報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「Joint member,Elena.」

2020-04-28 21:21:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月25日16:00.天候:晴 東京都台東区上野 某カフェ→都営地下鉄上野御徒町駅]

 エレーナ:「お、来たか」

 御徒町駅周辺を歩いた稲生達は、待ち合わせのカフェに行った。

 エレーナ:「買い物は済ませたか?」
 稲生:「まあ、一応ね」
 エレーナ:「魔界には無い品を手に入れるのなら、今のうちだぜ。それじゃ、行こうか」

 エレーナはカフェから出た。

 エレーナ:「さっきはお騒がせしてすいませんっした」

 エレーナは目を細めつつも、腕組みをして見据えているイリーナに対し、一応の謝罪はした。

 イリーナ:「分かればいいのよ。ポーリンも、あなたが人間界で騒ぎを起こすことは望んでいないだろうからね。(魔界に行った時、ポーリンにチクってもいいのよ?)」
 エレーナ:「はい……。(だから、うちの先生へのチクりだけは御勘弁を)」

 こうして一時、エレーナがメンバーに加わった。
 昔ながらのRPGでは、『エレーナ が なかま になった』だろう。
 DQシリーズなら、『エレーナが仲間に加わった』だろうし、最近のFFだと海外版を意識してか、『Joint member,Elena』と英文になっている。

 エレーナ:「それじゃ、ホテルまでご案内します」

 エレーナがターッと先導する。
 その行き先は……。

 マリア:「フツーに地下鉄かよ?」
 エレーナ:「マリアンナがタクシー代出してくれるなら、それでもいいぜ?」
 マリア:「アテンド役はオマエだろーが」
 稲生:「まあまあ。先生は行く気満々みたいですよ?」

〔下へ参ります〕

 イリーナ:「ん?どうした、皆?早く行くよー?」
 稲生:「何の躊躇いも無くエレベーターで」
 イリーナ:「さ、お婆さん。先に乗ってくださいな」
 老婆:「こりゃすいませんね~」
 マリア:「師匠はそこのお年寄りより更に13倍は年……」
 稲生:「わーっ、マリアさーん!ストーップ!」
 エレーナ:「オマエ、お歳を気にされている先生の前で堂々とそんなこと言うから毎回落第なんだぜ!少しはゴマするんだぜ!」

 慌ててマリアの口を塞ぐ稲生とエレーナ。

 エレーナ:「先に下に下りてるから、若いあなた達は階段ねー?」
 稲生:「はーい!」
 エレーナ:「了解でヤンス!」
 マリア:「フガガガ!」(←2人に口を塞がれて喋れない)

 何とかラチ外コンコースに下りた稲生達。
 因みにラチとは、鉄道用語で改札のことである。
 実は改札のことを英語でlatchという。
 gateは単なる関門という意味であって、「改札口」はこれに充てられることが多い。
 改札そのものをlatchという。
 これが転じて「ラチ」と呼ばれる。

 イリーナ:「遅いぞー、キミ達?」
 稲生:「すいません」
 エレーナ:「マリアンナが余計なこと言いやがるから……」
 イリーナ:「ま、弟子同士で気を付け合うのはいいことだよ。それより、乗り場はどこかしら?」
 稲生:「ああ。ここはまだラチ外なので。まずはラチ内コンコースに入りませんと。あっちです」
 マリア:「アテンド役、取られたな?」
 エレーナ:「日本の公共交通機関は、稲生氏の出番だぜ。ていうか、さり気無く稲生氏の鉄道用語の意味が何となく理解できる私達も感化されたか?」
 マリア:「かもしれないな」
 エレーナ:「ああ、それと稲生氏」
 稲生:「なに?」
 エレーナ:「稲生氏は日本人だからしょうがないけど、多分、latchの発音間違えてる」
 稲生:「本当かい?」
 エレーナ:「な?」
 マリア:「ま、まあ……。私は理解できたけど」(←稲生がlatchと言っていたことは理解できず、日本語で鉄道用語を言っていたと理解していた)

 アルファベットのLとR。
 日本語ではどうしても「ラ」の字が充てられるが、英語圏の国では明確に発音が分けられる。
 日本人はどうしても、この発音の違いが分からないまま学校を卒業してしまうのだ。

 イリーナ:「…………」(←ロシア人で英語圏の国ではなく、今更ながら自分もLとRの発音を上手く分けて言っているかどうか自信が無くなったので黙っている)

 で、切符売り場までやってきた。

 エレーナ:「ああ、ちょっと待ってくれ。……待ってください」

 エレーナは券売機に行くと、乗車券を3枚買って来た。

 エレーナ:「地下鉄の乗車券代だけは面倒見させてください」
 イリーナ:「あら?いいの?」
 エレーナ:「ええ。こう見えても、私がホテルまでのアテンド役なので」
 マリア:「珍しいな。電車が脱線したりしないだろうな?」
 稲生:「マリアさんw」

 しかし稲生は、明らかにタクシー代よりは安く済むので、そちらを取ったと見た。
 実際エレーナは手持ちのICカードで改札口を通過した。

 稲生:「新幹線以外でキップで乗るの久しぶりだ」
 イリーナ:「キップを入れようとする度、思い出すのよねぇ……」
 マリア:「何をですか?」
 イリーナ:「昔、宝箱の隙間にコインを入れようとしたら、ミミックに噛み付かれたのを……!」

 どういうことかというと、ダンジョンなどにたまに潜んでいる偽宝箱。
 宝箱に擬態したモンスターのことで、知らずに開けた冒険者を大きな口で丸呑みしてしまうのである。
 魔法で確認することもできるが、それができない場合、隙間にコインを入れてみるのである。
 もしもミミックだったら、飲み込むか吐き出すかするので、それで分かるという。
 基本的にミミックは、獲物に蓋を開けられないと襲ってこないという先入観が持たれていた。
 しかしイリーナに襲い掛かったミミックは、隙間にコインを入れただけで襲って来たのである。

 マリア:「よく無事でしたねぇ!?」
 イリーナ:「すぐ近くにレベル50くらいの戦士がいてね、即行バスターソードで真っ二つにしてくれたからケガだけで済んだよ。ただ、さすがに後でハイポーション2個くらい使ったけど」
 エレーナ:「FFみたいな話しないでください」
 イリーナ:「今でも隙間に何かを入れようとすると、あの時のミミックを思い出してしまうのさ」
 エレーナ:「魔界にはまだそういうミミックが多数存在しますから、お気を付けください」
 稲生:「人間界にいなくて良かったなぁ……」
 エレーナ:「いや、いると思うぜ?」
 稲生:「ええっ!?」
 エレーナ:「ただ、いたとしても弱い部類だろうけどな。ミミックにも弱いのと強いのがいるんだぜ。弱いのは、すぐ近くに本物が無いとそれに擬態できないんだぜ。例えば本物のゴミ箱があったとしても、半径数メートル以内にいないとそれに擬態できないんだぜ」
 イリーナ:「私のは強い部類だったんだねぇ。近くに本物の宝箱は無かったよ」
 エレーナ:「まあ、魔界にはそんなのがゴロゴロいますからねぇ……」
 稲生:「何だか怖いな」
 エレーナ:「アルカディアシティには、そんなに凶暴なヤツはいないから安心するんだぜ。問題なのは、町の外だぜ。稲生氏も町の外を歩いたことがあるんだろ?確か、女戦士と一緒だったとか……」
 稲生:「サーシャか。懐かしいなぁ。元気にしてるのかな」
 イリーナ:「気になるなら、会いに行こうか?時間があれば、だけど……」
 稲生:「ま、何かのついでに寄れたらそうしますか。サーシャもエリックと結婚できて、もう子供さんも何人も生んでるって聞いてますし……」
 イリーナ:「あの重戦士の男か。戦士同士の子供なら、さぞ強い戦士になるんだろうねぇ……」
 稲生:「アルカディア王国では、国防軍の正規兵を募集しているみたいですね」
 イリーナ:「徴兵制度が廃止されたからね。志願兵だけで定員を満たそうとすると、大募集掛けないとね」
 稲生:「日本の自衛隊みたい」
 イリーナ:「状況はそれに似てるかもね」

 改札口を通った稲生達は、ラチ内コンコースからすぐにホームに下りた。

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