんな拍子に編集者、というかいきなり編集長になってしまった。
ある雑誌を頼んで作ってもらっていた編集プロダクションが、急にその雑誌を作れない状況になってしまったのだ。
雑誌は発行しなくてはならない。
そこで「私がやります」と名乗りをあげてしまったのだ。
編集経験のある人にアルバイトできてもらって、最初は二人で始めた。
最初こそ、他誌の真似をしていたが、そのうち編集に対する素朴な疑問やアイデアが経験のない一般人の私に芽生えてきた。
それが当たり、また一誌増えた。
人も入れてもらった。
外注も頼んだ。
デザイナーの友達もアイデアをくれる。
私は仲間に恵まれ、今まで作りつづけてきたのだ。
これらは私の宝物。
彼らも私の宝物。
何も知らないど素人がいっぱしの編集長になれたのも皆のお陰だ。
そして何より、読者の手紙が一番の喜びになる。
面白かったとか、頑張ってくださいとかいう激励に混じり、叱咤の内容もあるが、できるかぎり読者の声を聞くようにして誌面つくりをしていった。
そして読者の声はまるでわたしにはファンレターを貰ったような気がしたものだった。
今も作りつづけているが、昔の勢いは年もとったし、また病気をしてからなくなってきている。
いい意味でベテラン。悪い意味で慣れあい。
読者も長く購入してくれている人もいれば、新しい人もいる。
どちらの声にもまた耳を傾けなければ。
私は、どちらかというと書くことが嫌いではない。むしろ好きかもしれない。
なので、編集長権限でコラムのページを時々とって書いている。
昨日の寅さんもそのひとつ。
でもこれからもまだ続けたい仕事だから、初心に帰ろう。
そうでなければ読者に失礼に当たるから。
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