報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「第一の中ボス戦」

2015-10-16 02:42:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明(常に時計があるわけではないので)天候:不明 洋館1F 井辺翔太&シー]

 謎解きや仕掛けを解きながら、洋館からの脱出ルートを探す井辺達。
 倒しても復活を繰り返すバージョン3.0-046に追われながらの探索であった。
 どうしても鍵が必要で、開けられないドアがあるのが1ヶ所。
 『新館』と書かれたドアだけだった。
 そのままの意味で受け止めると、それなら今、井辺達のいる所は『旧館』ということになるが……。

 今、井辺達はある場所に来ている。
「『ここから先、明かりを持つ者の先導無くして進むは自害に等しい』?」
 鍵の掛かっていないドアを開けようとすると、入口にそんなことが書いてあった。
「明かり?ライトが必要ってことかな?」
「いや、そうじゃないんだ」
 と、シー。
 ドアを開けて中に入ると、
「何だこれは?」
 向こう側にドアが見える。
 しかし、こちら側と向こう側の間……50メートルくらいだろうか。
 床が真っ黒に塗られていた。
 漆黒と言って良い。
 まるで奈落の底へ通じているようだ……。
「うん、『奈落の穴』だよ」
「えっ?」
「このまま行ったら翔太さん、落ちるよ」
「何ですって?じゃあ、やっぱりライトを……」
「いや、大丈夫。ボクの後ろを着いてきて」
「は?」
 シーが言うと、全身が光った。
「あっ?」
 そして、床の上スレスレを低く飛ぶ。
 その光に黒い御影石が黒光りに反射し、全く反射しない穴とは一線を画していた。
「なるほど。『明かりを持つ者』とはシー君のことでしたか!」
 井辺は納得してシーの後ろを着いて行った。
 御影石の床はまるで山道のようにうねっていた。
 ゆっくりとシーの後ろを着いていったおかげで、井辺は穴に落ちずに済んだのである。
「この先は何になっているのでしょう?」
「確か、教会だね」
「教会?……チャペルですか?こんな所に?」
「うん」

 ドアを開けると、確かにそこは教会の礼拝堂になっていた。
「こ、これは……!?」
 ただ違うのは、他のキリスト教会なら聖母マリア像とかイエス・キリスト像が立っている位置に、別の神像が立っていたことだ。
「これは……人間ですか?」
 神像は石膏で作られていたが、明らかにキリスト教会で安置されているものとは違った。
 白衣を着た老人が、その両側のポケットに手を入れ、台座の上から見下ろしている。
「うん?」
 その台座の前には、神像についての説明があった。
 日本語で大きく書かれたその下に、英語で書かれている。
『ロイドの偉大なる神、ウィリアム・フォレスト』と。
「これはドクター・ウィリーの……!?」
 すると背後でドアの開く音がした。
 振り向くと、あの46号機が入ってきていた。
 46号機はドアを閉めると鍵を掛け、
「キュルキュルキュル……」
 井辺に赤い目(カメラセンサー)を向けた。
「翔太さん、来るよ」
 シーはそれだけ言うと、神像の裏に隠れた。
「くっ!」
 井辺が脱兎の如くその場から離れると、46号機もまたダッシュで突進してきた。
 ドーンと46号機が壁に激突する。
 が、もちろんそれだけで壊れるほどヤワではない。
 次に柱の所に行くと、またもや突進してきて、柱に体当たり。
 まだ井辺の方が若干速いので、体当たりの直撃は避けられているもよう。
「翔太さん!シャンデリアを落として!」
 シーが神像の台座の上から叫んだ。
 背中からはコードが伸びている。
 さっき光ったことで、残りのバッテリーが残り僅かになったようである。
「落としてって……ん?」
 よく見ると、シャンデリアは柱からワイヤーロープで支えられているらしい。
 旧館ということもあってか、館全体が老朽化していることは否めない。
 それで自然発生した罠(抜けた床、崩れた階段、落ちたバルコニー)に悩まされたものだ。
 この礼拝堂もそうで、シャンデリアを吊っている天井からのチェーンは錆びていた。
 そしてさっき柱に46号機が体当たりしたことで、ワイヤーとチェーンのバランスが悪くなっている。
「こっちだ!46号機!」
 井辺は反対側の柱の前に立った。
 案の定、46号がまた体当たりしてくる。
 柱に激突すると、ついにその衝撃で古くなったワイヤーが切れた。
「今だ!」
 そして井辺がシャンデリアの下に46号を誘導する為、そこの元へ向かう。
 いつの間にかシャンデリアの上に移動していたシーが、井辺の通過を待って最後のチェーンを切った。
 台座の下に何か道具があったらしく、それを使用した。

 そして……。

「やったか!?」
 とても大きくて重厚なシャンデリアが落下し、それは46号に直撃した。
 とても大きな音がしたので、井辺もシーもびっくりしたくらいだ。
 46号は火花を散らして、今度こそ動かなくなった。
「やったね!井辺さん!」
「ええ!シー君のおかげです!」
 これでもう46号機が襲ってくることは……。
「えっ?」
「あっ!?」
「グググ……」
 何と!それでも46号は壊れなかった。
 バージョン・シリーズなど、エミリーやシンディにど突かれれば、簡単に壊れるくらいなのに……。
「し、シー君。ど、どうしますかね……?」
「ど、どうって……。もう、手は無いヨ……」
 46号機はシャンデリアをどかすと、ゆっくりと立ち上がり……。
「……!!」
 井辺の前に跪いた。
 そして、まるで顕正会員が浅井会長に伏せ拝するメッカの方角に向かって祈りを捧げるムスリムのように、何度も頭を床に擦り付けた。
 その後でゆっくりと立ち上がると井辺達に背を向け、掛けたドアの鍵を開けると、礼拝堂から立ち去って行った。
「な、何だったのだろう……?」
「翔太さんを『神様』と間違えた?」
 シーが後ろにある神像を見ながら言った。
「ちょうどヨンロックから見て、翔太さんの立ち位置、像の前だし、照明の関係で後光が差しているように見えたからね。あとは……頭を打ったショックとかさ」
「ロボットなのに、意外と信心深いんですねぇ……。とにかく、これでもう46号機が襲ってくることはないということでしょうか?」
「そういうことになるね」
「1つの大きな勝利でしょうが、進展は無さそうですね」
「まあ……。井辺さん、これで少しは安心でしょ?少し休んだら?」
「そう、ですね。取りあえず、戻りましょうか」

 井辺とシーは礼拝堂を出た。
 再び御影石の通路を通らなくてはならなかったが、またもやシーの誘導で安全に通れた。
 何か、微妙に通路の形が変わったような……?
 せっかく戦いに勝ったのに、帰り際、穴に落ちたなんてシャレにもならない。

「あっ!?」
「!?」
 何とかスイートルームの前まで戻ってくると、部屋の前で待ち構えている者がいた。
 それは……。
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