報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「魔道師とコミケ」 2

2018-08-17 19:56:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日13:00.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]

 この頃になると、長蛇の列ができている鈴木のサークル。
 その名も『顕正堂』。
 何でも元顕正会員のみで構成された同人ゲーム制作のサークルで、元顕時代に受けた害毒を忘れ得ぬようにとの意味を込めて付けたのだという。
 だからけして、顕正会や浅井会長を持ち上げるサークルではない。
 むしろ、ゲーム内容を見るや、悪の新興宗教教祖に立ち向かう青少年みたいなものになっている。

 エレーナ:「顕正堂の最後尾はこちらになりまーす」

 エレーナは『最後尾』と書かれたプラカードを持って列整理をしていた。

 エレーナ:「顕正堂の最後尾はこちらでーす!すいません、もう一歩詰めてもらえますか?」

 なかなか板に付いていたりする。

 エレーナ:(それにしても鈴木のサークル……閑古鳥が鳴いてどうせヒマだろうと思っていたのに、何て人気なんだ……。もしかして、ここの客達も元顕正会員だったりするんじゃないのか?)

 エレーナがそんなことを勘繰っていた時だった。

 一般参加者C:「すいませーん」

 と、一般参加者の青年に話し掛けられた。

 エレーナ:「はい、何ですか?」
 一般参加者C:「コスプレ参加者の方ですか?」
 エレーナ:「えっ?いや、違いますよ。私はサークルの列整理をしているだけで……」
 一般参加者C:「ああ、サークル参加者の方でしたか。失礼しました。つい、海外のレイヤーさんかと……。ここのサークルは、魔法使いモノを扱ってるんですか?」
 エレーナ:「いえ、そういうわけじゃないんです。悪の新興宗教に立ち向かう内容のアクションRPGです」
 一般参加者C:「それじゃ、どうして魔法使いのコスプレを?」
 エレーナ:「コスプレじゃなくて、本物だからです。私は本物の魔法使いなので」
 一般参加者C:「ああ、成り切りですね。分かります」
 エレーナ:「いえ、ですから、そうじゃなく……」
 一般参加者C:「よく見ると、東方Projectの霧雨魔理沙に似ていますが、それ関係ですか?」
 エレーナ:「いえ、ですから違いますよ。本物ですって!」
 一般参加者C:「そのポリシー、素敵です。良かったら後で写真撮らせてください」
 エレーナ:「いや、だから、その……!」

 しかし、一般参加者の青年は立ち去って行った。

 エレーナ:「うう……!本物だと分かってくれない……!こうなりゃ一発、モノホンの魔法ブチかまして……!」

 と、そこへエリちゃんがやってきた。

 エリ:「どうしたの、エレーナさん?疲れちゃった?交替の時間よ」

 エリちゃんはコミケ会場限定のスポーツドリンクを持って来た。
 ラベルが萌えキャラである点が特徴。

 エレーナ:「待ってました!」

 エレーナはエリちゃんからペットボトルを受け取ると、それを半分ほど一気飲みした。

 エレーナ:「プハハーッ!ヾ(≧▽≦)ノ」

 それからエレーナは鈴木と合流し、会場内を散策してみることにした。

 鈴木:「ははははっ(笑)!なに、魔法使いのコスプレだと思われたの!?」
 エレーナ:「笑い事じゃないよ!こうなったら、ここでイオナズンでもブチかましてやろうかしら?」
 鈴木:「『魔法使いのコスプレをしたテロリストが爆弾テロ起こしやがった』ってことになるだけだからやめなさい」
 エレーナ:「くそっ!」
 鈴木:「でもまあ、そんなことが起こるのも、コスプレのレベルも人口も回数を追うごとに高くなっていってるからだね。何しろ商業誌では、そんなレイヤーにスポットを当てたマンガ作品も出たくらいだからね」
 エレーナ:「ほんと、マジで多い。何でこんなに多いの?」
 鈴木:「好きな作品の好きなキャラになりきって、普段のストレスを解消しているのさ」
 エレーナ:「つまりは現実逃避か」
 鈴木:「そういうこと言わない。でもほんとマジで、クォリティ高いんだよ。……ほら!あれなんかエレーナそっくり!」
 エレーナ:「全然似てないよ!アタシの方がキレイだし!?」
 鈴木:「そんなことは分かってる!」
 エレーナ:「……えっ?」
 鈴木:「エレーナは本物の魔法使いなんだから、それに成り切ろうとしている普通の人間達を温かい目で見てくれればいいんだよ」
 エレーナ:「な、なるほど……。そうだな……」

 その時、エレーナはあるキャラクター達に気がついた。

 エレーナ:「おや?あそこにゴブリンとサキュバスとミイラ男がいる」
 鈴木:「本当だ。何の作品だろう?ドラクエとかじゃないよなぁ……」
 エレーナ:「ありゃ本物だわ」
 鈴木:「は!?」
 エレーナ:「ありゃ、魔界の住人だよ。何やってるんだ、あんな所で?」
 鈴木:「ま、まさかヤバいんじゃ……?」
 エレーナ:「ちょっと行ってくるわ」
 鈴木:「だ、大丈夫か?」

 エレーナはトラックヤードでたむろする人型のモンスター達に近づいた。

 エレーナ:「ちーっス!魔界の住人さん達ですよね?」
 ミイラ男:「おや?もしかして、あなたも?」
 サキュバス:「あら、魔法使いさんですわね」
 エレーナ:「さすがは魔界の住人。ここの人間達は私をコスプレ扱いしやがるんだよ」
 ゴブリン:「クフフフフ……。正に、我々にとっては好都合。計画通り」
 エレーナ:「何やってるんだ、こんな所で?」
 サキュバス:「羽を伸ばしに来ています」
 ゴブリン:「普段はこの世界で人間に化けて暮らしていますが、時々こういうイベントにやってきて、ストレス解消してるんだぜ」
 エレーナ:「なるほど。今はこっちに住んでるってわけか」
 ミイラ男:「せっかくの機会なのですし、あなたも正体を曝け出してみては?」
 エレーナ:「私の場合、この姿がもう既に正体だからなぁ……。元・人間の多いのがダンテ一門ってもんでねぇ……」
 サキュバス:「ダンテ一門!?」
 エレーナ:「そうだよ」
 ミイラ男:「大魔王バァル様ですら潰せなかった、あの!?」
 エレーナ:「は?」
 ゴブリン:「俺らなんて、奴隷扱いの!?」

 恐怖が頂点に達したモンスター3人組。
 慌てて逃げ出してしまった。

 コミケスタッフ:「走らないでください!」

 という注意も聞かずに……。

 エレーナ:Orz
 鈴木:「キミの組織って、相当に恐れられてるんだねぇ……。イルミナティとかフリーメイソン並み?いや、それ以上?」
 エレーナ:「ち、違うんだ……」
 鈴木:「え?」
 エレーナ:「私達だって生きていく以上はお金は必要なんだ!で、やっぱり欲があるもんだから、ちょっと贅沢しちゃったりとかしてるだけで!所詮この世界も向こうの世界も利権第一主義というか……!」
 鈴木:「否定はしないんだね」

 鈴木は呆れた。

 一般参加者C:「すいませーん!」
 エレーナ:「あ、あなた、さっきの……」
 一般参加者C:「約束通り、写真撮りに来ました」
 鈴木:「おい。俺に断りも無くそんな約束を……!」

 鈴木は嫉妬に塗れた視線でエレーナを見た。

 エレーナ:「じゃ、あんたも撮れもいいじゃない」
 鈴木:「えっ、いいの!?」
 エレーナ:「それで文句は無いでしょう。で、どんな感じに行けばいいの?」
 一般参加者C:「ああ……じゃ、まずこっちに目線を……。すいません、彼氏さん」
 鈴木:「全くだ」
 エレーナ:「いや、彼氏じゃないし!」

 魔道師のコミケは、まだもう少し続く。

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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2018-08-18 18:57:35
さいたま市中央区に住んでると、さいたまスーパーアリーナのイベントがウザくてしょうがない。
イベントが好きな人からは、アリーナの近くに住んでいることを羨ましがられるが、いやいや私はもっと静かな所に住みたいね。
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