[10月12日20:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]
敷島は巡音ルカのダンスを見ていた。
手元にはルカの監視端末がある。
ルカ:「……いかがだったでしょうか?」
一通りダンスを終えて、ルカが敷島に聞いてきた。
敷島:「照合率92.28%か。まずまずだとは思うがな」
ルカ:「でもリンやレンは98%超えです。MEIKOやKAITOでも95%を超えています」
敷島:「数%の誤差くらい、普通の人間は気付かないよ。それに、そういった誤差は調整だけでどうにかなるものじゃない。もちろん持ち前の性能の関係もあるし、整備状況も関係してくる。うちのアリスが言っていたが、『今の技術では90%を超えれば御の字』だそうだ」
ルカ:「で、でもっ……!」
敷島:「とはいえ、100%は無理だとしても、95%超えなら調整で何とかなるか」
ルカ:「私は……ポンコツなのでしょうか?」
敷島:「誰がそんなこと言った!お前はダンスに関しては多少性能が劣るだけで、歌唱性能はボカロ全機並べりゃトップなんだぞ?」
ルカ:「しかし、人間は私達に対して完璧を求めていると聞きます」
敷島:「それは否定しないさ。ただ、それは『ロボット』に対してであって、ロイドではないと思う」
ルカ:「?」
敷島:「ここ最近思うんだが、お前達は動きが完璧過ぎて……そこに新たな問題があるような気がしてならないんだ」
ルカ:「???」
敷島:「いや、それはお前は考えなくていい。そういうのは人間に任せてくれ。とにかく、かなりバッテリーを消耗しただろ?停電する前に早いとこ充電しておけ」
ルカ:「分かりました。ありがとうございました」
敷島:「じゃあな」
敷島はレッスン室を出ると、事務室に向かった。
敷島:(『動きが完璧過ぎてつまらない』とか、『ロボットのようだ』とか、そういう批判の声もあるんだよなぁ……。かといってあまりファジィ過ぎると、今度は『ロイドである必要が無い』とかなるし……。うーむ……)
そして事務室に入る。
井辺:「あっ、社長。レッスン室から音楽が聞こえてきましたが?」
敷島:「ルカが自分のダンス性能を気にしてたんだよ」
井辺:「歌唱性能を重視する余り、身体能力が劣ってしまったということですが……」
敷島:「それでも照合率は90%超えだったよ。俺的にはそれで十分だと思うんだ。今の技術では、彼女らの体で100%は無理だし」
井辺:「近づければ近づけるほど、『ロボットみたいだ』とか言われるんですよね」
敷島:「まあ、『ロボットみたい』なんだけどな。俺的には95%前後がちょうどいいと思ってる」
井辺:「ですよねぇ……」
敷島:「それで、イベントの調整はどうなった?」
井辺:「あ、はい。一応、ほとんどが11月に延期ですね。今月中だとまた台風が発生して接近して来る恐れがありますし、あと『即位の礼』とカブる恐れがありますので」
敷島:「あ、そうか。もっとも、11月だって台風が来る時ゃ来るけどな」
井辺:「しかし10月よりは確率は低いです」
敷島:「まあな。1番いいのは12月だと思う」
井辺:「12月はクリスマスイベントやら年末特番やらで稼ぎ時です」
敷島:「ライブだってそうさ。さすがに12月ともなれば台風はまず発生しないし、それに……」
井辺:「それに?」
敷島:「地球温暖化のおかげで、まず12月に東京で大雪が降ることは無いから、それでイベント中止とかは無い」
井辺:「仰る通りです。そもそも雪自体が降らないです」
敷島:「だな!ドラマとかアニメとかじゃ、都合良く東京で12月24日や25日に雪が降って、『ホワイトクリスマスぅ〜w』とか言ってるが、実際は無ェぞ?」
井辺:「だから撮影の時は人工の雪を降らせるんですよね」
敷島:「札幌の雪ミクイベントを東京でやろうとした時は大変だったな」
井辺:「またやります?」
敷島:「……やるか?」
井辺:「本社がまた嫌な顔するでしょうけど」
敷島:「問題無い。そのイベントで大黒字(おおもうけ)できりゃ、叔父さん達のうるさい口を札束で封じることができるよ」
井辺:「さすが社長。発想が違います」
敷島:「だろォ?」
その時、室内の照明がブレた。
ブレたというのは明暗を繰り返したという意味だ。
敷島:「な、何だ何だ?」
井辺:「瞬低とか瞬電とかいうヤツですかね?どうやら、冗談抜きで停電フラグが立っているようです」
敷島:「それはヤバいな。今のうちに停電対策グッズ用意しておこう」
井辺:「あっ、社長。私がやりますよ。社長は休んでてください」
敷島:「いや、いいよいいよ。井辺君こそ、そろそろシャワーとか使って寝る準備しておけよ。停電したらシャワーも使えなくなるぞ」
井辺:「あ、はい」
敷島はまた社長室に戻った。
時折、窓ガラスを激しい暴風雨が叩き付けている。
それが分かるくらい大きな音だ。
エミリー:「社長、ベッドの用意ができました」
敷島:「おっ、ありがとう」
エミリーはエアで膨らませるタイプのベッドを用意していた。
これだけで大きさはセミダブルくらいある。
敷島的にはシングルサイズで良かったのだが、エミリーやシンディが反対した。
同衾したいからである。
そこはアリスも止めなかった。
他の人間の女を同衾させるくらいなら、まだ自分の祖父の作品(シンディ)やその姉妹品(エミリー)を同衾させておいた方が良いという考えだ。
その為、ダブルサイズも販売していたのだが、そこは何故か阻止され、折衷案としてセミダブルとなったという経緯がある。
エミリー:「先ほど電気系統にトラブルが発生したようです。停電する前にお休みになられた方がいいと思います」
敷島:「そうだな。井辺君が先に休んだら、俺もそうするよ」
エミリー:「井辺プロデューサーは仮眠室を利用でしたね」
敷島:「そう」
エミリー:「それでは私は仮眠室で井辺プロデューサーのベッドを用意して参ります」
敷島:「あ、それがいいな。頼むぞ」
エミリーは社長室を出ていった。
敷島は室内の応接セットのソファに座ると、またテレビを点けた。
敷島:「何度見ても東京直撃は確定か。……俺も帰りゃ良かったかな?……まあいいや」
敷島は巡音ルカのダンスを見ていた。
手元にはルカの監視端末がある。
ルカ:「……いかがだったでしょうか?」
一通りダンスを終えて、ルカが敷島に聞いてきた。
敷島:「照合率92.28%か。まずまずだとは思うがな」
ルカ:「でもリンやレンは98%超えです。MEIKOやKAITOでも95%を超えています」
敷島:「数%の誤差くらい、普通の人間は気付かないよ。それに、そういった誤差は調整だけでどうにかなるものじゃない。もちろん持ち前の性能の関係もあるし、整備状況も関係してくる。うちのアリスが言っていたが、『今の技術では90%を超えれば御の字』だそうだ」
ルカ:「で、でもっ……!」
敷島:「とはいえ、100%は無理だとしても、95%超えなら調整で何とかなるか」
ルカ:「私は……ポンコツなのでしょうか?」
敷島:「誰がそんなこと言った!お前はダンスに関しては多少性能が劣るだけで、歌唱性能はボカロ全機並べりゃトップなんだぞ?」
ルカ:「しかし、人間は私達に対して完璧を求めていると聞きます」
敷島:「それは否定しないさ。ただ、それは『ロボット』に対してであって、ロイドではないと思う」
ルカ:「?」
敷島:「ここ最近思うんだが、お前達は動きが完璧過ぎて……そこに新たな問題があるような気がしてならないんだ」
ルカ:「???」
敷島:「いや、それはお前は考えなくていい。そういうのは人間に任せてくれ。とにかく、かなりバッテリーを消耗しただろ?停電する前に早いとこ充電しておけ」
ルカ:「分かりました。ありがとうございました」
敷島:「じゃあな」
敷島はレッスン室を出ると、事務室に向かった。
敷島:(『動きが完璧過ぎてつまらない』とか、『ロボットのようだ』とか、そういう批判の声もあるんだよなぁ……。かといってあまりファジィ過ぎると、今度は『ロイドである必要が無い』とかなるし……。うーむ……)
そして事務室に入る。
井辺:「あっ、社長。レッスン室から音楽が聞こえてきましたが?」
敷島:「ルカが自分のダンス性能を気にしてたんだよ」
井辺:「歌唱性能を重視する余り、身体能力が劣ってしまったということですが……」
敷島:「それでも照合率は90%超えだったよ。俺的にはそれで十分だと思うんだ。今の技術では、彼女らの体で100%は無理だし」
井辺:「近づければ近づけるほど、『ロボットみたいだ』とか言われるんですよね」
敷島:「まあ、『ロボットみたい』なんだけどな。俺的には95%前後がちょうどいいと思ってる」
井辺:「ですよねぇ……」
敷島:「それで、イベントの調整はどうなった?」
井辺:「あ、はい。一応、ほとんどが11月に延期ですね。今月中だとまた台風が発生して接近して来る恐れがありますし、あと『即位の礼』とカブる恐れがありますので」
敷島:「あ、そうか。もっとも、11月だって台風が来る時ゃ来るけどな」
井辺:「しかし10月よりは確率は低いです」
敷島:「まあな。1番いいのは12月だと思う」
井辺:「12月はクリスマスイベントやら年末特番やらで稼ぎ時です」
敷島:「ライブだってそうさ。さすがに12月ともなれば台風はまず発生しないし、それに……」
井辺:「それに?」
敷島:「地球温暖化のおかげで、まず12月に東京で大雪が降ることは無いから、それでイベント中止とかは無い」
井辺:「仰る通りです。そもそも雪自体が降らないです」
敷島:「だな!ドラマとかアニメとかじゃ、都合良く東京で12月24日や25日に雪が降って、『ホワイトクリスマスぅ〜w』とか言ってるが、実際は無ェぞ?」
井辺:「だから撮影の時は人工の雪を降らせるんですよね」
敷島:「札幌の雪ミクイベントを東京でやろうとした時は大変だったな」
井辺:「またやります?」
敷島:「……やるか?」
井辺:「本社がまた嫌な顔するでしょうけど」
敷島:「問題無い。そのイベントで大黒字(おおもうけ)できりゃ、叔父さん達のうるさい口を札束で封じることができるよ」
井辺:「さすが社長。発想が違います」
敷島:「だろォ?」
その時、室内の照明がブレた。
ブレたというのは明暗を繰り返したという意味だ。
敷島:「な、何だ何だ?」
井辺:「瞬低とか瞬電とかいうヤツですかね?どうやら、冗談抜きで停電フラグが立っているようです」
敷島:「それはヤバいな。今のうちに停電対策グッズ用意しておこう」
井辺:「あっ、社長。私がやりますよ。社長は休んでてください」
敷島:「いや、いいよいいよ。井辺君こそ、そろそろシャワーとか使って寝る準備しておけよ。停電したらシャワーも使えなくなるぞ」
井辺:「あ、はい」
敷島はまた社長室に戻った。
時折、窓ガラスを激しい暴風雨が叩き付けている。
それが分かるくらい大きな音だ。
エミリー:「社長、ベッドの用意ができました」
敷島:「おっ、ありがとう」
エミリーはエアで膨らませるタイプのベッドを用意していた。
これだけで大きさはセミダブルくらいある。
敷島的にはシングルサイズで良かったのだが、エミリーやシンディが反対した。
同衾したいからである。
そこはアリスも止めなかった。
他の人間の女を同衾させるくらいなら、まだ自分の祖父の作品(シンディ)やその姉妹品(エミリー)を同衾させておいた方が良いという考えだ。
その為、ダブルサイズも販売していたのだが、そこは何故か阻止され、折衷案としてセミダブルとなったという経緯がある。
エミリー:「先ほど電気系統にトラブルが発生したようです。停電する前にお休みになられた方がいいと思います」
敷島:「そうだな。井辺君が先に休んだら、俺もそうするよ」
エミリー:「井辺プロデューサーは仮眠室を利用でしたね」
敷島:「そう」
エミリー:「それでは私は仮眠室で井辺プロデューサーのベッドを用意して参ります」
敷島:「あ、それがいいな。頼むぞ」
エミリーは社長室を出ていった。
敷島は室内の応接セットのソファに座ると、またテレビを点けた。
敷島:「何度見ても東京直撃は確定か。……俺も帰りゃ良かったかな?……まあいいや」
初音ミク出てこねーなーって。
ボカロの中では一番好きなんだけど。
やっぱセンター不動という安定感は大事だね。
まあこの作品、別にボカロが主人公というわけではないので。
だから、ボカロ小説ではないです。
午後は引っ越し先のマンションの内見に行って来ます。