報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「ワンスターホテルにて」

2018-12-17 19:08:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月17日16:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fフロント]

 オーナー:「いらっしゃいませ」

 エントランスの自動ドアが開き、入ってきたのは鈴木。

 鈴木:「やあ、どうも。今日もお世話になります」
 オーナー:「いつもありがとうございます」

 鈴木は近所のマンションに1人で住んでいるのだが、エレーナ会いたさにちょくちょくこのホテルに宿泊していた。
 それも料金の安いド平日とか、もっと安い日曜日とかである。

 鈴木:「あの、今日はエレーナはいないんですか?」
 オーナー:「すいませんねぇ。体調が悪くて、今日は休んでるんですよー」
 鈴木:「生理ですか!?」
 オーナー:「……そうストレートに聞かれると、誤魔化せませんね。まあ、そうですよ」
 鈴木:「そうですか……」

 鈴木は宿泊者カードにボールペンを走らせつつ、がっかりした様子だった。
 が、それも束の間。
 パッと顔を上げると……。

 鈴木:「つまり今は妊娠していない上、俺の子供を産むことが可能ってことですね!?」(*´Д`)
 オーナー:「ま、まあ、そういうことになるかと……。あの、デラックスシングル一泊のご利用で7200円になります」(-_-;)
 鈴木:「はいはい!」ヽ(^o^)丿

 鈴木の財布の中には諭吉先生が何枚も。
 実家は資産家で、鈴木はニートだった。
 顕正会時代は害毒で家中を暴れまわったり、何度も自殺未遂をしたりもしている。
 今は法華講員となってそういう事も無くなり、エレーナという恋の相手もいる為、見違えるほど明るくなったと言われている。
 但し、相変わらず無職のままだ。
 鈴木の親も、息子が進んで家から出るようになり、また、エレーナに対する金の使い方も、ギャンブルやキャバクラに消費する金よりは断然安いと喜んでいるという。
 この息子にして、この親ありと言えよう。
 確かに、キャバクラで調子に乗って一晩使う金が7200円で済むはずがない。
 このホテルには6000円台で済むシングルもあるのだが、鈴木の見栄か。
 通常のシングルは本当にベッドはシングルサイズである。
 対して鈴木が泊まるデラックスシングルは、通常のシングルより若干部屋が広く、ベッドのサイズもセミダブルになっている。
 なのでこのホテルでは、デラックスシングルに2人で宿泊しても良いことになっているが……。

 オーナー:「それでは領収証を発行しますので、少々お待ちください」
 鈴木:「はい。あの、エレーナのお見舞いには行けませんか?」
 オーナー:「やめた方がいいですよ。女性がそういう状態に陥った場合、大抵の女性は落ち着くまで1人にして欲しい傾向があります。余計なことはしない方が良いかと」
 鈴木:「見舞金を渡しに行く、という名目ならどうですかね?」
 オーナー:「……一応、エレーナに確認してみますが。先にお部屋にお荷物を置かれてからにしては如何ですか?本日は310号室になります」
 鈴木:「おっ、作者がこの前泊まった部屋と同じだ」
 オーナー:「このホテルにもモデルがあるようですからねぇ……。それでは確認しておきますので、まずはごゆっくり……」
 鈴木:「よろしくです」

 鈴木が鍵を受け取り、エレベーターに乗ろうとした時だった。
 ちょうど1階に到着したらしく、サイドオープン式(片側に開くタイプ)のドアが開いた。

 リリアンヌ:「ただいま帰り……フヒッ!?」
 鈴木:「あれ?キミはエレーナの後輩の……」

 突然現れた男に、リリアンヌはパニック状態。
 再びエレベーターの中に逃げ込もうとしたが、閉まりかけたドアに顔をぶつけた。

 オーナー:「だ、大丈夫かい!?」
 鈴木:「一体、どうしたんだ???」
 オーナー:「リリアンヌは男性恐怖症なんです。魔道師になる前、親からヒドい性的虐待を受けていたそうで……」
 鈴木:(つまりは処女ではないということか……。まだこの歳で……)

 さすがに不謹慎だと思ったのか、口には出さなかったが。

 鈴木:「あれ?でも今、地下から上がって来ましたよね?」
 オーナー:「まあ、色々と魔道師ならではの秘密があるんですよ」
 リリアンヌ:(@_@;)☆彡

 しばらく目を回していたリリアンヌだったが、ようやく目を覚ました。

 リリアンヌ:「フヒッ!?オーナー!?」
 オーナー:「大丈夫かい?慌てちゃダメだよ」
 リリアンヌ:「ごご、ごめんなさい……」
 鈴木:「その制服よく似合ってるね?どこの学校?」
 リリアンヌ:「フヒーッ!」

 鈴木からはまるでクリーチャーから逃げるかのような態度を取る。

 オーナー:「あ、あの鈴木様、リリアンヌの精神衛生にも関わりますので、先にお部屋へどうぞ」
 鈴木:「あ、はい」

 鈴木は上のボタンを押した。

 オーナー:「魔界にも学校があって、リリィのように人間時代、学校に行けなかった者はそこに通ってるんですよ」
 鈴木:「ホグワーツ魔法学校みたいな所ですか!?」
 オーナー:「いや、そこほど本格的な所ではないようですがね。私もこっち側の人間なので、詳しくは知りません。もしどうしても知りたければ、エレーナから聞いてください」
 鈴木:「分かりました!」

 鈴木はエレベーターに乗って、客室上階に向かった。
 尚、マリアはギリギリでイギリスのハイスクールを卒業している為、改めて学校に通う必要は無い。
 エレーナは既に教育を終えている。

 鈴木:「あれ?これってもしかして、このまま地下1階にも行けるんじゃね?」

 鈴木はそう思ったが、地下1階のボタンを押してもボタンが点灯することは無かった。

 鈴木:「うぬ、なかなかそうは簡単に行かないか。しからば、エレーナに会えるよう、唱題を続けるのみ!」

 唱題の異義の捉え方が、またまだ顕正会員的な鈴木であった。
 3階に到着し、少し奥まった所にある客室。
 そこが鈴木に割り当てられた部屋。
 鈴木が持って来た荷物と言えば、替えの下着とノートPCくらい。
 もちろん、数珠と御経本もある。

 鈴木:「せっかく日蓮正宗に入って、顕正会には無かった功徳が実感できたんだ。このままこの勢いで行くぞ!そしてエレーナと法統相続するんだ!」

 やっぱり意味が分かっていない。
 魔女はそもそも日蓮正宗に入れないのだが……(悪魔と契約している時点でNGだってこと)。
 あまり調子に乗ると、また藤谷から鉄拳制裁が来るぞ、鈴木。
コメント (2)
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