学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
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我が国の学校教育の特質

2009-02-15 | 教育
日本の学校教育の際立った特徴は,家庭教育や地域教育の伝統的な形をそのまま近代的な組織である学校に移植したところにあるのではないか。

とくに小学校では,家庭教育の形をそのまま保持したように思われる。すなわち,先生は,家庭における父や母,あるいは兄や姉のような存在であり,学力よりもむしろ生活面でのしつけや指導に重きを置き,全人的な成長を意図していた。学級においても,家庭的な温かさを作り出すことが学級担任のめざすところであった。現場の学校教師が,昨今の「学力」重視の論調に違和感を感じるのはこの伝統があるためである。

そして,昔の中学校は,地域における青年組のように「大人」の仲間入りの意味をもっていた。中学校に入学するに際して,社会は一種の通過儀礼を用意していた。小学校にはなかった窮屈な制服,男子の丸刈り,鉄道料金が大人扱いになるなどがそれである。先輩後輩の上下関係,厳しい校則なども,「大人」社会を経験させる上で必要なことであったのではないか。

西欧の学校教育を我が国の学校教育と比較すると,より合理的に「学業」を重視している。というよりも,その面にしか責任を負っていない。

我が国における昨今の教育改革が間違ってしまったのは、我が国の学校教育に秘められた伝統的な教育の智慧を理解することなく,西欧の学校教育の形を模倣しようとしたところにあったのではないか。我が国の学校教育は,ある意味では前近代的な特質をもっている。しかし,そのことの長所をもっと意識すべきであったのではないか。

もちろん,このようなことは,現場教師の皮膚感覚で分かることである。教育の研究者などには,本当の意味では実感できないことなのかもしれない。