[4月25日16:19.天候:晴 都営地下鉄上野御徒町駅→都営大江戸線1613B電車先頭車内]
〔まもなく2番線に、両国、大門経由、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
ホームに下りてしばらく待っていると、接近放送が鳴り響いた。
魔界高速電鉄が運営するアルカディアメトロの地下鉄線では、ほとんど放送が流れない。
代わりに電車が、けたまましい警笛を鳴らしながら入線してくるわけである。
こちらの地下鉄はホームドアもあってか、滅多に警笛を鳴らして入線してくることはない。
〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕
マゼンタ色に塗装された電車がやってくる。
車内は虫食い状態で席が空いている程度。
稲生達は着席することはなく、開かないドアの前に立っていた。
イリーナだけブルーの優先席に座る。
マゼンタ色はピンク色と紫色に近い色のせいか、イリーナの契約悪魔レヴィアタン(シンボルカラーはピンク)と稲生との契約が内定している悪魔アスモデウス(シンボルカラーは紫)が現れている。
もちろん人間の姿に化けた状態で優先席の前、つまり連結器の所に立っていた。
車外スピーカーから短い発車メロディが流れ、それから電車のドアとホームドアが閉まる。
ホームドアが無かった頃はワンマン運転ということもあり、すぐに発車していたものだったが、ホームドアの確認が加わったせいか、発車するまでに少々のブランクが発生した。
〔次は新御徒町、新御徒町。つくばエクスプレス線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Shin-Okachimachi.E10.Please change here for the Tukuba Express line.〕
〔日蓮正宗妙縁寺、常泉寺、本行寺へおいでの方は、蔵前で都営浅草線にお乗り換えになり、本所吾妻橋でお降りください〕
エレーナ:「なに?あの店長から魔法石もらった?」
稲生:「うん、まあね」
エレーナ:「あのクソ店長」
マリア:「オマエのせいだろうが」
エレーナ:「私も魔界で『クエスト』に参加しようかなぁ……」
稲生:「明日、仕事でしょ?ここにいるってことは……」
エレーナ:「明日は夜勤だぜ」
稲生:「だろうね」
エレーナ:「そもそも稲生氏、『クエスト』の意味分かってるか?」
稲生:「もちろん。『RPGにおいて、ゲームマスターから提示された冒険シナリオを端的にこう呼ぶ事がある。世界観の根幹に関わような大長編では無く、物語のメインストーリーからは外れた、短めの時間で終了する外伝的なシナリオがこう呼ばれることが多い』でしょ?」
エレーナ:「ウィキペディアのコピペご苦労だぜ。意味そのものは大体合ってるけど、ゲーム感覚でやったら最悪死ぬイベント満載だからな?」
稲生:「えっ!?」
マリア:「私がフォローする。今の勇太の説明から転じて、『ダンテ一門内で行われている定期テストのこと。主にアルカディアシティ内で発生している問題を魔道士として解決に導き、その報酬を得ることで得点とする』というものだよ」
エレーナ:「そうそう。そしてその得点が多ければ多いほど、昇格の確率も格段に上がるというわけだぜ。そうすれば稲生氏も晴れて一人前だぜ」
稲生:「なるほど。そうか」
エレーナ:「そうなれば稲生氏は、晴れて私と結婚できるってことだぜ。ウハウハだぜ」
稲生:「なるほど!……ん?」
マリア:「あぁ?」
イリーナ:「んん~?」
マリア:「何言ってんだ、テメェ……」
[同日16:26.天候:曇 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅]
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕
稲生:「ふう……無事に着いた」
イリーナ:「私が止めなかったら、電車が脱線してたところだったわねぇ……」
エレーナ:「マリアンナ、沸点が低過ぎるぜ」
マリア:「オマエのせいだろうが!」
稲生:「まあまあ!」
電車を降りて改札口に向かう。
稲生:「こりゃ早いとこ魔界に行った方がいいかもしれませんね」
イリーナ:「慌てなさんな。今日は取りあえず、ゆっくり一泊するよ」
エレーナ:「おう。オーナーがいい部屋用意してくれてるから、先生の仰る事に従うんだぜ?」
稲生:「だったらもう少しマリアさんと仲良くしてくれよ~」
エレーナ:「いや、私はしてるぜ?」
マリア:「ウソつけ、このやろ……」
改札口を出て更にエスカレーターと階段を上り、やっと地上に出た。
イリーナ:「ふぅ~。地下鉄は便利だけど、アップダウンが激しいねぇ……」
稲生:「あー、エレベーターに乗った方が良かったですね。すいません」
イリーナ:「ま、たまには運動するさね」
マリア:「ていうか師匠のカードで、簡単にタクシーに乗れましたね」
イリーナ:「エレーナがアテンドしてくれるって言うんだから、その顔を立ててあげなきゃ」
マリア:「はあ……」
稲生:「何か曇って来てる?」
イリーナ:「夕方、スコールがあるみたいね。夕食は、スコールが止んでからにしましょう」
稲生:「スコールって……。いや、まあ、日本も段々そんな気候になってきましたが……」
エレーナ:「ホウキで飛ぶのは危険だな……」
稲生:「“魔女の宅急便”のキキも、大雨に遭って、慌てて貨物列車に避難してたもんね」
イリーナ:「あれでいいんだよ。ヒヨっ子のうちは貨物列車に便乗するのがセオリーってもんだ。私も昔はやったねぇ……」
マリア:「え?私無いですけど?」
エレーナ:「だいぶ前、荷物の見張りでトラックの荷台に乗ったくらいスかねぇ……」
稲生:「昔、威吹と一緒に貨車を改造したトロッコ列車に乗ったことがあります」
イリーナ:「勇太君だけ合格。あとの2人は落第w」
マリア:「何でですか!」
エレーナ:「観光列車でいいんなら、今から乗って来ますぜ?」
稲生:「あ、いや、エレーナ。残念だけど、今コロナウィルスのせいで、そういう列車は全面運休だ」
エレーナ:「くそっ」
今一つ、魔道士の定期試験の合格点が分からない弟子3人であった。
もっともエレーナはイリーナ組ではないので、あんまり関係無い(但し、組違いであっても、そちらの師匠から合格点をもらえれば、自分の全体的な点数の足しにはなる)。
〔まもなく2番線に、両国、大門経由、光が丘行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
ホームに下りてしばらく待っていると、接近放送が鳴り響いた。
魔界高速電鉄が運営するアルカディアメトロの地下鉄線では、ほとんど放送が流れない。
代わりに電車が、けたまましい警笛を鳴らしながら入線してくるわけである。
こちらの地下鉄はホームドアもあってか、滅多に警笛を鳴らして入線してくることはない。
〔上野御徒町、上野御徒町。銀座線、日比谷線、JR線はお乗り換えです〕
マゼンタ色に塗装された電車がやってくる。
車内は虫食い状態で席が空いている程度。
稲生達は着席することはなく、開かないドアの前に立っていた。
イリーナだけブルーの優先席に座る。
マゼンタ色はピンク色と紫色に近い色のせいか、イリーナの契約悪魔レヴィアタン(シンボルカラーはピンク)と稲生との契約が内定している悪魔アスモデウス(シンボルカラーは紫)が現れている。
もちろん人間の姿に化けた状態で優先席の前、つまり連結器の所に立っていた。
車外スピーカーから短い発車メロディが流れ、それから電車のドアとホームドアが閉まる。
ホームドアが無かった頃はワンマン運転ということもあり、すぐに発車していたものだったが、ホームドアの確認が加わったせいか、発車するまでに少々のブランクが発生した。
〔次は新御徒町、新御徒町。つくばエクスプレス線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Shin-Okachimachi.E10.Please change here for the Tukuba Express line.〕
〔日蓮正宗妙縁寺、常泉寺、本行寺へおいでの方は、蔵前で都営浅草線にお乗り換えになり、本所吾妻橋でお降りください〕
エレーナ:「なに?あの店長から魔法石もらった?」
稲生:「うん、まあね」
エレーナ:「あのクソ店長」
マリア:「オマエのせいだろうが」
エレーナ:「私も魔界で『クエスト』に参加しようかなぁ……」
稲生:「明日、仕事でしょ?ここにいるってことは……」
エレーナ:「明日は夜勤だぜ」
稲生:「だろうね」
エレーナ:「そもそも稲生氏、『クエスト』の意味分かってるか?」
稲生:「もちろん。『RPGにおいて、ゲームマスターから提示された冒険シナリオを端的にこう呼ぶ事がある。世界観の根幹に関わような大長編では無く、物語のメインストーリーからは外れた、短めの時間で終了する外伝的なシナリオがこう呼ばれることが多い』でしょ?」
エレーナ:「ウィキペディアのコピペご苦労だぜ。意味そのものは大体合ってるけど、ゲーム感覚でやったら最悪死ぬイベント満載だからな?」
稲生:「えっ!?」
マリア:「私がフォローする。今の勇太の説明から転じて、『ダンテ一門内で行われている定期テストのこと。主にアルカディアシティ内で発生している問題を魔道士として解決に導き、その報酬を得ることで得点とする』というものだよ」
エレーナ:「そうそう。そしてその得点が多ければ多いほど、昇格の確率も格段に上がるというわけだぜ。そうすれば稲生氏も晴れて一人前だぜ」
稲生:「なるほど。そうか」
エレーナ:「そうなれば稲生氏は、晴れて私と結婚できるってことだぜ。ウハウハだぜ」
稲生:「なるほど!……ん?」
マリア:「あぁ?」
イリーナ:「んん~?」
マリア:「何言ってんだ、テメェ……」
[同日16:26.天候:曇 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅]
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです〕
稲生:「ふう……無事に着いた」
イリーナ:「私が止めなかったら、電車が脱線してたところだったわねぇ……」
エレーナ:「マリアンナ、沸点が低過ぎるぜ」
マリア:「オマエのせいだろうが!」
稲生:「まあまあ!」
電車を降りて改札口に向かう。
稲生:「こりゃ早いとこ魔界に行った方がいいかもしれませんね」
イリーナ:「慌てなさんな。今日は取りあえず、ゆっくり一泊するよ」
エレーナ:「おう。オーナーがいい部屋用意してくれてるから、先生の仰る事に従うんだぜ?」
稲生:「だったらもう少しマリアさんと仲良くしてくれよ~」
エレーナ:「いや、私はしてるぜ?」
マリア:「ウソつけ、このやろ……」
改札口を出て更にエスカレーターと階段を上り、やっと地上に出た。
イリーナ:「ふぅ~。地下鉄は便利だけど、アップダウンが激しいねぇ……」
稲生:「あー、エレベーターに乗った方が良かったですね。すいません」
イリーナ:「ま、たまには運動するさね」
マリア:「ていうか師匠のカードで、簡単にタクシーに乗れましたね」
イリーナ:「エレーナがアテンドしてくれるって言うんだから、その顔を立ててあげなきゃ」
マリア:「はあ……」
稲生:「何か曇って来てる?」
イリーナ:「夕方、スコールがあるみたいね。夕食は、スコールが止んでからにしましょう」
稲生:「スコールって……。いや、まあ、日本も段々そんな気候になってきましたが……」
エレーナ:「ホウキで飛ぶのは危険だな……」
稲生:「“魔女の宅急便”のキキも、大雨に遭って、慌てて貨物列車に避難してたもんね」
イリーナ:「あれでいいんだよ。ヒヨっ子のうちは貨物列車に便乗するのがセオリーってもんだ。私も昔はやったねぇ……」
マリア:「え?私無いですけど?」
エレーナ:「だいぶ前、荷物の見張りでトラックの荷台に乗ったくらいスかねぇ……」
稲生:「昔、威吹と一緒に貨車を改造したトロッコ列車に乗ったことがあります」
イリーナ:「勇太君だけ合格。あとの2人は落第w」
マリア:「何でですか!」
エレーナ:「観光列車でいいんなら、今から乗って来ますぜ?」
稲生:「あ、いや、エレーナ。残念だけど、今コロナウィルスのせいで、そういう列車は全面運休だ」
エレーナ:「くそっ」
今一つ、魔道士の定期試験の合格点が分からない弟子3人であった。
もっともエレーナはイリーナ組ではないので、あんまり関係無い(但し、組違いであっても、そちらの師匠から合格点をもらえれば、自分の全体的な点数の足しにはなる)。
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