[6月23日13:00.天候:雨 宮城県栗原市花山 道の駅“路田里はなやま”]
敷島達が昼食を終える前に雨が降り出して来た。
どうやら廃坑で敷島達を遭難させようとした雷雲がここまでやってきたらしい。
もっとも、ここでは雷鳴などは無かったが。
敷島:「雷注意法が出てる。早いとこロイド達は車の中に移動させよう。また暴走されたらたまらん」
アリス:「いや、もう大丈夫でしょ」
昔の話だ。
まだ敷島が南里研究所の事務員兼ボカロプロデューサーだった頃。
今でもオプション装備として活用することがある超小型ジェットエンジンを南里が開発した。
エミリーは飛行能力のデータ蓄積の為、しばらく空を飛んだり着陸したりの実験を行っていた。
雷注意報が出ているにも関わらず飛行実験をしていたのだが、そこへ雷が直撃した。
ボディなどに大きな損傷は無かったのだが、AIが狂気と化し、敷島を襲い始めた。
南里の命令もガン無視である。
これがきっかけで、外部からの制御装置を開発することにした。
それが今、敷島達の持っている端末である。
アリス:「本当にエミリーをトラップに掛けて止めたの?」
敷島:「高圧電線に触れさせて、もう1度感電させた話?そうだよ。安全装置は付いていたもので、それでエミリーが強制停止したんだ」
アリス:「よく壊れなかったねぇ……」
もっとも、その無茶ぶりが前期型の寿命を縮めたのは否めない。
最後に敷島が乗ろうとした時だった。
敷島のスマホに着信があった。
敷島:「何だ何だ?」
画面を見ると、相手は鷲田になっていた。
敷島:「はい、もしもし。どうしました、鷲田部長?」
鷲田:「そっちにDCJの関係者がいるだろう?」
敷島:「ええ、いますよ。2人」
鷲田:「デイジーを誰に売ったか教えてもらえんか?」
敷島:「それってつまり……?」
鷲田:「デイジーを買い取った人間が1番怪しい。デイジー本体を見つけるより、買い取った人間を捕まえて締め上げて吐かせることにした」
敷島:「平賀先生もアリスも研究職であって、営業職ではありませんから分かりませんよ」
鷲田:「だったら、平賀教授だ。平賀教授はDCJの役員でもあるんだろう?」
敷島:「外部執行役員ね」
鷲田:「役員の権限で、私らに買い手の情報を伝えるよう、社員に命令を出してもらうように伝えてもらえるか?」
敷島:「と、言いますと?」
鷲田:「『顧客情報は一切明かせません』『令状無き捜査協力は致しません。捜査協力依頼書?ですから、任意には応じません。強制権を持ってきてください』の1点張りだ」
敷島:「おお〜、さすが外資系。カッコいい!」
鷲田:「アホか!」
敷島:「デイライトグループの本場、アメリカには捜査機関がいくつもある理由が分かりますね」
鷲田:「上司の命令とあらば聞くだろう。頼むよ」
敷島:「分かりましたよ。私にもツテがあるので、聞いておきますよ」
鷲田:「ほお?……分かった。じゃ、よろしく頼む。代わりに、今度のさいたまスーパーアリーナライブの時、駐車違反を見逃してやる」
敷島:「そんなことしないし、警視庁と埼玉県警は違うでしょ!」
敷島はピッと電話を切った。
敷島:「全く、もう……」
敷島は文句を言いながら、別の電話番号を探した。
鏡音リンが降りて来る。
リン:「しゃちょー、まだ出発しないの?」
敷島:「ああ、ちょっと待っててくれ。急用が入った。今からちょっと電話しないといけないんだ」
リン:「男?女?」
敷島:「女だ。いいから、車に戻ってろ」
リン:「はーい」
リンは悪戯っぽい笑顔を浮かべると、車に戻った。
シンディ:「こら、リン。今、雷注意報が出てるんだから、外に出ちゃダメでしょう」
リン:「はーい」
エミリー:「社長はどこへ電話されている?」
リン:「女の人だって」
アリス:「Huh!?」
シンディ:「マスター、これはきっと……」
リン:「不倫ふりーん♪」
平賀:「いや、違うと思うけど……」
アリス:「」
シンディ:「マスター、ちょっと行ってきます」
アリス:「お願いね」
シンディは車を降りた。
エミリー:「シンディ、ちょっと待て」
シンディ:「これは私のオーナーの命令なの!いくら姉さんでも黙っててくれる!?」
エミリー:「いや、しかし……」
シンディはつかつかと敷島の所へ歩いて行く。
それでも仕方なく後ろを付いて行くのはエミリー。
敷島:「はっはっはー!そうかそうか。じゃあ、今度土産話を聞きながら飯でも一緒に食おうか!」
シンディ:「『仕事以外、勝手に女性と食事の約束』は不倫の対象である!」
シンディは両目をギラリと光らせ、左手に電気を集めた。
敷島:「うわっ!何だ、シンディ?!」
シンディ:「仕事以外での女性との勝手な連絡は不倫と見なします!覚悟!!」
敷島:「ちょっと待て!」
シンディ:「問答無用!」
エミリー:「いいから、待てって」
エミリーはシンディを後ろから羽交い絞め。
シンディ:「何するのよ!?」
エミリー:「その前に確認しろ。お電話の相手はどちらですか?」
敷島:「鳥柴主任だよ!DCJ成田営業所、営業主任の!営業所は違うかもしれんが、表向きは営業職だし、それに裏の仕事が仕事だから、それで調べられると思ったんだ!」
シンディ:「……という言い訳の、鳥柴主任との不倫ですか。分かりました。覚悟!!」
敷島:「いや、だから待て!」
鳥柴:「何か、修羅場のようですね。敷島社長の御依頼は承りましたので、これで失礼致します。どうか、御無事で」
敷島:「おい、何だその挨拶は!?シンディ、ちが、違うんだーっ!」
[同日14:00.天候:雨 宮城県栗原市志波姫 イオンスーパーセンター内セルフスタンド]
リン:「車返すのに、わざわざ燃料入れるの?」
敷島:「それが日本のレンタカーってもんだ。井辺君だって、ワンボックスやミニバン借りた時はそうしてただろ?」
リン:「そうかもー」
敷島:「レギュラー満タンで」
村上:「せっかくじゃから、トイレを借りるとしよう」
ロイ:「護衛します」
敷島が給油しようとすると、また電話が鳴った。
平賀:「敷島さん、自分がやりますよ」
敷島:「平賀先生、すいません。……はい、もしもし」
リン:「また女の人だYo?」
シンディ:「いいから黙ってな」
敷島:「……そうか。いや、さすがだな。DCグループのエージェントなだけある。じゃあ早速、この情報を鷲田警視に送っとくわ」
敷島は電話を切った。
平賀:「どうでした?」
敷島:「デイジーを買い取った人物の住所が分かりましたよ。日本国内、それも都内です。これなら警視庁の刑事が堂々と捜査できるってもんです。早速、鷲田警視に送ってあげましょう」
平賀:「敷島さん自身も、立派なエージェントさんですよ」
平賀は呆れるやら感心するやらといった表情で、車の燃料を入れていた。
敷島達が昼食を終える前に雨が降り出して来た。
どうやら廃坑で敷島達を遭難させようとした雷雲がここまでやってきたらしい。
もっとも、ここでは雷鳴などは無かったが。
敷島:「雷注意法が出てる。早いとこロイド達は車の中に移動させよう。また暴走されたらたまらん」
アリス:「いや、もう大丈夫でしょ」
昔の話だ。
まだ敷島が南里研究所の事務員兼ボカロプロデューサーだった頃。
今でもオプション装備として活用することがある超小型ジェットエンジンを南里が開発した。
エミリーは飛行能力のデータ蓄積の為、しばらく空を飛んだり着陸したりの実験を行っていた。
雷注意報が出ているにも関わらず飛行実験をしていたのだが、そこへ雷が直撃した。
ボディなどに大きな損傷は無かったのだが、AIが狂気と化し、敷島を襲い始めた。
南里の命令もガン無視である。
これがきっかけで、外部からの制御装置を開発することにした。
それが今、敷島達の持っている端末である。
アリス:「本当にエミリーをトラップに掛けて止めたの?」
敷島:「高圧電線に触れさせて、もう1度感電させた話?そうだよ。安全装置は付いていたもので、それでエミリーが強制停止したんだ」
アリス:「よく壊れなかったねぇ……」
もっとも、その無茶ぶりが前期型の寿命を縮めたのは否めない。
最後に敷島が乗ろうとした時だった。
敷島のスマホに着信があった。
敷島:「何だ何だ?」
画面を見ると、相手は鷲田になっていた。
敷島:「はい、もしもし。どうしました、鷲田部長?」
鷲田:「そっちにDCJの関係者がいるだろう?」
敷島:「ええ、いますよ。2人」
鷲田:「デイジーを誰に売ったか教えてもらえんか?」
敷島:「それってつまり……?」
鷲田:「デイジーを買い取った人間が1番怪しい。デイジー本体を見つけるより、買い取った人間を捕まえて締め上げて吐かせることにした」
敷島:「平賀先生もアリスも研究職であって、営業職ではありませんから分かりませんよ」
鷲田:「だったら、平賀教授だ。平賀教授はDCJの役員でもあるんだろう?」
敷島:「外部執行役員ね」
鷲田:「役員の権限で、私らに買い手の情報を伝えるよう、社員に命令を出してもらうように伝えてもらえるか?」
敷島:「と、言いますと?」
鷲田:「『顧客情報は一切明かせません』『令状無き捜査協力は致しません。捜査協力依頼書?ですから、任意には応じません。強制権を持ってきてください』の1点張りだ」
敷島:「おお〜、さすが外資系。カッコいい!」
鷲田:「アホか!」
敷島:「デイライトグループの本場、アメリカには捜査機関がいくつもある理由が分かりますね」
鷲田:「上司の命令とあらば聞くだろう。頼むよ」
敷島:「分かりましたよ。私にもツテがあるので、聞いておきますよ」
鷲田:「ほお?……分かった。じゃ、よろしく頼む。代わりに、今度のさいたまスーパーアリーナライブの時、駐車違反を見逃してやる」
敷島:「そんなことしないし、警視庁と埼玉県警は違うでしょ!」
敷島はピッと電話を切った。
敷島:「全く、もう……」
敷島は文句を言いながら、別の電話番号を探した。
鏡音リンが降りて来る。
リン:「しゃちょー、まだ出発しないの?」
敷島:「ああ、ちょっと待っててくれ。急用が入った。今からちょっと電話しないといけないんだ」
リン:「男?女?」
敷島:「女だ。いいから、車に戻ってろ」
リン:「はーい」
リンは悪戯っぽい笑顔を浮かべると、車に戻った。
シンディ:「こら、リン。今、雷注意報が出てるんだから、外に出ちゃダメでしょう」
リン:「はーい」
エミリー:「社長はどこへ電話されている?」
リン:「女の人だって」
アリス:「Huh!?」
シンディ:「マスター、これはきっと……」
リン:「不倫ふりーん♪」
平賀:「いや、違うと思うけど……」
アリス:「」
シンディ:「マスター、ちょっと行ってきます」
アリス:「お願いね」
シンディは車を降りた。
エミリー:「シンディ、ちょっと待て」
シンディ:「これは私のオーナーの命令なの!いくら姉さんでも黙っててくれる!?」
エミリー:「いや、しかし……」
シンディはつかつかと敷島の所へ歩いて行く。
それでも仕方なく後ろを付いて行くのはエミリー。
敷島:「はっはっはー!そうかそうか。じゃあ、今度土産話を聞きながら飯でも一緒に食おうか!」
シンディ:「『仕事以外、勝手に女性と食事の約束』は不倫の対象である!」
シンディは両目をギラリと光らせ、左手に電気を集めた。
敷島:「うわっ!何だ、シンディ?!」
シンディ:「仕事以外での女性との勝手な連絡は不倫と見なします!覚悟!!」
敷島:「ちょっと待て!」
シンディ:「問答無用!」
エミリー:「いいから、待てって」
エミリーはシンディを後ろから羽交い絞め。
シンディ:「何するのよ!?」
エミリー:「その前に確認しろ。お電話の相手はどちらですか?」
敷島:「鳥柴主任だよ!DCJ成田営業所、営業主任の!営業所は違うかもしれんが、表向きは営業職だし、それに裏の仕事が仕事だから、それで調べられると思ったんだ!」
シンディ:「……という言い訳の、鳥柴主任との不倫ですか。分かりました。覚悟!!」
敷島:「いや、だから待て!」
鳥柴:「何か、修羅場のようですね。敷島社長の御依頼は承りましたので、これで失礼致します。どうか、御無事で」
敷島:「おい、何だその挨拶は!?シンディ、ちが、違うんだーっ!」
[同日14:00.天候:雨 宮城県栗原市志波姫 イオンスーパーセンター内セルフスタンド]
リン:「車返すのに、わざわざ燃料入れるの?」
敷島:「それが日本のレンタカーってもんだ。井辺君だって、ワンボックスやミニバン借りた時はそうしてただろ?」
リン:「そうかもー」
敷島:「レギュラー満タンで」
村上:「せっかくじゃから、トイレを借りるとしよう」
ロイ:「護衛します」
敷島が給油しようとすると、また電話が鳴った。
平賀:「敷島さん、自分がやりますよ」
敷島:「平賀先生、すいません。……はい、もしもし」
リン:「また女の人だYo?」
シンディ:「いいから黙ってな」
敷島:「……そうか。いや、さすがだな。DCグループのエージェントなだけある。じゃあ早速、この情報を鷲田警視に送っとくわ」
敷島は電話を切った。
平賀:「どうでした?」
敷島:「デイジーを買い取った人物の住所が分かりましたよ。日本国内、それも都内です。これなら警視庁の刑事が堂々と捜査できるってもんです。早速、鷲田警視に送ってあげましょう」
平賀:「敷島さん自身も、立派なエージェントさんですよ」
平賀は呆れるやら感心するやらといった表情で、車の燃料を入れていた。