[6月13日03:00.貨物船スター・オブ・イースタン号 船底区画・第3貨物室 敷島孝夫、エミリー、シンディ]
{「第3貨物室の奥の方です。気をつけて」}
「……了解」
平賀の無線が飛んで来る。
敷島達は第3貨物室に潜入した。
そこにはバージョン4.0などの気配は無かった。
「……どうやら、あのコンテナのようだな」
「今度はアタシと姉さんと開けるよ。社長はここで待ってて」
と、シンディが言った。
「よし。よろしく頼む」
「じゃあ、これ持ってて」
と、あたかも当然のようにグレネードランチャーを渡してくる。
「さすがに、これをいきなり使えったってムリだぞー?」
「大丈夫よ。稲生ユウタはマネキン軍団に対してブッ放したから」
「それ、映画の話だろ!?」
シンディとエミリーはコンテナの観音扉に手を掛けた。
「じゃ、いい?1、2、3で開けるよ?」
「OK」
「1、2、3……」
2人のマルチタイプはコンテナの観音扉を開けた。
敷島はグレネードランチャーはさすがに置いて、AK-47を構えている。
いきなり何かが飛び出してくるということは無かった。
「何も無いのか!?」
「いや、あるね」
「木箱が・1つです」
コンテナの中を見ると、まるで棺みたいなサイズの木箱があった。
棺ならもっと装飾や木材には拘るだろうが、こちらは本当に簡素な作りだ。
「どうする?」
「スキャンできるか?」
「やってみるわ」
シンディの左目から緑色の光線が出てきて、木箱を照らす。
それは船外の漁船、平賀の待機している所にも送信されている。
{「やりました!マルチタイプの反応ですよ、敷島さん!」}
「そうですか。取りあえず、中身確認しちゃっていいですか?」
{「お願いします」}
「エミリー、蓋を開けてくれ」
「イエス。敷島・社長」
エミリーは木箱の蓋をこじ開けた。
蓋は釘で打ち付けられており、本来ならバールか何かで開けるものだろう。
だが、強い馬力や腕力を持つマルチタイプにそれは不要だ。
「キールがいたりしてな?」
「それは無い無い」
敷島の冗談に、シンディが右手を振った。
「……女の子・です」
緩衝材が詰め込まれた箱の中に、仰向けになっていたのは15歳前後くらいの少女。
赤毛の髪がよく目立ち、それが腰までストレートに伸びている。
エミリーが抱え起こすと、ノースリーブのピンク色のレオタード姿の少女の右側の二の腕には、ローマ数字で『8』というペイントが施されていた。
「8号機!?完全に真新しいタイプなのか。てっきり、7号機以前の誰かがいたのかと思ったよ」
{「あー、こちら、村中です」}
「村中課長」
{「すぐにそのマルチタイプを回収して、船首甲板へ向かってください」}
「一体何が?」
{「迎えのヘリがまもなく到着します。その船の船首甲板に、ヘリポートがあったでしょう?そこに着陸するから、それにそのマルチタイプを乗せ、ついでにあなた達も乗ってください。銚子警察署まで行きますから」}
「平賀先生は?」
{「自分も一旦、そちらの船に移動します。船底区画からは、エレベーターで上に上がれるはずです。サイドデッキまで上がれるはずなので、それで上がって、サイドデッキから船首甲板に向かってください」}
「了解。でも、まだバージョン4.0が残ってるかもしれませんよ?」
「ああ、それなら大丈夫。さっきアタシが制御室で、奴らの電源を遠隔で切ったから。あのデカ物だけは別系統だったみたいで、電源落ちなかったけどね」
「そうか。まあ、400についてはさっきグレネードでブッ飛ばしたから大丈夫だろ。箱ごと持って行こう。2人で運べるな?」
「イエス」
「あいよ」
2人のマルチタイプは軽々と、8号機の少女が入った箱を持ち上げた。
エレベーターの中には潜んでいたバージョン4.0が1機いたが、シンディが電源を切っていたので、ただの機械人形(でくのぼう)だ。
箱を抱えつつ、シンディがその4.0を外に蹴り出した。
今では人間に対しては丁寧な態度(敷島や井辺にはフレンドリーだが)を取るシンディも、下位種であるバージョン・シリーズには容赦が無い。
[同日03:30.天候:曇 同船・船首甲板ヘリポート 敷島、エミリー、シンディ、平賀、村中課長]
外に出ると、既に雨風共に止んでいた。
まだ空は曇っていて空気も湿っているが、これから天候は回復していくのだろう。
「敷島さん、こっちです!」
サイドデッキを通って船首に出ると、甲板の所で平賀が大きく手を振っていた。
「平賀先生!」
「どうやら、無事ですな。さすが、東京決戦の英雄さん達だ。……っと、中にはそうでない方もおられるが」
村中はシンディを見て、コホンと咳払い。
当時のシンディは東京決戦では敵側だった。
「そんなことより、このコはどうするの?」
「まずは警察が押収して色々と解析を進める。まあ、技術が最先端過ぎて、手に負えないのがオチだがな」
「だったら、最初からこっちに下さいよ。どうせ、そうなるのが目に見えてるんですから」
「警察にも立場ってもんがあるの」
敷島の文句に眉を潜めて言い返す村中。
「村中・課長、バージョン4.0どもの・メモリーチップ・です」
エミリーが数個体から回収したメモリーチップを村中に渡した。
「おっ、こりゃすまんな。あと、キミ達の捜索状況のメモリーも頼む」
「はい、どうぞ」
それは平賀のパソコンから作られた。
即ち、エミリーとシンディの目から撮影記録された動画は平賀のパソコンにリアルタイムで送信され、それを手持ちのUSBに保存したものだ。
それを渡した。
「これで警察としては満足ですか?」
「まあ、今の所はな」
「鷲田警視のことだから、まだ何かgdgd言って来そうだ」
敷島が肩を竦めると、村中は苦笑いした。
「まあ、そんなこと言わずに。お陰様で、KR団の全容が解明できそうだよ」
(そう、上手く行くとは思えませんがね)
敷島と平賀はそう思った。
「私はあっちの船で戻るから、キミ達は先に銚子警察まで行ってくれ。あとの指示は、向こうの担当刑事が出すから」
「はーい」
「捜査協力、真にありがとう」
ヘリのドアを閉める時、村中は敬礼した。
そして、ヘリが離陸した。
貨物船については、ヘリに乗って来た警察関係者が操船して銚子漁港まで運ぶらしい。
「始発電車で帰れるかな?」
敷島はヘリの壁を背にして座り込み、ダイバーズウォッチを見ながら呟いた。
平賀は飛行するヘリの中で、新しいマルチタイプ8号機の様子を見ていた。
「……多分、十条博士が新たに造ったオリジナルタイプかもしれない」
「そうですか」
「ナンバーを連番にしようとしていたことから見ても、性能はエミリー達と同じか、新造なだけにもっと上かもしれません」
「暴れ出さないよう、エミリー達で護衛しておく必要がありそうな感じがするんですがね」
しかし今のところ、村中を始め、警察からはそのような要請は無い。
{「第3貨物室の奥の方です。気をつけて」}
「……了解」
平賀の無線が飛んで来る。
敷島達は第3貨物室に潜入した。
そこにはバージョン4.0などの気配は無かった。
「……どうやら、あのコンテナのようだな」
「今度はアタシと姉さんと開けるよ。社長はここで待ってて」
と、シンディが言った。
「よし。よろしく頼む」
「じゃあ、これ持ってて」
と、あたかも当然のようにグレネードランチャーを渡してくる。
「さすがに、これをいきなり使えったってムリだぞー?」
「大丈夫よ。稲生ユウタはマネキン軍団に対してブッ放したから」
「それ、映画の話だろ!?」
シンディとエミリーはコンテナの観音扉に手を掛けた。
「じゃ、いい?1、2、3で開けるよ?」
「OK」
「1、2、3……」
2人のマルチタイプはコンテナの観音扉を開けた。
敷島はグレネードランチャーはさすがに置いて、AK-47を構えている。
いきなり何かが飛び出してくるということは無かった。
「何も無いのか!?」
「いや、あるね」
「木箱が・1つです」
コンテナの中を見ると、まるで棺みたいなサイズの木箱があった。
棺ならもっと装飾や木材には拘るだろうが、こちらは本当に簡素な作りだ。
「どうする?」
「スキャンできるか?」
「やってみるわ」
シンディの左目から緑色の光線が出てきて、木箱を照らす。
それは船外の漁船、平賀の待機している所にも送信されている。
{「やりました!マルチタイプの反応ですよ、敷島さん!」}
「そうですか。取りあえず、中身確認しちゃっていいですか?」
{「お願いします」}
「エミリー、蓋を開けてくれ」
「イエス。敷島・社長」
エミリーは木箱の蓋をこじ開けた。
蓋は釘で打ち付けられており、本来ならバールか何かで開けるものだろう。
だが、強い馬力や腕力を持つマルチタイプにそれは不要だ。
「キールがいたりしてな?」
「それは無い無い」
敷島の冗談に、シンディが右手を振った。
「……女の子・です」
緩衝材が詰め込まれた箱の中に、仰向けになっていたのは15歳前後くらいの少女。
赤毛の髪がよく目立ち、それが腰までストレートに伸びている。
エミリーが抱え起こすと、ノースリーブのピンク色のレオタード姿の少女の右側の二の腕には、ローマ数字で『8』というペイントが施されていた。
「8号機!?完全に真新しいタイプなのか。てっきり、7号機以前の誰かがいたのかと思ったよ」
{「あー、こちら、村中です」}
「村中課長」
{「すぐにそのマルチタイプを回収して、船首甲板へ向かってください」}
「一体何が?」
{「迎えのヘリがまもなく到着します。その船の船首甲板に、ヘリポートがあったでしょう?そこに着陸するから、それにそのマルチタイプを乗せ、ついでにあなた達も乗ってください。銚子警察署まで行きますから」}
「平賀先生は?」
{「自分も一旦、そちらの船に移動します。船底区画からは、エレベーターで上に上がれるはずです。サイドデッキまで上がれるはずなので、それで上がって、サイドデッキから船首甲板に向かってください」}
「了解。でも、まだバージョン4.0が残ってるかもしれませんよ?」
「ああ、それなら大丈夫。さっきアタシが制御室で、奴らの電源を遠隔で切ったから。あのデカ物だけは別系統だったみたいで、電源落ちなかったけどね」
「そうか。まあ、400についてはさっきグレネードでブッ飛ばしたから大丈夫だろ。箱ごと持って行こう。2人で運べるな?」
「イエス」
「あいよ」
2人のマルチタイプは軽々と、8号機の少女が入った箱を持ち上げた。
エレベーターの中には潜んでいたバージョン4.0が1機いたが、シンディが電源を切っていたので、ただの機械人形(でくのぼう)だ。
箱を抱えつつ、シンディがその4.0を外に蹴り出した。
今では人間に対しては丁寧な態度(敷島や井辺にはフレンドリーだが)を取るシンディも、下位種であるバージョン・シリーズには容赦が無い。
[同日03:30.天候:曇 同船・船首甲板ヘリポート 敷島、エミリー、シンディ、平賀、村中課長]
外に出ると、既に雨風共に止んでいた。
まだ空は曇っていて空気も湿っているが、これから天候は回復していくのだろう。
「敷島さん、こっちです!」
サイドデッキを通って船首に出ると、甲板の所で平賀が大きく手を振っていた。
「平賀先生!」
「どうやら、無事ですな。さすが、東京決戦の英雄さん達だ。……っと、中にはそうでない方もおられるが」
村中はシンディを見て、コホンと咳払い。
当時のシンディは東京決戦では敵側だった。
「そんなことより、このコはどうするの?」
「まずは警察が押収して色々と解析を進める。まあ、技術が最先端過ぎて、手に負えないのがオチだがな」
「だったら、最初からこっちに下さいよ。どうせ、そうなるのが目に見えてるんですから」
「警察にも立場ってもんがあるの」
敷島の文句に眉を潜めて言い返す村中。
「村中・課長、バージョン4.0どもの・メモリーチップ・です」
エミリーが数個体から回収したメモリーチップを村中に渡した。
「おっ、こりゃすまんな。あと、キミ達の捜索状況のメモリーも頼む」
「はい、どうぞ」
それは平賀のパソコンから作られた。
即ち、エミリーとシンディの目から撮影記録された動画は平賀のパソコンにリアルタイムで送信され、それを手持ちのUSBに保存したものだ。
それを渡した。
「これで警察としては満足ですか?」
「まあ、今の所はな」
「鷲田警視のことだから、まだ何かgdgd言って来そうだ」
敷島が肩を竦めると、村中は苦笑いした。
「まあ、そんなこと言わずに。お陰様で、KR団の全容が解明できそうだよ」
(そう、上手く行くとは思えませんがね)
敷島と平賀はそう思った。
「私はあっちの船で戻るから、キミ達は先に銚子警察まで行ってくれ。あとの指示は、向こうの担当刑事が出すから」
「はーい」
「捜査協力、真にありがとう」
ヘリのドアを閉める時、村中は敬礼した。
そして、ヘリが離陸した。
貨物船については、ヘリに乗って来た警察関係者が操船して銚子漁港まで運ぶらしい。
「始発電車で帰れるかな?」
敷島はヘリの壁を背にして座り込み、ダイバーズウォッチを見ながら呟いた。
平賀は飛行するヘリの中で、新しいマルチタイプ8号機の様子を見ていた。
「……多分、十条博士が新たに造ったオリジナルタイプかもしれない」
「そうですか」
「ナンバーを連番にしようとしていたことから見ても、性能はエミリー達と同じか、新造なだけにもっと上かもしれません」
「暴れ出さないよう、エミリー達で護衛しておく必要がありそうな感じがするんですがね」
しかし今のところ、村中を始め、警察からはそのような要請は無い。
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