報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「特急スペーシアきぬがわ6号」

2022-01-26 16:02:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日16:45.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→宇都宮線1086M列車1号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の列車は、16時46分発、特急“スペーシアきぬがわ”6号、新宿行きです。次は、浦和に止まります。……〕

 改札口を通過してホームに降りると、さすがにもう外は暗くなっている。
 そして、暗いからか、昼間でも吹き荒んでいた寒風が余計に寒く感じた。

〔まもなく4番線に、特急“スペーシアきぬがわ”6号、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、6両です。次は、浦和に止まります。……〕

 接近放送が鳴り響く。

 マリア:「わざわざ特急で?」
 勇太:「先生が御一緒だから……」

 その時、上り副線(欠番の5番線)に貨物列車がやってきた。
 宇都宮線ではなく、高崎線から来た列車だろう。
 台車に積載されているコンテナには、うず高く雪が積もっていた。
 未だに在来線には遅れや運休の発生している列車が存在する。
 この貨物列車も、どのくらいだか分からないが、遅延していると思われる。
 通過するのではなく、一旦停車するようだった。
 この貨物列車は恐らく、北浦和のトンネルから貨物線に入るものと思われる。
 しかし、そこまでは湘南新宿ラインを走行しなければならない。
 そしてその線路を、これから勇太達が乗る列車が走行する。
 それが出た後、その貨物列車が発車するのだろう。

 マリア:「別にいいんじゃない?師匠は昔、ああいう列車で旅をなさってたんだから。ですよね、師匠?」
 イリーナ:「そうね。あの列車が新宿駅を通るのであれば、あれに乗ってもいいわ」
 勇太:「御冗談でしょう!?今はセレブじゃないですか!それに多分あの列車、武蔵野線経由なんで、新宿通らないですよ」
 イリーナ:「それは残念だわ」
 勇太:「今はセレブなんだから、もっと高い列車に乗りましょうよ」
 イリーナ:「そうね。まだ、報酬もあるし……」

 イリーナの私物の中には、世界の富豪から報酬としてもらったプラチナカードが何枚もある。
 中にはブラックカードもあるだろうが、それはあえて使わないでいた。

〔「4番線、ご注意ください。特急“スペーシアきぬがわ”6号、新宿行きの到着です。全車両座席指定です。自由席はございませんので、ご注意ください」〕

 東武鉄道の車両がやってきた。
 新幹線的なスタイルなので、ダンテ一門の中では唯一(?)の鉄道娘であるルーシーは喜ぶだろう。
 しかし、コロナ禍なので、来日できずにいる。
 ドアが開いて、ここまでの客達がぞろぞろ降りて来る。
 この列車の始発駅付近も豪雪だっただろうが、運休にはならなかったようだ。
 今回の豪雪は南岸低気圧によるものなので、南関東ほど被害が大きく、北関東はそんなに豪雪というほどのものでは無かったからだろう。
 1番後ろの車両に乗り込んだ。

 勇太:「先生のお席はこちらです」
 イリーナ:「ありがとう」

 さすがに車内は暖房が効いて温かい。
 また、特急車両は窓が開かないので。
 イリーナの後ろに、勇太達が座る。
 荷物は荷棚に上げた。
 イリーナはローブを着たまま、フードだけ被って座席を倒したが、マリアと勇太はローブを脱いで荷棚に上げておいた。
 そうしているうちに、列車が走り出した。
 JR東日本車両とは違う、独特のインバータ音を響かせている。

〔♪♪♪♪。「大宮からご乗車のお客様、お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございます。湘南新宿ライン回り、特急“スペーシアきぬがわ”6号、新宿行きです。これから先、浦和、池袋、終点新宿の順に止まります。途中、池袋には17時12分、終点新宿には17時19分の到着です。【中略】次は浦和、浦和です」〕

 マリア:「こっちだと、勇太の家の方かな?」
 勇太:「そうそう」

 3人は進行方向左側に座っている。
 大宮以南は赤羽まで、京浜東北線と並行する。
 上り列車だと、進行方向左側だ。
 荷棚に乗せたマリアのバッグからは、ミク人形とハク人形が出て来て寛いでいる。
 乗る前に、この列車には車内販売が無いことを既に伝えている。

 マリア:「今夜のホテルは?」
 勇太:「新宿駅南口から徒歩数分。これなら明日も大丈夫でしょう」
 マリア:「師匠は私が責任を持って起こすから、心配しないで」
 勇太:「ありがとう」

 壁に折り畳まれているテーブルを出して、その上に飲み物と菓子を置いた。
 これは駅のキヨスクで買ったものである。
 肘掛け下にもテーブルは収納されているが、東武100系車両だと、これ以外にも壁際にテーブルが収納されている。
 寒かったもので、温かい飲み物を買ったのだ。

 勇太:「先生と御一緒なら、先頭の個室席も予約できたのに残念」
 マリア:「オリエント急行でのトラウマが未だにあるらしい」

 魔女狩り隊に見つかり、さながらアメリカの西部劇みたいな感じになったという。
 列車内で銃撃戦、イリーナが火だるまになって列車から脱出、しかし燃えたのはローブだけで、その下は一切燃えていない。
 魔女狩りが横行する南北西欧(一部の国、地域を除く)や南北アメリカは要注意らしい(ロシアは大丈夫とのこと)。

 イリーナ:「その、先生に出資している大金持ちの人達も、そういう地域に住んでいて、しかも日曜日には教会に行ったりしているんでしょう?」
 マリア:「セレブの信仰心なんて微々たるものさ。教会に行くことも、パフォーマンスの1つに過ぎないだろう。勇太の宗派はどうなの?」
 勇太:(恐らく、アメリカンエキスプレスのプラチナカードを持っている人は……いないだろうな。ましてやそれを、報酬してポンと渡せる人は……)
 マリア:「いなさそうだな」

 マリアはニヤリと笑った。
 ブレザーの色と同じ、緑色の布マスクを着けているが、恐らく歯を見せるほどの笑みだっただろう。

 マリア:「その代わり、師匠のパトロン達も、教会と繋がっておくことで、もしも師匠が敵対した時に備えて保険を掛けているんだろう」

 もしもイリーナがパトロン達を裏切ることがあれば、パトロン達は魔女狩り隊をけしかけるわけである。
 プラチナカードを報酬として手渡しているのも、クレカなら、使用すれば居場所が分かるからである。
 恐らく、カードを渡したパトロンは今、イリーナがしっかり日本の関東にいることを把握していることだろう。
 支払い明細は、パトロンの所へ行くからだ。

 勇太:「何だか怖いねぇ……」
 マリア:「まあ、私達がセレブのパトロンを受けるのは、もっと先の話になる。何しろ私でさえ、まだ師匠からパトロンを紹介されていない」
 勇太:「なるほど……」

 時折イリーナが不在にすることがあるが、パトロンから直接仕事の依頼を受けに行っていることが分かっている。
 しかしその時、弟子達を同行させることはない。
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“大魔道師の弟子” 「いま再びの都内へ」

2022-01-24 20:20:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日16:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや→タクシー車内]

 時間になったので、魔道士3人は退館することにした。
 精算して、シューズロッカーの所へ行く。
 シューズロッカーからロングブーツを出したイリーナが、エントランスのたたきにそれを置くと、パンプスのように縮んでいた脛の部分がスルスルと伸びて、名実共にロングブーツとなった。

 勇太:「タクシー来てますね」

 先に建物の外に出た勇太は、『迎車』と書かれたタクシーに駆け寄った。

 勇太:「予約していた稲生です」
 運転手:「稲生様ですね。どうぞ」

 今度はセダンタイプのタクシー。
 グレーのモケットが高級感を出しているが、ナンバーは5だ。

 マリア:「師匠、ロングブーツは歩きにくいのでは?」
 イリーナ:「この歳になると、冬は足元が寒くてねぇ……。こういうブーツでも穿かないと、外を歩けないんだよぉ……」
 マリア:「『ロシアより暖かい』とか言ってませんでした?」
 イリーナ:「はてさて、そんなこと言ったかねぇ……」
 マリア:(ボケたフリしやがって……)
 勇太:「先生、どうぞ。こちらへ」
 イリーナ:「ありがとう」

 席順は同じ。
 イリーナが上座の運転席後ろに座り、勇太が助手席に座った。

 勇太:「それでは大宮駅までお願いします」
 運転手:「かしこりました。西口でよろしいですか?」
 勇太:「はい、お願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーが走り出した。
 送迎バスが入って来た所とは、別の出口から出る。
 実は送迎バスも、大宮駅行きはそこから出る。
 そして公道に出ると左に曲がり、突き当りの県道を送迎バスは右に曲がるのだが、タクシーは左に曲がった。
 この県道は道が狭く、いかにマイクロバスであっても、走るのはちょっと……ということもあり、マイクロバスはなるべくバス通りに出て、そこから往路と同じ国道バイパスに出ようとする。
 しかし、ルートが決められているバスと違い、タクシーは自由だ。
 しかも、狭い道も難無く進む。
 タクシーは最短距離を走ろうとする為、例え狭くても県道を進むのが良いと運転手は判断したようだ。
 もっとも、県道とはいえ、国道からすれば裏道のようなもの。
 国道バイパスはほぼ雪が無くなっている状態だったが、こちらはまだ雪が残っていた。
 常に日当たりの悪い所にあっては、今だに凍結しているくらいである。
 さすがにそういう所は徐行する。

 イリーナ:「あら、マリア。髪がサッパリしてるじゃない。散髪したの?」
 マリア:「はい。少し髪が伸びたので」
 イリーナ:「勇太君も?」
 勇太:「はい。僕もです。あそこ、カットサロンがあるので」

 勇太は理容、マリアは美容で利用した。

 イリーナ:「フム、そうか。マリアの場合、フェイシャルエステまで受けたようね?」
 マリア:「じゅ、10分だけですよ!」
 イリーナ:「もっと長い時間のコースで良かったのに……」
 マリア:「私はこれで十分です」
 イリーナ:「ふーん……」
 勇太:「それより、休憩処の方が騒がしかったような気がしますが……」
 イリーナ:「そお?気のせいよ」
 マリア:「そうそう。パトカーのサイレンの音とか、結構凄かったですよ」
 イリーナ:「そうなの?私は寝てて気づかなかったねぇ……」
 勇太:「救急車も来てましたよね?」
 イリーナ:「さあねぇ……」
 マリア:(師匠がスットボケる場合、何かあるな……)

 マリアは助手席の後ろに座っている。
 このタクシー会社の助手席後ろには、モニタが付いている。
 昔はタクシー会社によっては、助手席上にラジオの文字放送やCMが流れる機器を設置していた所もあった。
 今はそれに代わり、支払方法も選択できるモニタが付いている。
 そこではCMが流れていたのだが……。

 ケンショーグリーン:「たっ、助けてください!私は今、生きながら地獄界にいます!嗚呼ッ!馬鬼が!牛鬼の獄卒が追い掛けてきます!助けてください!」
 マリア:「huh?」
 ケンショーグリーン:「せっ、せめて!美女鬼が沢山いる衆合地獄にしてください!」

 馬鬼(馬頭)に捕まった瞬間、画面が切り替わり、再び普通のCMが流れた。

 マリア:「師匠?今のは?」
 イリーナ:「さあ……?映画の宣伝じゃないかしら?」

 衆合地獄には確かに美女鬼が沢山いますが、彼女らの体に触れることはできません。
 触れようとすると、美人局の如く、男鬼が現れ、あとは【お察しください】。

[同日16:30.天候:晴 同区内 JR大宮駅]

 タクシーは無事に大宮駅西口のロータリーに到着した。

 運転手:「ありがとうございます。お支払いは……」
 イリーナ:「アタシのカードで」
 運転手:「ありがとうございます」

 イリーナは運転手に自分のプラチナカードを渡した。
 その間、勇太が先に車から降りる。

 勇太:「鉄道のダイヤは戻ったのか?まだタクシーが少ないな」
 マリア:「さすがに、午前中と比べて雪はだいぶ融けたみたいだからね」

 イリーナがタクシーから降りる時、勇太が手を取る。

 勇太:「今日はありがとうございます」
 イリーナ:「いいんだよ。アタシもリフレッシュできたからね。今度は電車に乗り換えかね?」
 勇太:「はい。その前に、荷物を取りに行きませんと」
 イリーナ:「そうだったね」

 エスカレーターで2階に上がり、コインロッカーに預けていた荷物を回収した。
 その荷物の中に隠れていた、ミク人形とハク人形が顔を出す。

 勇太:「よしよし。お待たせー」

 マリアの人形なのだが、勇太が頭を撫でても嫌がらなくなった。
 ダニエラが真っ先に勇太の専属メイド人形になったことは、他のメイド人形達からも異端視されていたが、今ではだいぶ信頼されるようになった。

 勇太:「キップは1人ずつ持ちましょう」
 イリーナ:「ありがとう」
 マリア:「特急“スペーシアきぬがわ”……?」
 勇太:「これで新宿まで速く、座って行けるよ」
 マリア:「どこかで聞いたことあるような……?」
 勇太:「『ダンテ先生を囲む会』で、鬼怒川温泉の帰りに乗った電車だね」
 マリア:「ああ!」
 勇太:「車両が同じという意味で、行き先は違うけど……」

 囲む会の時、帰りは浅草行きに乗ったのだった。
 今日は新宿行きに乗る。

 勇太:「それでは行きましょう」

 キップを片手に、改札口を通過する魔道士3人だった。
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“大魔道師の弟子” 「温泉でマターリの魔道士達」

2022-01-24 17:10:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日12:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや]

 温泉に浸かった稲生達。
 後でイリーナは、マッサージを受けたようで……。

 スタッフ:「凄いですね、お客様!?全身ガチガチですよ!?」
 イリーナ:「だよねぇ……。何せこの体、200年以上は使ってるからねぇ……」
 スタッフ:「は?」
 イリーナ:「そろそろ換え時なんだよねぇ……」

 ゴリゴリゴリ……!

 イリーナ:「ああン!そこよ、そこ!もっと強くやってぇーン!」
 スタッフ:「ここですか!?ここの筋ですか!?」

 外の休憩コーナーで待っている稲生とマリア。

 勇太:「また先生の絶叫が……」
 マリア:「ツボを刺激される度に、ああ騒がれちゃ、やかましくてしょうがないよな」
 勇太:「ははは……」

 それから1時間後……。

 イリーナ:「さぁさ、体もスッキリしたし!好きなもの頼んでー!」

 食事処で昼食を取る。

 店員:「お待たせしました。こちら、カキフライ定食です」
 イリーナ:「はい、私」
 店員:「こちら、湯けむり御膳です」
 マリア:「あ、私だ」
 店員:「こちら、生姜焼き定食です」
 勇太:「はい、僕です」
 イリーナ:「それじゃ、頂こうかね」
 勇太:「いただきます」

 食べている間……。

 マリア:「さすがに、あのヘンタイ理事はいませんでしたね」
 イリーナ:「こっちの本業が忙しいからね」
 勇太:「異世界通信社の最新号によると、あまり動きは無いようです」
 イリーナ:「だろうね。ところで、この後の予定は?」
 勇太:「はい。16時15分にここを出ます。送迎バスだと、大宮駅での乗り換えに間に合わないので、またタクシーで行きます」
 イリーナ:「分かったわ。私のカード、使っていいからね?」
 勇太:「ありがとうございます」
 イリーナ:「食べた後は、昼寝でもしようかね」
 勇太:「あ、はい。休憩コーナーあります」
 イリーナ:「ある?」
 勇太:「はい」

 それから更に1時間後、リクライニングチェアの並ぶ休憩処に、イリーナはいた。

 イリーナ:「来たか……」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。お隣、失礼致します」
 イリーナ:「今日は何の用なの?」
 ケンショーグリーン:「今日は魔界の状況について、お話し致します」
 イリーナ:「暗いニュースは結構よ」
 ケンショーグリーン:「クフっ!?それでは、アルカディアシティの再建計画について……」
 イリーナ:「出資はするけど、それはアタシの仕事じゃないね」
 ケンショーグリーン:「クフッ!出資金を出して頂けるのですね?ありがとうございます。我らが女王、ルーシー・ブラッドプール陛下もお喜びあそばされます。つきましては、我がケンショーの方にも御出資を……」
 イリーナ:「それはお断りするわ。ケンショーイエローとレッドの仕事でしょ?」
 ケンショーグリーン:「仰る通りでございます……」
 イリーナ:「ケンショーセピアはどうしたの?うちの弟子の仲間達が捜しているみたいだけど?」
 ケンショーグリーン:「私にも存じかねます。クフフフフ……」
 イリーナ:「それだけ使えない理事なのか、或いは……アタシをも煙に巻こうとしているのか……」

 目を細めていたイリーナが開眼する。
 緑色の瞳の先には、ケンショーグリーンがいた。

 ケンショーグリーン:「滅相もございません。何しろあれは、浅井家の問題。如何に譜代とはいえ、外様幹部の私には、真相を話しては下さらないでしょう」
 イリーナ:「ふーん……。まあ、いいけど……。他には?」
 ケンショーグリーン:「ございますとも。但し……」
 イリーナ:「ん?」

 ケンショーグリーンは、メモ書きをイリーナに渡した。
 そこには、『どこにソッカーや“魔の者”のスパイが潜んでいるか不明ですので、ここから先は暗号でお話し致します』と書いてあった。

 イリーナ:「分かったわ」
 ケンショーグリーン:「それでは……コホン。『うー!うまぴょい!うまぴょい!』」
 イリーナ:「は?」
 ケンショーグリーン:「『目ん玉ギラギラ出走でーす!(はいっ!)』」
 イリーナ:「え?」
 ケンショーグリーン:「『コメ食いてー!(でもやせたーい!)』」
 イリーナ:「ん?」
 ケンショーグリーン:「『あかちん塗っても(なおらないっ)(はーっ?)』」
 イリーナ:「それで?」
 ケンショーグリーン:「『遅刻だ後追い!(馬場おも!ずどーん!)』」
 イリーナ:「それは本当なの?」
 ケンショーグリーン:「『今日の勝利の女神は、あたしだけにチュウする』」
 イリーナ:「それはマズいわね……」
 ケンショーグリーン:「『キミの愛馬が!ずきゅーんどきゅーん、走り出し!(ふっふー!)』
 イリーナ:「いやいや……」
 ケンショーグリーン:「『こんなレースは初めて!(3、2、1、ファイト!)』」
 イリーナ:「分かったわ。そこまで分かれば、十分よ」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。それでは、報酬として、私に『勝利の女神は、あたしだけにチュウ』を!ハァハァ……」

 バン!(突然、入口のドアが開けられる)

 20代女性客:「あいつです!女子トイレ覗いてたの!」
 幼女先輩:「あのオジさんに、階段の下からスカート覗かれました!」
 老女大先輩:「あの若者に、露天風呂を覗かれたのじゃが……」
 ケンショーグリーン:「クフッ!?それは誤解です。それでは、これにてさらば!」

 ボンッ!(ケンショーグリーン、煙幕を張る)

 イリーナ:「全く……。相変わらず、派手な退場ねぇ……」

 ズコッ!(ケンショーグリーン、自分も視界を失い、躓いてズッコケる)

 ケンショーグリーン:「メガネ、メガネ……!」

 眼鏡を落としてしまったもよう。
 そして……。

 警備員:「ちょっとこっちへ!」

 ガシッと首根っこ掴まれ、警備員と男性スタッフに連行されるケンショーグリーンだった。
 どうやら、女性なら幼女から老女まで誰でもいいらしい。

 イリーナ:「やっと静かになるね……」

 その時、イリーナは下半身がスースーッとした。

 イリーナ:「?」

 ロングスカートの深いスリットに手を入れて、下着を確認すると、いつの間にか穿いていた下着が無くなっていた。

 警備員:「おとなしくしろ!」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ、御無体な!私は何も知りません!ええ!私の分析によりますと、これは冤罪です!」

 と言いつつ、右手にはしっかりイリーナの黒いパンティ(高級品)が握られていたのだった。

 イリーナ:「ほお……?」

 イリーナは魔法の杖をスッと取った。
 この後、ケンショーグリーンの身に何が起きたのかは【お察しください】。
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“大魔道師の弟子” 「雪中行軍」

2022-01-23 20:21:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日10:45.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 当初は県道35号線(産業道路)をひたすら北上し、さいたま市大宮区の大宮駅東口を目指す予定であった。
 しかし、鉄道のダイヤが乱れていることや、降雪や凍結による車の流れの頗る悪いことから、そこは大渋滞となっていた。
 産業道路を少し北上すると、高速道路の外環道(高速道路のみの正式名称は東京外環道。下道も含めた正式名称は、東京外かく環状道路)と立体交差する。
 道路情報を見ると、外環道には冬タイヤ規制や速度規制はあるものの、通行止めにはなっていない。
 また、都内や神奈川の首都高は軒並み通行止めだったが、比較的雪害が小さかった埼玉県内の首都高は通行止めにはなっていなかった。
 昨日からの雪害は、関東に限定して言えば、南側が概して被害が大きかったのである。

 タクシー運転手:「お客さん、別料金になっちゃいますけど、高速を通った方が早いかもしれません」
 勇太:「分かりました。それでお願いします」
 タクシー運転手:「よろしいですか?」

 運転手は外環道(下道)の交差点を左折すると、外環道(高速)の入口を目指した。
 道路情報通り、川口西インターは開放されていた。
 そこから高速に乗り、料金所はETCで通過する。
 高速は東へ向かい(内回り)、美女木ジャンクションで首都高速・埼玉大宮線に入った。
 ダイヤモンド型と呼ばれるジャンクションだが、外環道側に信号機がある。
 高速道路にも関わらず、信号機付きの交差点がある稀有なジャンクションである。
 これは用地取得が困難であった為、ランプが設置できなかったことによる。
 基本的に、右折レーンが待たされるように設定されているが……。
 思った通り、埼玉県内の高速道路は冬タイヤ規制や50キロ規制が行われていたが、通行止めにはなっていなかった。
 予定変更で大宮駅は東口ではなく、西口に到着することにした。
 埼玉大宮線の終点、与野ジャンクションでループ線を回って下り、一気に地下トンネルの埼玉新都心線線に入る。
 そして、大宮駅の最寄りの出口である、新都心西出口から高速を降りた。
 ここは、旧・稲生家があった場所の近くである。

 勇太:「うわ、タクシーが1台もいない」

 大宮駅西口のタクシープールに入ると、いつもなら何十台と待機しているタクシーが1台もいなかった。
 場合によっては客待ちタクシーに阻まれて、降り場まで近づけず、その手前で降ろされることもあるというのに。
 当然、タクシー乗り場には長蛇の列ができていた。
 京浜東北線や埼京線などの通勤電車は、ダイヤが乱れつつも何とか走れているようだが、宇都宮線や高崎線などの中距離電車はもっとケガが大きいらしい。
 雪に最も強いと思われる東北新幹線でさえ、併結相手の山形新幹線や秋田新幹線が、在来線内でダイヤ乱れを起こした為、その影響を受けているようだった。
 勇太はタクシーチケットに料金を書き込んだ。
 メーターの料金の他、高速道路料金も別に書き込む。
 その間、マリアとイリーナは先に降りて、ハッチから荷物を降ろした。

 タクシー運転手:「ありがとうございました」
 勇太:「どうもお世話さまでした」

 タクシーは稲生達を乗せると、すぐにタクシー乗り場に移動した。
 タクシー会社は大宮区でも営業している大手の会社だったが、営業圏は川口と同じなのだろう(埼玉県南中央交通圏)。

 勇太:「それじゃ、まずはこの荷物をコインロッカーに置いて行きましょう」

 勇太は自分の荷物とマリアの荷物を持つと、エスカレーターで駅2階に上がった。
 改札外コンコースからも、現在の運行状況についての放送がガンガン聞こえていた。

[同日11:15.天候:晴 さいたま市大宮区 湯快爽快おおみや]

 コインロッカーに荷物を置いて、再び駅の外に出る。
 そして、ロータリーの外にある、西武バスの降車場の近く。
 そこには、1台のマイクロバスが停車していた。
 それに乗り込む。
 平日で、しかも交通が混乱気味ということもあってか、乗客は少なかった。
 後ろの座席に、3人並んで座る。
 バスは一応、決められた時間通りに発車した。
 それから、西に向かって市道を進み、国道17号線新大宮バイパスの下り線に入る。
 片側3車線の大幹線であるが、交通量は思いの外、多かった。

 バス運転手:「はい、到着しましたー」

 送迎バスは、温泉施設の入口に到着した。

 マリア:「チップっているんだっけ?」
 勇太:「要らないよ」

 イギリスやアメリカではタクシーはもちろん、送迎バスにもチップを払う習慣がある為(路線バスでは不要)。
 タクシーでは料金の支払いは、勇太に任せている。

 勇太:「うわ、寒い」

 バスを降りると、寒風が吹いて来た。

 勇太:「早く中に入りましょう」

 3人は急ぎ足で館内へと入って行った。

 マリア:「いい所なんだけど、まさか、あのヘンタイ理事がいたりはしないだろうな?」
 イリーナ:「大丈夫よ。あの理事、こっちの本業が忙しいみたいだから」

 イリーナは東の方を指さした。
 東の方には大宮駅があるが、更にその先にある物とは……。

 勇太:(顕正会の本部会館……か)

 と、勇太は察した。

 勇太:(何が忙しいのかは、聞かないでおこう)

 イリーナも、勇太が質問しなければ、それ以上言うつもりは無いようだ。

 勇太:「先に靴を脱いでくださいね」
 マリア:「そうだったな」

 勇太はスニーカー、マリアはペニー・ローファーである。
 制服ファッションには付き物の靴である。
 これらの靴は着脱しやすいが、イリーナの場合はロングブーツであり、こちらは着脱しにくいようだった。
 こちらは椅子に座って、脱ぐ。

 マリア:「シューズロッカーに入りますか?」
 イリーナ:「ただのブーツじゃないんだから」

 脛の部分が縮んで、まるでパンプスのようになる。
 確かにこれなら、すんなりと入る。

 勇太:「それじゃ、券を買います」

 因みに勇太だけ会員証持ち。

 イリーナ:「マッサージもお願いね」
 勇太:「中で申し込むみたいです」

 帰り際、イリーナたっての希望であった。
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“大魔道師の弟子” 「帰省最終日」

2022-01-23 16:04:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月7日08:00.天候:晴 埼玉県川口市某所 稲生家3F]

 起床した勇太は2階の洗面所で顔を洗った。
 洗面台そのものは3階にもあるのだが、給湯器がシャワールームと共用であり、マリアがシャワーを使っている為、勇太も洗面所を使うとお湯の出が悪くなるからだった。
 で、洗顔や歯磨きなどを終え、一旦自室に戻ろうとすると……。

 マリア:「あ、ユウタ」

 マリアが勇太の部屋から出てくるところだった。

 勇太:「おはよう。ど、どうしたの?僕の部屋に、何か用?」

 するとパジャマ姿のマリアは、溜め息をついた。

 マリア:「私のパンツ、返してね」
 勇太:「バレてた!」
 マリア:「いや、バレバレだから」

 マリアは呆れた様子で、ゲストルームに戻って行った。

 マリア:「師匠、起きてください。もう朝ですよ」

 ゲストルームに戻ったマリアは、まだベッドで横になっている師匠に言った。

 イリーナ:「やれやれ……。じゃあ、起きようかね」

 イリーナは大きく伸びをして起き上がった。

 イリーナ:「最近はウォッカを体に入れないと、よく眠れないんだよォ……」
 マリア:「昨夜、だいぶイビキかいて寝てたような気がしますが?」
 イリーナ:「それより、勇太君から下着は返してもらったの?」
 マリア:「はい」
 イリーナ:「マリアのことが好きでそうしたことは明らかなんだから、あげちゃえばいいのに」
 マリア:「まだ買ったばっかりなんで」

 マリアはそう答えながら、パジャマを脱いで服に着替えた。

[同日08:30.天候:晴 同市内 稲生家1F]

 ダイニングに移動して、朝食を取る。
 今朝の朝食は洋食だった。
 トーストにサラダ、ベーコンエッグなどである。
 昨日、勇太が頼まれたお使いの内容がふんだんに盛り込まれていた。
 で、室内のテレビでは、昨日の大雪で首都圏の交通が混乱していることを伝えていた。

 稲生佳子:「昨日は東京でも10cm積もったんですって」
 勇太:「あー……やっぱりそれくらい行ったか。都内で大雪警報とか……w」
 佳子:「別に、今日1日、うちでゆっくりして行っていいのよ?」
 勇太:「うーん……、僕もそうしたいんだけど、先生が大変でねぇ……」
 イリーナ:「すみませんねぇ……。何せ私が、お寝ぼすけさんなもので……」
 マリア:(自覚はあるんですね)

 マリアはイリーナの言葉に対するコメントを、喉元で抑え込んだ。

 勇太:「明日乗る特急“あずさ”唯一の大糸線直通が、8時ちょうどなんだ。ここから新宿発8時ちょうどの電車に乗ろうとすると、早起きしないといけないからね」
 マリア:「ルゥ・ラ(瞬間移動魔法)を使えばいいのに……」
 イリーナ:「だったら、あなたが使えるようになりなさい」
 マリア:「く……!」

 まだ、瞬間移動魔法が苦手なマリアだった。
 瞬間移動魔法にも、長距離と中距離、近距離の3つがある。
 位の高い魔道師になればなるほど長距離が得意になるが、近距離が苦手になる(大魔道師が移動に魔法を使わないのはその為)。
 その理屈で行けば、マリアは近距離が得意になるはずだが、それすら上手くできないという難点がある。
 尚、長距離や中距離は魔法陣を使うが、近距離は魔法陣を使わない。
 また、長距離や近距離の定義は曖昧である。
 さすがに地球の裏側に行くのは長距離であることは、共通しているようだが……。

 勇太:「取りあえず今日は、温泉でのんびりしつつ、新宿駅近くのホテルに一泊しようと思います」
 イリーナ:「私の希望だからね。ホテルの等級もミドル以下でいいからね」
 勇太:「はあ……」

 因みにイリーナ、随分謙虚に言っているように見えるが、国際的にはミドルクラスのホテルの中に、京王プラザホテルが入っているくらいだ。
 つまり、庶民から見て高級ホテルに分類されるはずの京王プラザホテルでさえ、国際的にはミドルクラスなのである。
 最高級のラグジュアリーは御三家と呼ばれる帝国ホテルやホテルオークラ、ニューオータニが有名。

 イリーナ:「新宿駅から近い所を予約してくれた?」
 勇太:「も、もちろんです」

 勇太の冷や汗を、マリアは察した。

 マリア:(新宿駅から徒歩圏内辺りのホテルは確保したが、ミドルクラス未満のホテルだったか。多分勇太のことだから、エレーナのホテルみたいなバジェットクラスではないだろうが……)

 バジェットクラスは低料金ホテルのことで、エコノミークラスよりも下である。
 作者愛用の東横インやスーパーホテルも、バジェットクラスに当たる。
 尚、日本のラグジュアリー御三家が先ほどの帝国ホテルなどであれば、バジェット御三家は東横イン、ルートイン、アパホテルと言われている。

 イリーナ:「あ、そうそう。私の希望なんだから、今日の費用については任せてくれていいからね」
 勇太:「あ、はい。ありがとうございます……」
 佳子:「先生、よろしいのですか?」
 イリーナ:「いいんですよ。弟子の世話も、師匠の使命ですから。私も、師匠にそう言われました。この世界は、そうやって成り立っているのです」
 佳子:「まるで徒弟制度ですね」
 イリーナ:「そう。言うなれば、徒弟制度ですよ」
 マリア:(その割には、随分とユルユルな徒弟制度だが……)

 もちろん、アナスタシア組などのように、キッチリとした徒弟制度の組もある。

[同日10:00.天候:晴 同市内 稲生家玄関→タクシー車内]

 家の前に予約したタクシーが到着する。
 首都圏の交通機関が乱れているので、タクシーも大忙しだと思うが、既に予知していたイリーナの言もあり、早めに予約していた勇太だった。

 佳子:「これ、お父さんが使ってって」
 勇太:「分かった」

 勇太は母親の佳子からタクシーチケットを受け取った。

 イリーナ:「これを置いて行きます。私の占いの結果です。機密漏洩防止の為、あえてロシア語で書いてあります。翻訳の方だけお願いします」
 佳子:「いつも申し訳ございません」
 マリア:(日本語はもちろん、英語で書くのですら面倒なだけだろうが……)

 イリーナはA4サイズの封筒を佳子に渡した。
 タクシーは赤羽から乗った高級ミニバンタイプではなく、普通のトールワゴンタイプである。
 運転手にハッチを開けてもらって、そこに荷物を乗せる。
 そして勇太は助手席に、マリアとイリーナはリアシートに座った。
 新型のトールワゴンタクシーは、女性にしては長身(170cm超え)のイリーナでも比較的ゆったり乗れるようであった。

 勇太:「大宮駅までお願いします」
 運転手:「はい。東口でよろしいですか?」
 勇太:「はい。東口でお願いします」
 運転手:「かしこまりした」

 タクシーがゆっくり走り出す。
 ゆっくりなのは、道がシャーベット状になっていたり、凍結していたりする為であった。

 運転手:「道がこういう状態なので、もしかしたら、着くまでに時間が掛かるかもしれませんが、よろしいですか?」
 勇太:「いいですよ。それでお願いします」
 運転手:「かしこまりました」

 本当に良いかどうか少し不安になったので、勇太はチラッとリアシートを見た。
 しかし、イリーナはローブのフードを被って寝入る体勢を取り、マリアは水晶玉を取り出して何か占いでもしていたので、特に問題無いと分かり、ホッとして再び前を向いた。
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