[期日不明 時刻不明 天候:晴 洋館(新館)1F 井辺翔太&シー]
何とかダニエラの追跡をかわした井辺とシー。
その後、落ち着いて、改めて図面を見た。
「幸い、小型の通信機を持ち出すことはできました。しかし、電源は入るのに、全く送受信しませんね。周波数は合ってるはずなんですが……」
「確か、新館の屋上に、無線のアンテナがあるって聞いたことがある」
シーは井辺の右肩に乗っかった。
「アンテナがあるのに、何故?」
「それは分からないよ。壊れてるのかもね」
「もしかしたら直せるかもしれません。見に行ってみましょう。屋上へ上がるには……」
井辺は図面を上階のページに変える。
「3階の上に展望台があるんですか。そこが4階……?で、そこから屋上へ出れるのですね」
「うん、行ってみよう。取りあえず、3階までは階段で行けるはずだ」
深夜の新館エントランスホール前を通る。
外はまだ暗いので、真夜中であるのは確かであった。
そこにある階段を上ろうとすると、
「うっ!」
そこにダニエラがいた。
しかし彼女は階段を一段ずつモップ掛けしている。
井辺達の姿に気づくと、スッとこちらを見た。
「お客様、真に・申し訳・ありませんが、只今、清掃中ですので、エレベーターを・ご利用ください」
「えっ?ええっ!?」
襲ってくるかと思いきや、至って普通のメイドだ。
「で、でも、エレベーターは電源が落ちていて……」
井辺が言い終わらないうちに、ダニエラは白いエプロンのポケットから鍵を取り出す。
「この鍵で、エレベーターを・動かせます」
「い、いいんですか?」
井辺は恐る恐る受け取った。
受け取った瞬間!
「!!!」
……ということは無かった。
ただ、ニィッと歯を見せるぎこちないスマイルをダニエラがしただけだった。
「ど、どうも」
エレベーター起動キーを手に入れた井辺。
ダニエラの気が変わらないうちに、急いでエレベーターへ向かった。
途中で何度も振り返った井辺だったが、ダニエラは変わらず、階段のモップ掛けをしているだけだった。
インジゲータの下にある鍵穴に起動キーを差し込み、エレベーターを起動させる。
木製のドアの上には古めかしい針式のインジゲーター(明治生命館のエレベーターを参照。但し、稼動中のものは針式ではない)があったが、そちらは動いていなかった。
後付けのランプ点灯式インジゲーターの方が稼動している。
ガチャ、ガラガラガラ………。
「…………」
「どうしたの、翔太さん?」
エレベーターのドアが開いて、井辺が中を覗き込む。
殺風景なカゴだが、特段何も無かった。
「いえ、何でも……」
「早いとこ、これで3階まで行こうよ」
「そうですね」
乗り込んで、3階のボタンを押す。
ガラガラとローラーの転がる音を立てて、木製のドアが閉まった。
ゆっくりと上昇するエレベーター。
しかしその直前、階段の方から、若い女性の狂った笑い声が聞こえたような気がしたのは……気のせいだろうか。
3階に到着する。
意外なことに、3階の階段と踊り場の間には、防火シャッターが下ろされていた。
階段で行っていたら、思わぬ“詰み”が発生していたかもしれない。
「あのー、シー君」
「なぁに?」
「ふと疑問に思ったのですが……。旧館にいた46号機……」
「ヨンロックがどうしたの?」
「46号機ということは、その前に1号機から45号機まで存在しているということではありませんか?」
「中には処分されちゃったのもあるけど、そうだね」
「もちろんこれで良いのですが、全く他の個体が見当たらないのですが……」
「あー、そういえばそうだねぇ……。でも、夜は本来、充電とか整備とかしているわけだからね」
「その場所に近づかなければ良いというわけですか……」
展望台に上がる階段へ向かうには、ある部屋を通らなければならない。
その部屋というのが、図書室。
「ふーむ……学校の図書室よりも、およそ立派な所ですね」
入って正面には、大きな柱時計が大きな振り子を動かしている。
但し、その時計は、いわゆる“天文時計”というもので、井辺には文字盤のある場所を見ても、今何時なのかは分からなかった。
「まあ、研究所だからね」
「で、展望台に上がる階段はどこですか?」
「えーっと……。あれみたい」
シーが指差した所には、確かに更に上に上がる階段があった。
この図書室、吹き抜けの2層構造になっており、上層部分に上がらなくてはならないようだ。
しかし、パッと見、そこに上がる階段は見当たらない。
図面を見ると、ちゃんとそれがあるような書き方をしているのだが……。
「あのドア、ですか……」
階段室があると思われるドア。
しかし、そのドアは宙に浮いていた。
具体的に言うと、地上から2メートルぐらいの高さの場所にドアある。
何でこんな造りなのだろうか?
梯子でもないと、そのドアに上がれそうもない。
本棚の高さもまた同じ高さであった。
ということは、1番上の棚に上がる為の梯子だか脚立だかがあるかもしれない。
探して見ると、本棚の横に立て掛けるようにして、梯子があった。
しかし、それを外そうとするが外れない。
「!?」
どうやら、本棚に固定されているらしい。
本棚の上に何かあるのだろうか?
上ってみたが、A3サイズの本が一冊置いてあるだけで、あとは特段何も無かった。
しかしその赤い本が気になったので、本棚の上に上がってみると……。
「あれ?」
本棚の天板の高さが、ちょうど件のドアの高さと同じであることに気づいた。
その本棚は途中で切れていたりするが、これってもしかして……。
「本棚を上手くくっつけて、あの階段室への通路にせよ。ということでしょうか?」
「そうみたいだね、翔太さん」
凄い苦労をさせられる所だと思った井辺だった。
しかも、何やら本棚自体に仕掛けがあるようで、赤い本には、『展望台への扉』というタイトルが書かれていたが、正しくガチなのではなかろうかと。
(本当に、無事にこの屋敷から出られるのでしょうか……)
不安に駆られる井辺だった。
何とかダニエラの追跡をかわした井辺とシー。
その後、落ち着いて、改めて図面を見た。
「幸い、小型の通信機を持ち出すことはできました。しかし、電源は入るのに、全く送受信しませんね。周波数は合ってるはずなんですが……」
「確か、新館の屋上に、無線のアンテナがあるって聞いたことがある」
シーは井辺の右肩に乗っかった。
「アンテナがあるのに、何故?」
「それは分からないよ。壊れてるのかもね」
「もしかしたら直せるかもしれません。見に行ってみましょう。屋上へ上がるには……」
井辺は図面を上階のページに変える。
「3階の上に展望台があるんですか。そこが4階……?で、そこから屋上へ出れるのですね」
「うん、行ってみよう。取りあえず、3階までは階段で行けるはずだ」
深夜の新館エントランスホール前を通る。
外はまだ暗いので、真夜中であるのは確かであった。
そこにある階段を上ろうとすると、
「うっ!」
そこにダニエラがいた。
しかし彼女は階段を一段ずつモップ掛けしている。
井辺達の姿に気づくと、スッとこちらを見た。
「お客様、真に・申し訳・ありませんが、只今、清掃中ですので、エレベーターを・ご利用ください」
「えっ?ええっ!?」
襲ってくるかと思いきや、至って普通のメイドだ。
「で、でも、エレベーターは電源が落ちていて……」
井辺が言い終わらないうちに、ダニエラは白いエプロンのポケットから鍵を取り出す。
「この鍵で、エレベーターを・動かせます」
「い、いいんですか?」
井辺は恐る恐る受け取った。
受け取った瞬間!
「!!!」
……ということは無かった。
ただ、ニィッと歯を見せるぎこちないスマイルをダニエラがしただけだった。
「ど、どうも」
エレベーター起動キーを手に入れた井辺。
ダニエラの気が変わらないうちに、急いでエレベーターへ向かった。
途中で何度も振り返った井辺だったが、ダニエラは変わらず、階段のモップ掛けをしているだけだった。
インジゲータの下にある鍵穴に起動キーを差し込み、エレベーターを起動させる。
木製のドアの上には古めかしい針式のインジゲーター(明治生命館のエレベーターを参照。但し、稼動中のものは針式ではない)があったが、そちらは動いていなかった。
後付けのランプ点灯式インジゲーターの方が稼動している。
ガチャ、ガラガラガラ………。
「…………」
「どうしたの、翔太さん?」
エレベーターのドアが開いて、井辺が中を覗き込む。
殺風景なカゴだが、特段何も無かった。
「いえ、何でも……」
「早いとこ、これで3階まで行こうよ」
「そうですね」
乗り込んで、3階のボタンを押す。
ガラガラとローラーの転がる音を立てて、木製のドアが閉まった。
ゆっくりと上昇するエレベーター。
しかしその直前、階段の方から、若い女性の狂った笑い声が聞こえたような気がしたのは……気のせいだろうか。
3階に到着する。
意外なことに、3階の階段と踊り場の間には、防火シャッターが下ろされていた。
階段で行っていたら、思わぬ“詰み”が発生していたかもしれない。
「あのー、シー君」
「なぁに?」
「ふと疑問に思ったのですが……。旧館にいた46号機……」
「ヨンロックがどうしたの?」
「46号機ということは、その前に1号機から45号機まで存在しているということではありませんか?」
「中には処分されちゃったのもあるけど、そうだね」
「もちろんこれで良いのですが、全く他の個体が見当たらないのですが……」
「あー、そういえばそうだねぇ……。でも、夜は本来、充電とか整備とかしているわけだからね」
「その場所に近づかなければ良いというわけですか……」
展望台に上がる階段へ向かうには、ある部屋を通らなければならない。
その部屋というのが、図書室。
「ふーむ……学校の図書室よりも、およそ立派な所ですね」
入って正面には、大きな柱時計が大きな振り子を動かしている。
但し、その時計は、いわゆる“天文時計”というもので、井辺には文字盤のある場所を見ても、今何時なのかは分からなかった。
「まあ、研究所だからね」
「で、展望台に上がる階段はどこですか?」
「えーっと……。あれみたい」
シーが指差した所には、確かに更に上に上がる階段があった。
この図書室、吹き抜けの2層構造になっており、上層部分に上がらなくてはならないようだ。
しかし、パッと見、そこに上がる階段は見当たらない。
図面を見ると、ちゃんとそれがあるような書き方をしているのだが……。
「あのドア、ですか……」
階段室があると思われるドア。
しかし、そのドアは宙に浮いていた。
具体的に言うと、地上から2メートルぐらいの高さの場所にドアある。
何でこんな造りなのだろうか?
梯子でもないと、そのドアに上がれそうもない。
本棚の高さもまた同じ高さであった。
ということは、1番上の棚に上がる為の梯子だか脚立だかがあるかもしれない。
探して見ると、本棚の横に立て掛けるようにして、梯子があった。
しかし、それを外そうとするが外れない。
「!?」
どうやら、本棚に固定されているらしい。
本棚の上に何かあるのだろうか?
上ってみたが、A3サイズの本が一冊置いてあるだけで、あとは特段何も無かった。
しかしその赤い本が気になったので、本棚の上に上がってみると……。
「あれ?」
本棚の天板の高さが、ちょうど件のドアの高さと同じであることに気づいた。
その本棚は途中で切れていたりするが、これってもしかして……。
「本棚を上手くくっつけて、あの階段室への通路にせよ。ということでしょうか?」
「そうみたいだね、翔太さん」
凄い苦労をさせられる所だと思った井辺だった。
しかも、何やら本棚自体に仕掛けがあるようで、赤い本には、『展望台への扉』というタイトルが書かれていたが、正しくガチなのではなかろうかと。
(本当に、無事にこの屋敷から出られるのでしょうか……)
不安に駆られる井辺だった。
マニアックにならない程度の話題振りでお願いします(^_^;)
遠山枝里子=今井ミンゴス
です(^o^)