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Cape Fear、in JAPAN

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にっぽん男優列伝(246)殿山泰司

2014-09-21 08:53:33 | コラム
15年10月17日生まれ・89年4月30日死去、享年73歳。
神戸出身。

きょうはまず、こちらの動画をリンクしておきましょう。
この映画に、本日の主役・殿山泰司(とのやま・たいじ)さんのイキザマというかソウルというものが、ほぼ完璧な形で再現されていると思うからです。

※荻野目慶子もよかった! ちょいとわざとらし過ぎたけど…





偉大なる脇役俳優―殿山さんは脇役を自称し、そのことに誇りを持っていました。
沢山の出演作からベストワンを挙げるとするならば、ふたつしかない主演映画のうちのひとつ『裸の島』(60)になってしまうのですけれど、
この傑作は盟友の新藤兼人が敢えて殿山さんを起用した、いわば実験映画であり「ほとんど特例」として扱わなければいけないような気がします。

だから特例を除けば、殿山さんのキャリアはやっぱり「その他大勢、のひとり」であったと。
しかし「その他大勢」が居なければ主役は成り立たない、どんなもんだい!! それがこの俳優の哲学なのでした。


禿げ頭だけでもインパクトがあるのに、おまけに眼光は鋭い。
ユル・ブリンナーのような気品? はありませんが、いちど見たら忘れない風貌でしょう。
また、キャリアの中盤からどこにも所属しないフリーで俳優活動をおこなっていたため、五社協定という縛りに苦しむことはなく、映画だけでも300本を超す出演作があります。

<経歴>

成人後に新築地劇団に入団、「夏目銅一」の芸名で初舞台を踏む。
実質的な映画俳優デビュー作は、39年の『空想』。

興亜映画(京都)に入所した42年に召集を受けて中国に出征、復員後、松竹大船を頼って映画界に復帰、殿山泰司の名で芸能活動を再開させる。
このころ、正妻のほかに「側近」と呼ぶ女性との二重「性」生活がスタート。
「きっちり離婚し」「きっちり再婚する」ことを望みながらも「そう出来なかった」―しかし、この生活が死ぬまでつづいたということは、これはこれで「あり。」なのでしょうねぇ。


ここからのキャリアは膨大なので、主な作品を箇条書きスタイルで。

【40年代】

『結婚の生態』(41)
『鳥居強右衛門』(42)
『安城家の舞踏会』(47)『長屋紳士録』(47)
『酔いどれ天使』(48)『誘惑』(48)『社長と女店員』(48)
『嘆きの女王』(49)『真昼の円舞曲』(49)

【50年代】

50年…『暴力の街』『春雪』『醜聞』
51年…『偽れる盛装』『自由学校』『愛妻物語』
52年…『雪崩』『原爆の子』『山びこ学校』『滝の白糸』
53年…『村八分』『千羽鶴』『ひめゆりの塔』『地獄門』『夜明け前』『女の一生』
54年…『日の果て』『足摺岬』『どぶ』『太陽のない街』『愛と死の谷間』
55年…『人間魚雷回天』『明治一代女』『愛すればこそ』『警察日記』『愛のお荷物』『美女と怪龍』
56年…『銀心中』『真昼の暗黒』『狙われた男』『女優』
57年…『私は前科者である』『殺したのは誰だ』『海の野郎ども』『誘惑』『幕末太陽傳』『麻薬街の殺人』
58年…『悲しみは女だけに』『死の壁の脱出』『果しなき欲望』『顔役』『完全な遊戯』
59年…『第五福竜丸』『お早よう』『警視庁物語 遺留品なし』『にあんちゃん』『キクとイサム』

【60年代】

60年…『特ダネ三十時間 白昼の強迫』『秘密』『親鸞』『裸の島』
61年…『豚と軍艦』『松川事件』『わが生涯は火の如く』
62年…『警視庁物語 十二人の刑事』『秋津温泉』『人間』『キューポラのある街』
63年…『青い山脈』『黒の報告書』『にっぽん昆虫記』『母』『関東無宿』
64年…『鬼婆』『赤い殺意』『いいかげん馬鹿』
65年…『悪党』『清作の妻』
66年…『こころの山脈』『本能』『白昼の通り魔』『エロ事師たちより 人類学入門』
67年…『無理心中日本の夏』『性の起原』
68年…『帰って来たヨッパライ』『藪の中の黒猫』『神々の深き欲望』『眠れる美女』
69年…『かげろう』

【70年代】

70年…『白昼の襲撃』『日本の悪霊』『裸の十九才』
71年…『儀式』『沈黙』『ポルノの帝王』『鯉のいる村』
72年…『ポルノの帝王 失神トルコ風呂』『徳川セックス禁止令 色情大名』『夏の妹』『鉄輪』『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』
73年…『混血児リカ ひとりゆくさすらい旅』『混血児リカ ハマぐれ子守唄』『青幻記 遠い日の母は美しく』『夜の歌謡シリーズ 女のみち』『夜の歌謡シリーズ なみだ恋』
74年…『赤線玉の井 ぬけられます』『砂の器』
75年…『主婦の体験レポート おんなの四畳半』
76年…『愉快な極道』『愛のコリーダ』『トラック野郎 天下御免』
77年…『はなれ瞽女おりん』『遠い一本の道』
78年…『愛の亡霊』『野性の証明』
79年…『復讐するは我にあり』『男はつらいよ 寅次郎春の夢』『絞殺』

【80年代】

80年…『戒厳令の夜』『太陽の子 てだのふあ』
81年…『上海異人娼館 チャイナ・ドール』『ヨコハマBJブルース』『ええじゃないか』『北斎漫画』『泥の河』『白日夢』『近頃なぜかチャールストン』
82年…『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』『オン・ザ・ロード』『水のないプール』
83年…『楢山節考』『暗室』『里見八犬伝』
84年…『ロケーション』
85年…『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』
86年…『コミック雑誌なんかいらない!』『ジャズ大名』
87年…『女衒 ZEGEN』
88年…『TOMORROW 明日』『さくら隊散る』『黒い雨』


・・・・・これですべてというわけではないのですから、壮観です。

『裸の島』を例外とすれば、やっぱり『愛のコリーダ』でしょうか。
物語が始まってすぐ、このひとの局部「モロだし」シーンがありますからねぇ!!

89年4月30日、肝臓がんにより死去。
享年73歳、遺作は同年の『花物語』になります。

このひとの半生を映画化した『三文役者』(2000)にあるように、映画のほかに女とジャズを愛しました。
ジャズや私生活などを語ったエッセイも独特な文体で面白く、こういう生きかたに憧れるひとは多いだろうなぁ、、、と思います。

なかなか真似の出来ることではありませんけれど。。。

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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

男優列伝、3連続です。
『にっぽん男優列伝(247)豊川悦司』

コメント (1)
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