fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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句歌集『今のうち』(文學の森)ー田代早苗

2014年04月03日 | 日記

           

 加古川市在住、「童子」の大先輩、田代早苗さんの第3句集であり、孫のもえちゃんとの合同句集でもあり、歌集でもあります。早苗さんは、波田野爽波(虚子の最後の弟子)さんのお弟子さんでもあった方、爽波先生が亡くなられたあと、辻桃子先生の元にこられたわけで、長い俳歴の集大成でもある句集です。

 百舌叫ぶ生きてゐるうち今のうち   早苗

 なにより、この一句にすべてがこめられています。百舌鳴くではなく、叫ぶ。

 私はいただいた句集を読むときは、好きな句に付箋を貼りながら読むのですが、早苗さんの句は、読み始めてすぐにその必要がないとわかりました。全ていいから! 上手だとか、すごいとか、もうそんなことを言うまでもない、そんな境地はとっくに超えてしまっています。

 句に命かけてどうする麦の秋

 辞世の句山ほど出来て年の暮

 短夜や混みあつてゐる美人の湯

 ひざ触れて酒のこぼるる裕明忌

 春の夜のつぎつぎ人の死ぬドラマ   早苗

 ここに揚げるため、パラパラとめくって目についた句です。他も全てすきなので、そういう選び方をしました。この5句を読んだだけでうかがえるように、早苗さんはもうご自身の命の終わりと向き合ってらっしゃいます。そんな早苗さんが、最近作っているのが、短歌。(入所されているホームのお友達と句会、歌会をやっているらしい)

 死ぬことの予行練習した筈が段取りだうり行きさうもなし   早苗

 私も以前短歌をやっていたからわかるのですが、どうしても短歌だと、感情を表に出しすぎ、言い過ぎになってしまいがち。この短歌は、俳句的だなあと思いました。ズンと胸に迫ってきました。

 そして早苗さんの俳人としての力は、孫のもえちゃんにすでに受け継がれています。3~4歳のまだ575になっていない頃からの言葉をこうして掬い取って、残してるってすばらしい。

 じてんしゃといっしょにおちたはるのどぶ

 ブランコにとうめいにんげんのっている   7~8才

 そうどすとまいこごっこのお正月  

 せんこうのにおいしみてるこのリンゴ   8~9才

 田植道おつちゃん五人大げんか   11~12才      もえ

 こんど中学生になるんだねえ。感想の手紙を出したら、もえちゃんからもお返事をいただいて、その文字のきれいさに、感心しまくりました。おばさん、字が下手でお恥ずかしい。

 少しまえ「ランドセル俳人」という句集を読みました。作者はいじめにあって不登校になっている小学生。商業ベースに乗って本を売るには、そういう背景が必要なのかなと、少し寂しい気持ちになったのですが、(句はいいのがたくさんあったのですよ)もえちゃんのは、ふつうの小学生たちが、うんうんと思える句。それでいて、大人でもこうは作れないよなという面もあります。早苗さんとの二人句会、もっともっとしてください。