fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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笠原風凛句集『星月夜』(童子吟社)

2019年03月23日 | 本の紹介
 
 
「童子」の句友の句集です。
 もう何年も前から、句集を出すお話を聞いていたので、ついに! という思いです。
 ああ、上品な本だなあ。いいなあ。
 星月夜というのは、月が出ているかのような満天の星空の夜のこと。おさえた色合いのカバーを脱がすと、そこには月のような色合いの表紙が出てきます。
 
 風凛さんとは、厚木カルチャーで出会いました。当時カルチャー講師をされていた三上冬華さんが入院され、その代講で私が行ったのですが、すぐに(こんな上手な方がいらっしゃるなら、私が来ることもなかったのでは)と思ったし、そう言った覚えもあります。
 その頃風凛さんは、とてもきれいな句を作る方でした。でもきれいなだけではなく、風凛さんならではの視点のある句。普通ならそこで満足してもおかしくないレベルだったのです。
 それがある日、

 新緑や水こぼしつつ鶏小屋へ   という句が出て、

 風凛さん、変わった。と思いました。それから、もうめきめきと、きれいでそこはかとない句だけではなく、桃子先生が帯文に書かれている「どの句も線が太くくっきりと場面が目に浮かぶ写生」になったのです。
 毎月、先生がいらっしゃる童子句会と、吟行の神奈川句会に出て、そして厚木と最低3回は句会に出て、この句集になりました。頭が下がります。

 
 瓢箪の深きくびれのほてりかな    ほてりに気づいた手柄
 忘年や藁にこもれる火の立ちて    目に浮かびます。
 卒業や鶏小屋に餌たつぷりと     鶏小屋の句がここにも
 青梅やつり銭の皺伸ばしくれ     ズームインの効果
 きんつばの角の固きや名古屋場所   地名が効いている
 出してみる預金通帳曼珠沙華     余計なことを言っていないところがいい。
 早苗田の水ひたひたと家に寄せ    ぞくりとする。
 正面にはだかる富士や憂国忌     そうか。富士は立ちはだかるときもあるのだ。
 枯菊を束ねしあとの夕焼かな     寂寞感と現実感
 母訪ね母置き変える冬夕焼     この句、しみじみします。

 また読み返すと、違った句に目がいくことでしょう。
 毎月の研鑽の結果ですね。
 私はもう足元にも及びません。

 風凛さん、これからもご活躍を。
 句集にまとめるのって、いいなあ。

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