JX・東燃統合で渦巻く製油所統廃合への不安11月24日 08:00
「製油所一体運営などの合理化が進んだとき、雇用は守られるのか。今は会社を信じるしかない……」
石油元売り業界の最大手、JXホールディングスと、4位の東燃ゼネラル石油の統合へ向けた協議が始まったことを受けて、東燃の社員は不安な胸中を打ち明けた。
現在のところ、東燃では社員向けの説明はなく、“結婚相手”が売上高で約3倍、石油精製能力で約2倍の規模を誇る業界の雄、JXとあって、社員の間では動揺が広がっている。
もっとも、JXと東燃の組み合わせは、かねて予想されていた。というのも、石油元売り業界では、2014年末にシェア2位の出光興産と3位の昭和シェル石油が経営統合に向けて交渉しているのが明らかになったことで、一気に再編機運が高まっていたからだ。
そして11月には出光と昭シェルが合併することで基本合意した。業界の関心は次なる再編、すなわち業界4位の東燃が生き残りのためにどうするのか、また出光・昭シェルにシェアで肉薄されたJXがどう手を打つのかに注目が集まっていた。
選択肢として5位のコスモエネルギーホールディングスもあったが、財務が業界で最も悪く、「誰しも組みたくない相手」(業界関係者)と見なされていた。結局、JXと東燃が組むことは、最も自然な形だったといえる。
次の焦点は製油所合理化
石油元売り業界で急速に再編が進んだ背景には、人口減をはじめ、自動車の燃費向上やエコカーの普及によって燃料消費が減っていることがある。
ガソリンや灯油などの石油製品の需要は09年度の2億4596万キロリットルをピークに年々落ち続けており、15年度は1億8427万キロリットルとなる見込みだ。19年度はさらに、15年度から約8%落ち込む見込み。縮小する市場で収益を確保するためには、ライバルと手を組み規模を確保して、合理化するしか道がなかったのだ。
「プレイヤーを現状の5社から2グループ+αへ減らす」と経済産業省幹部が公言していた通り、国も製油所を合理化するためのエネルギー供給構造高度化法を策定するなど、再編を側面支援してきた。JXと東燃の統合が実現すれば、その思惑通りになる。
今後の焦点は、製油所の縮小や閉鎖も含めた具体的な合理化策に移るだろう。前述した高度化法では、厳しい基準を設けて、各社に精製能力の削減を強制しているが、JXと東燃はいずれもその基準を満たしていない。両社は大阪府堺市に隣接する製油所があり、まずは堺を舞台に一体運営による製油所の統合が進んでいく可能性がある。
もちろん合理化がそれだけで終わるわけではなく、東燃内の不安はしばらく消えそうにない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
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エネ庁は、本当はJXの1社で良いと思っているかも知れない。
でもそれだと独禁法上問題だから、2社+α