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日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

筑波大プラズマ研 不適切なデータ解析について

2008-03-13 16:44:13 | 学問・教育・研究
東京新聞の報道である。《筑波大(つくば市)は六日、数理物質科学研究科の長照二教授らが二〇〇六年八月発行の米国物理学会レター誌に発表したプラズマ研究に関する論文で、都合の良いデータを使い作図する改ざんがあったと発表した。外部の専門家を含む調査委員会が「不適切なデータ解析の程度が著しい」との調査結果をまとめた。》(2008年3月7日)

この問題に関して筑波大学は「本学教員が発表した論文における不適切なデータ解析について」で、資料1 本事案の詳細について、資料2 説明資料、資料3 本事案発覚後の経過、資料4 研究公正委員会調査委員会調査結果を公表している。この資料4は45ページものPDFファイルで、「データ改ざん」の内容を詳しく伝えている。この分野の専門家には十分理解できる内容なのだろうが、分野外の、しかしデータ解析を仕事の一部としてきた私には少々違和感の残る内容であった。どこに違和感があるのか、二点ほど述べることにする。

まずは事の発端である。資料1の調査経緯はこのように伝えている。《平成18年11月から12月にかけて、本学プラズマ研究センターで研究を行っていた複数の大学院生から、数理物質科学研究科長および物理学専攻の教員に対し、同センターの一部の教員が行ったデータ解析に不適切な点があるとの訴えがありました。同研究科長は、研究科内で調査を行い、その結果を平成19年4月に研究公正管理者(研究担当副学長)に報告しました。》

これ以上の詳細は分からないが、既に論文に発表したデータを使ってその解析方法を教員が大学院生に指導したところ、そのやり方がおかしいと大学院生からクレームが出たというように私は受け取った。

件の論文には筆頭著者の教授以下全員27名の著者が名前を連ねているが、データ改ざんに関与しているとされたのは筆頭著者の教授と共同研究者のうちの大学講師3人の計4人である。一応専門家集団と呼ぶことにするが、この4人の間ではルーチン化していたデータ解析の手法が大学院生にはどうも異様に映ったようである。すなわち専門家集団では日常化していて当たり前のやり方が大学院生に「ノー」と言われたのである。ここで注目すべきなのは、もしこの専門家集団に不正を働いているとの意識があれば、その手口をわざわざ大学院生に指導と称して教え込むだろうか、ということである。その後の研究公正委員会調査委員会の調査で「改ざん」と断定されたデータ解析手法が、専門家集団の常識であったのだとすると、同じく東京新聞の記事《一方、教授らは改ざんの事実を認めていないという。》こととは矛盾しない。これがまず気になったことである。

プラズマ研究の世界ではこのような「データ改ざん」が日常のことなんだろうか。とするとこれは大事である、とばかりに、いったいどのようなデータ解析をやっているのかちょっと覗いてみることにした。実験の中身は分からないが、どのようなデータなら解析に値するかぐらいかの判断なら私にも出来そうだ、と示された生データを見て、「これ、何?」と言うのが私の反応であった。

下は資料2のディスプレイ画面を写真に撮り再生した生データ(資料2、図4)である。点の広がりは私の目には節分の豆まきのように見えるが、資料2では《信号には意味のない乱雑な成分(ノイズ)が大きく含まれていることがわかる》と評されているのである。



それが専門家集団の手にかかると下の図のように整理されてバラバラの点が緑四角の様になり、空色の線のような解析曲線を与えるのである(資料2、図5)。



なぜバラバラの点が緑四角のようにまとめられるのかと言うと、そのヒントが資料4の資料3(下の図)にある。



最初の実験と同じような測定であるが、何故か測定電流値がきわめて小さい(1/100)。それにもかかわらず数少ない点ではあるがなにかある傾向を示唆しているように見える。そして「11点平均」という手法で水色点の得られたことがわかる。したがって上の(資料2、図5)の緑四角も何点平均かは明示されていないが、似たような手法で導かれたものなのだろう。

しかし、である。

いくらデータ整理にそれなりの手法があるにせよ、上の「豆まき」データを下の「曲線」に仕上げるとはこの専門家集団はよほど楽天的なんであろう。「豆まき」データを前にして私ならどうするか。もしこれが意味のある実験結果であるとそれなりの確信と期待があれば、さらに解析に値するデータの収集に取り組むであろう。同じ測定を繰り返してデータを積算するのである。たとえば酸素化ミオグロビンの光解離と再結合の時間経過を観測するには、レーザーパルス照射で酸素分子とミオグロビンの結合を切断することで反応を開始するが、光解離の量子収率が低いのでシグナルの変化量がきわめて小さく、デジタルオッシロで記録したデータはまさに「豆まき」状態である。しかしレーザーパルス照射を繰り返して反応を反復開始させて、その度ごとにシグナルの時間変化を記録、積算していくと次第にどのような変化が起こっているのかが判断できるトレースが出来上がってくる。生体試料であるが100回ぐらいの積算ではびくともしない。そこで初めて統計的手法を取り入れてデーター解析を進めることになる。

一番上の図を見ると時刻:85.0-98.48msと記されている。想像するにプラズマが発生している間に横軸となっている電圧を掃引して縦軸の電流値を測定していくのだろうか、それが20msもかかっていないとすると、測定回数を増やしても苦にはならないのではないか。その昔、タンパク分子のNMRデータ一を得るのに徹夜が当たり前だったことがあるが、それもデータ積算のためだったのである。測定を繰り返してデータの質を高めると言う発想がプラズマ研究の世界にはないのだろうか。それとも同じ条件で測定を繰り返すことが不可能な、何か原理的な制約があるのだろうか。

総勢27名の研究者もいるのに測定を繰り返してデータ精度を上げる手間を惜しみ、一発データを「カレイダ」なる市販のソフトに丸投げして処理をさせる。プラズマ研究の世界がそれほど安直なものだとは思えないだけに、この調査報告書では不適切なデータ解析は指摘されているが、そもそもデータ収集の妥当性について何一つ触れられていないのが不可解である。そのあたりの事情の説明があった上でデータ解析手法の是非が論じられていると、このよくまとめられた調査報告の客観的具体性がより高まったのではなかろうかと思った。

それにしても「不適切な解析をするよう指導された」と訴えた大学院生が複数存在したというのが嬉しい。科学者の根底にあるべきなのはなにごとであれ素朴な疑問であることに尽きるからだ。それを失った4人の専門家集団が科学の世界に居残る理由はないと思う。

追記(2008年12月17日) 二カ所を強調表記にした。

追記2(2010年7月5日) この件に関して書き加えていった記事は以下の通りである。

これでは核融合研究より農業再生を
「豆まきデータ」と揶揄した債務者とは私のこと?
秋の珍事? 報道特集NEXT「大学教授はなぜ解雇された」の波紋
「論文不正あった」解雇認める=筑波大元教授敗訴で思うこと
筑波大学「豆まきデータ」騒ぎ 問われるのは科学者としての姿勢



インターネットの回線速度を測ってからの顛末 J:COM NETウルトラ160Mコース

2008-03-12 10:58:14 | Weblog
2月の終わりにJ:COMとの契約を一新した。J:COM TV + J:COM NETウルトラ160Mコース + J:COM PHONEのパックに切り替え、さらに従来から使用していたIP PHONEを継続したのである。パック料金なので少々安くなり、支払い窓口を一つにした分の利点があった。これでNHKのハイビジョンも観ることが出来るようになり、また無線LANブロードバンドルーターの性能をアップ(無線スループットが300Mbps)することでインターネットの使用環境をより快適にした(と思っていた)。

新しい環境になって10日ほど経ったが、メールの送受信が確かに円滑になったがインターネットの使用感に目立った違いを感じないので、一昨日(3月10日)インターネット上で回線速度を測定してみたところ、その結果に愕然とした。下りが4Mbps前後で上りが8Mbpsなのである。測定を繰り返してもだいたいこの程度の値である。下りに100Mbps程度を期待していたのに、その二十分の一以下の速度ではJ:COM NETウルトラ160Mコースに切り替えた意味は全くない。そこでJ:COMのサービスセンターに電話をした。

まず回線速度の測定方法を尋ねて女性スタッフに教えられたのがRadish Network Speed Testingという通信速度測定システムである。しかしシステムで測定してもすでに私が得た値とほぼ同じである。やはり私の回線速度が異常に遅いのである。ここから原因追及が始まった。

まずデスクトップに「BBTuner」というアイコンがあるかと尋ねられたが、そのようなものはない。しかし「J:COM NET ウルトラ160Mコースをご利用のお客様へ」という一枚の紙切れを貰っていたのを思い出した。これには「ブロードバンド最適化ツール」のダウンロードするまでの説明はある。私はそれに従ってダウンロード用のフォルダーにそのファイルを保存していたが、そのままになっているのを思い出した。そこで指示に従いこのアイコンをダブルクリックすると「ブロードバンド最適化ツール」のウインドウが開いた。「設定項目」のうち「RWN」の数値だけを変更してくれという。そして教えられた4種類の6桁数字をノートにメモした上でその一つを入力した。設定値を保存してPCを再起動する。そして回線速度を測定するのである。ところが測定結果はそれでもほとんど変わらない。次に2番目の数字を入力、保存、再起動、測定を繰り返す。今度は下りが8Mbpsほどになったが、それでも数値は低い。この件で私は気になっていることが一つあった。

私はIP PHONEを使っているので、外部からの信号ケーブルがまず「ケーブル・モデム」に接続され、モデムから出て行くLANケーブルが「IP PHONE Box」に入り、このBoxから出た電話線はIP PHONEに、LANケーブルは「無線LANルーター」に接続されている。そしてルーターのLANポートにPCが繋がっているのである。この「IP PHONE Box」の介在が回線速度を抑えているのではないかと私は最初から疑っていたのでその旨を女性スタッフに伝えていたが、関係がないと言われたのである。しかし気になっていたのでPCを直接「ケーブル・モデム」に接続し回線速度を測定すると110Mbpsの値が出た。ちなみに「IP PHONE Box」を外し「ケーブル・モデム」→ 「無線LANルーター」→ PC と接続しても80Mbsは出る。やはり「IP PHONE Box」がネックだったのだ。

IP PHONEを継続使用の契約にしているのでこれでは折角160Mコースに変えた意味がない。そこで技術者が状況を調べるためにわが家にやってくることになり日にちの打ち合わせを終え、ひとまず一段落となった。ところがしばらく経ってから地域担当者から電話があり、やはり「IP PHONE Box」を通すとどうしても速度が落ちるので、これを使いたければ元の30Mコースに戻すか、IP PHONEの使用を止るか、どちらかにしてほしいとのことであった。J:COMは私のようなケースまでを想定していなかったのだろう。いずれにせよこれはJ:COMの手落ちであり、契約前に利用者に伝えるべきことなのである。と言っても元の速度に戻す気にはならないのでIP PHONEを止めることにし、代わりにJ:COM PHONEをもう1回線増やすことにしてその工事の日取りを決め、これで一件落着となった(と思った)。

ところがその間に思いがけないトラブルが発生していた。回線速度が100Mを上回ったと喜んでいたPCのインターネット画面が動かなくなったのである。いつのまにかインターネットに繋がらなければメールも出来なくなっていたのである。LANの配線をいろいろとつなぎ替え、ついには前日のシステムに修復で戻したけれど事態は変わらない。ところが不思議なことに同じ無線ルーターに接続したもう一台のパソコンはインターネットに繋がっているしまったく正常に動いている。狐に騙されたような気になってJ:COMのサービスセンターに救いを求めた。

今度は男性スタッフで、まずは私が試みてうまく行かなかった「コントロールパネル」>「ネットワーク接続」>「LAN または高速インターネット」と入り、「ローカル エリア接続」の修復を指示された。もちろん失敗である。私が「IP PHONE Box」を外していることを説明して、これが何か問題にならないかと問いただしたが、無関係との返事が戻ってきた。言われるがままになにかと操作をし、LANボードのドライバーまで更新したがすべてがうまく行かない。そして最後にこれは私のコンピューターの問題なのでメーカーに連絡するようにと宣告されてしまった。一巻の終わりである。しかし私はあきらめなかった。

実は今使っているPCはMouse Computerの製品で、購入してから一月経ったほどのもので、これまで順調に動いてきた。そこで使用状況をブログにまとめようと考えていた矢先の出来事である。このLANボードに問題が生じたとはどうも考えにくい。あきらめきれないまま現在のLANの状況を把握することにして、「無線LANルーター」から無線で繋がっているはずの三台目のパソコンのインターネットへの接続を調べたが、やはり繋がらない。ところが不思議なことに気がついたのである。三台目PCはインターネットには繋がらないが、「マイ ネットワーク」ではなんとMouse Computerの共通フォルダーが見えるし、ファイルを開くことが出来るである。これでMouse ComputerのLANボードに問題がないことを確信した。となると問題はネットーワークで「IP PHONE Box」を外したことに関係があることになる。そしてあることを思い出した。

「無線LANルーター」を「IP PHONE Box」に接続して初期設定を行うときに、既にルーターが入っているからとかのメッセージが現れて、「無線LANルーター」のルーター機能を外して単にハブとして設定していたのである。ルーター機能が「ケーブル。モデム」にあるのか「IP PHONE Box」にあるのかその時は意識しなかったが、結果的には「IP PHONE Box」がルーターであったことになる。従って「IP PHONE Box」を外した時点でルーター不在になったのである。となると話は簡単で「無線LANルーター」を工場出荷時の初期状態にリセットで戻し、ルーター機能を回復させることですべてのシステムは「IP PHONE Box」を外した状態で正常になった。めでたしめでたし、である。

ネットワークに関しては私は素人同然である。それでも一応わずかな知識だけを頼りに、問題点に辿り着き、ようやく自分の手でトラブルを解決することが出来た。夕食も上の空でいろいろと調べては考え、おかげで久しぶりに考える楽しみを味わうことが出来た。このチャンスを与えてくださったJ:COMのスタッフに感謝である。これを皮肉に取っていただいては困る。スタッフとのやりとりを通じて、自分が考えていく道筋を探り当てたことの方が、言われるがままに操作してトラブルを解決するより遙かに面白く、大いに楽しめたからである。


追記(4月6日) この後の成り行きは以下の通り。

なんとも不安定なJ:COM NETウルトラ160M回線
やっぱり不安定なJ:COM NETウルトラ160M回線
やっと落ち着いたJ:COM NETウルトラ160M回線


中国製冷凍ギョーザ事件を推理すると

2008-03-10 21:19:14 | Weblog
中国製冷凍ギョーザによる食中毒事件が表沙汰になって一ヶ月以上経つが、食中毒を引き起こした有機リン系農薬成分メタミドホスがギョーザにどのように混入したのか、まだその経緯は明らかになっていない。中国公安省は中国国内での毒物混入の可能性はきわめて低いとと記者会見で述べたが、これに対して日本の警察庁は日本国内での可能性は少ないと応じており、現在のところ両者の主張が噛み合っていない。

ギョーザ食中毒事件が報道された時点で、私はブログでこう述べている。《今回のぎょうざ中毒事件は事故か故意の可能性が高く、混入したと思われる「毒物」の局所濃度が異常に高いことから、通常の製造工程での混入ではあり得ないと思う。とすると中国でも日本でも同じように起こりうることで、中国だけを特別視することもあるまい。いずれにせよ一刻も早い原因解明が望まれる。》

これまでの報道によると残留農薬と工場での製造工程における混入の可能性はまず排除してよさそうである。となると事故か故意でかなり大量の毒物がギョーザの入っている包装袋に付着していたことに第一原因がありそうである。そこで問題は付着した場所が中国か日本のいずれかと言うことになる。

もしこれが事故であるのなら綿密な調査で必ずその経緯を明らかにすることが出来る。しかし事故の経緯が明らかにされることと、それを公表することとはまた別問題である。中国側でたとえその事実を把握していたとしても、政治的な思惑で公表を控えたらそれまでである。一方故意によるものならこれはまさしく犯罪であるが、いかなる犯罪捜査でも犯人検挙率が100%ではないのと同様、真相が明らかになるとは限らないし、また意図的な迷宮入りがあるかも知れない。いずれにせよ現時点で事故の可能性が完全に否定されたのかどうか、せめてそれぐらいは日中両国の合同調査で結論を出して欲しいものであるが、両国の協力関係は一体どうなっているのだろう。

日本の持つ化学分析の技術で混入農薬が中国製か日本製かを明らかにすることは可能であろう。しかしたとえ中国製と判明しても、麻薬・覚醒剤が外国から大量に日本に運び込まれてくるこのご時世、だから混入した場所も中国だとは断定できない。とくに犯罪がらみとなれば、である。

さらに日中間のもう一つの争点は、メタミドホスがギョーザの包装袋を通過するかどうかである。密閉された包装袋の内側でメタミドホスが検出されたことから、日本側は袋詰め以前に混入されたと考えているのに対して、中国側はメタミドホスが冷凍ギョーザの包装袋にしみこむことが実験で確認された、と日本側の見解に異議を唱えている。毎日新聞はその実験結果を次のように伝えている。

《マイナス18度の条件下で、60%、30%、10%、1%の4種類の濃度のメタミドホス水溶液を完全密封した包装袋の外側に付着させる実験を実施したところ、62枚の包装袋のうち87%で袋の内側からメタミドホスが検出されたという。メタミドホスが冷凍ギョーザの包装袋にしみ込むことが確認されたとし、「密封された製品内からメタミドホスが検出されたことで、中国国内での混入を裏付けることにはならない」と主張した。》(毎日新聞、2008年2月28日 11時24分)

実験手法の詳細が分かるとよいのだが、中国側が冷凍保存温度で実験していることは注目に値する。理にかなっているからだ。日本側が温度何度で実験したのか分からないが、もし室温だったとすると実験結果に違いが出ても不思議ではない。日本側が中国と同じように低温で実験を行へばどちらが正しいのかすぐに分かることである。

私はかっていろんな成分を含んだ溶液を低温で凍結状態にすると、室温の溶液状態では起こらないような反応がかえって進むことを見つけたことがある。このあたりのことを費用効率ギネスブックものの研究で少々触れたが、従って私には冷凍状態だからすべての動きが止まってしまうとの発想はない。もしマイナス18度かそれ以下の温度で、袋の物性というか薄膜の物理化学的性質が変化して、室温ではメタミドホスが通過できなくても低温では通過するようになっても不思議には思わない。実験をすればすぐに答えの出ることであるので、日本側でも当然追試を行い検証をしたと思うが、その結果を知りたいものである。

ギョーザの原料に付着した残留農薬のせいでもなければ製造工程混入して農薬のせいでないことはほぼ確実であろうと私は思う。となると問題はギョーザの入った包装袋の外側に付着していたメタミドホスが、どのように被害者が口にしたギョーザに混じったかである。かりに中国側の主張するようにメタミドホスが包装袋の外側から内部に入り込んだとしても、袋の薄膜が低温でスカスカになるのでなければ、密封状態なのに内部で検出されたと言う程度の滲入はあるにせよ、食中毒を起こすほどの量がギョーザに付着するとはこれまた考えにくい。では食中毒を起こしたメタミドホスが実際どのような経路で身体のなかに入り込んだのだろう。私の推理は日常経験からの推理で、その内容は単純そのものである。

冷凍ギョーザを焼いた経験のある方はお分かりのように、冷凍ギョーザでも包装袋をあけるとプラスチックのトレーにギョーザがきれいに並べられているパッケージもあれば、袋にそのまま詰め込まれている場合もある。わが家で生協から購入していた一袋40ケ入り「上海ぎょうざ」は後者のタイプである。私の焼き方はフライパンに油をしき高温で熱して煙がでたらいったん火を消す。袋からギョーザを一つずつ取り出してフライパンに並べから水を適量加えて再び火をつけ蓋をして中火で加熱する。水がほぼなくなった状態で火を強め、焦げ目をきれいにつけて出来上がりである。

私の推理は問題となった天洋食品廠公司の冷凍ギョーザもこのように袋詰めされていたことを前提としている。たとえ包装袋の外側にかなりの量のメタミドホスが付着していたとしても、私のようにギョーザを袋から取り出しフライパンに並べる過程でそのメタミドホスがギョーザに付く可能性はきわめて低い。しかし袋の外側に触れている指でギョーザを持ち上げたりすると汚染の恐れがある。また人によっては一つ一つ手で取りだして並べるのではなく、袋の切り口から直接にギョーザをフライパンにあけてから並べる人もいるだろう。場合によれば袋を真っ逆さまに傾けているかも知れないし、袋をポンポンとはたいてギョーザを落とし込むかも知れない。そういう時こそ袋に付着した毒物がフライパンに落ちかかるだろう。私は袋の外側に付着した毒物が内側へ浸透した可能性よりも、毒物が直接にフライパンの上に落ちた可能性の方が遙かに高いと推理したのである。

このような推理から自衛策も産まれる。冷凍食品の入った袋に穴の空いていないことを確かめたらそれをよく水道水で洗い、水気を切って封をあければよいのである。どこかで中国産冷凍食品を大安売りしていたら、買って帰り実験するつもりではいるのだが・・・。



名古屋国際女子マラソン中村友梨香選手の優勝に感動

2008-03-09 16:40:35 | Weblog
Qちゃんこと高橋尚子選手がどれぐらいの走りを見せるのかを期待して名古屋国際女子マラソンの実況中継を見はじめた。スタートからあまりペースは上がらず、大きな塊の先頭集団がながながと続くので、私は嫌いであるがペースメーカーがこのときばかりはあってもいいかなと思ったりした。そして変化が思いもかけない形で現れた。9キロを過ぎたあたりだろうか、CMが終わった画面で選手の下半身がまず写り、何かなと思ったらなんと先頭集団から早くも後れた高橋選手の走りであった。その前に給水所で紙コップをつかみ、口にしたのは一口ぐらで残りの水を足に注ぎかけるように捨てたのでアレッと思ったが、何か不調の兆候であったのだろうか。そのあとは先頭集団からずるずると遅れが続き、後続の選手からも追い抜かれるようになり、やがて、テレビの画面に登場することがなくなった。

大きな先頭集団が30キロを越えたあたりだろうかようやく崩れ始めた。まず堀江知佳選手が集団から抜け出たが勢いが続かず、やがて後ろから追い上げてきた中村友梨香選手が先頭に立った。そして後続に30秒近くの差をつけながらの独走態勢に入り、瑞穂競技場に戻った時には彼女の優勝を確信し、テープを切った姿に感動した。女子マラソン界新星の誕生を目のあたりにしたのである。

先頭を切っている中村選手の表情が実によかった。汗は出ているもののポタポタしたたり落ちるほどではなく、健康美を際だたせている。そしてピッチも徐々に上がっていく。この時まで私が名前も知らなかった中村選手が多くのベテラン選手に混じっての初マラソンで、26分を切る2時間25分51秒の記録で堂々と優勝したのである。なんと弱冠21歳。初マラソンだから何回も出場している選手と違い余計なことを考えずに思い切り走れたのがよかった、と優勝インタビューで述べているのが実に快かった。まさに若さのなせる快挙である。

北京オリンピックの代表選手は第11回世界陸上大阪大会で2時間30分55秒の記録で銅メタルの土佐礼子選手、東京国際女子マラソンに大会新の2時間21分37秒で優勝した野口みずき選手が内定しているそうである。最後の三人目の選考レースが今日の名古屋国際女子マラソンであった。中村選手と三人目を競い合うのは天満屋の同僚森本友選手で、彼女は大阪女子マラソンに2時間25分34秒の記録で2位入賞(日本人ではトップ)している。記録だけで決まるのか、他の要素も加味されるのか、明日の日本陸連による五輪代表の発表が心待ちである。

靴の踵の高さが左右で3ミリ違うとクレームしたものの・・・

2008-03-07 21:20:51 | Weblog

今日の日経夕刊でこの見出しを見てアレッと思った。先週購入した靴に問題があり、販売店とやりとりをしている真っ最中なので、まさに私は「クレーマー」になっているのである。昨夕(3月6日)も靴の販売店とやりとりをして、今日また回答が寄せられるのを待っているところであった。

事は私が長年愛用していたClarksの靴がパンクしたことから始まる。その様子を文章で表現するのは難しいので、写真でご覧に入れる。



少し前からこのような状態になっていたのだろうが、たまたま手にとってみるまでは気がつかなかった。というのも上から見る限り異常の片鱗も感じさせなかったからである。同じメーカー同じデザインの黒靴と交互にではあるが10年前後は履き続けてきたように思う。それでもパンクした箇所だけを除いて他の部分は下の写真で分かるように傷んだところは見当たらない。さらに10年は履けると思っていたぐらいである。



これまでも別のデザインの靴を履きつぶしては同じものを買っていたので、今回も早速代わりを買いに出かけた。ところがこのデザインは既に製造中止になったと言うのである。在庫のある店なら店頭に並べているかも、と言われて靴屋の前を通ると気をつけてみたがやはり見つからなかった。仕方がないので、似たようなデザインの靴を探していたところ先週、ようやく気に入った靴を大阪梅田で見つけたのである。

私は足が締め付けられるのは嫌いである。Clarksの靴は横幅がゆったりしていたので問題はなかった。そして新たに見つけたのも4Eを売り物にしていたものである。これだと私の足の実寸サイズで靴のサイズを決めることができるのである。なかなかしっかりした作りなので気に入り、早速買い求めた。ところが帰宅後、靴を取り出してとみこうみしているとなんだか違和感がある。靴の高さが違っていたのである。その目で見た感じが伝わるかどうか、写真を掲載する。



実際に踵を平坦な台に乗せ後ろの縫い目の位置で踵の高さを測ると33ミリと30ミリで、左右で明らかに高さが違う。踵の部分で約1割の違いは大きい。そこで販売店に翌日電話したのである。女性店員が相手してくれた。

ここで上の新聞記事と関わるのだが、33ミリと30ミリを私は違いがあるとみたのだが、さあ、これが世間に通用するかどうかである。そこで店員にまず事情を述べて交換して欲しいと申し出た。ところがあいにくとブラウン色はなくて黒しか在庫しているという。そこでとりあえずその踵高を測って貰ったところ左右とも33ミリだという。やはり私の靴がおかしかったのだと言うことで、ブラウンを取り寄せて貰うことにし、宅配便の日時はあらためて連絡することになり、その約束の日が昨日(3月6日)だったのである。

電話がかかってきたが、女性店員の口調の歯切れがよくない。同じデザイン同じサイズ同じ色の靴が複数入荷したらしいが、踵高を測ったら一番差の小さいので2ミリだと言う。それでは、と差が一番大きかったペアを尋ねると4ミリ違っていたとのことである。4ミリと言えば1センチのほぼ半分、これがまともな商品とはどう考えてもおかしい。メーカーに踵高差の許容範囲をいくらにしているのか尋ねたのかと確認すると、このような結果になるとは思っていなかったのでまだメーカーには連絡していないという。そこで女性店員にメーカーにこの結果を連絡をしてとにかく同じ踵高の靴と交換する手配を取るように頼んだ。そして今夜、その結果の連絡を待っていた。

今夜の電話で女性店員は結論から先に申します、とメーカーからのメッセージを伝えてくれた。「このたびは大変ご迷惑をおかけしました。お客様の購入した分は不良品として返品していただき、踵高の等しいものと交換させていただきます」であった。至極もっともなことで確かに手間取ったが私の望んでいた形で決着しそうである。来週早々にもまた品物が販売店に到着するので検品の上私宛に発送することになったのである。

終わりよければすべてよし、ではあるが、それにしてもメーカーの言う「不良品」が顧客に届いたと言うのは問題である。製品にはちゃんと検査証が入っており、それに品質検査済みと印刷されて検査担当者の印鑑が捺されていた。メーカー側の言い分は別に物差しで踵高を測ったわけではないので、とのことであった。しかし私が目で見て明らかに分かる踵高差ではないか、それを検査担当者が見逃すはまじめに仕事をしていないからである。踵高に差が出来る原因として製造工程がどうでとの説明を聞いたが、台の上にこれから接着する踵をずらっと並べると高さに差があれば一目瞭然に分かることではないのか。実はこの靴には「○○○○の靴」と靴の製造者の名前が麗々しくプリントされているのである。

靴の踵の高さが違う、と私が言うのを聞いて、この女性店員はまずどう思っただろうか。聞いてみてもよかったが、私のクレーマーぶりには多分100点満点をくれたのではないだろうか。品物は気に入っているので交換を申し出ているのであり、交換に時間がかかるかもと言われたら、いつまでも待ちます、なんて言っているんだから。その上検品の仕方まで指導したのだから授業料を貰ってもいいぐらいだ。しかし授業料をよこせ、と言うとここで問題のクレーマー・クレーマーにされたことだろう。

最後には、靴の踵高を測ったのは初めてで勉強になりました、と彼女が言い、私も長い人生でこんな事は初めてだ、と答え、二人して笑って電話を切った。さて来週、どんな靴が届けられるか、今度は物差しではなくノギスで測ってやろうか。


あの人も歌っている「津軽のふるさと」をもう一度

2008-03-07 16:17:47 | My Song
「恥ずかしながら・・・」とは口先だけのこと、臆面もなく素人芸を披露していると、嬉しいことに時にはコメントを寄せてくださる方もいる。そのお一人に「津軽のふるさと、よかったですよ、あなたの声がちゃんと聞こえるのがいい」と言われたので、表に引っ張り出した塩田美奈子さんにまた少し後ろへ下がっていただいて歌い直した。嬉しがり屋丸出しである。こうすると自分なりに直すべきところがよく分かるのがいい。「またウララが始まった、ウララ ウララ ウラウララ(なぜか山本リンダ調)」と家人の揶揄にもめげず、ひたすら精進に駆り立てられると言うものだ。

「千の風になって」の秋川雅史さんが歌っている、と教えてくださった方もいた。日本人の琴線に触れる「津軽のふるさと」は、ジャンルを超えてクラシックの歌手をも魅了するのだろう。しかし私の好みで言えばやはり塩田美奈子さんである。秋川さんの「津軽のふるさと」は「千の風になって」のように聞こえてきたからである。


隠居生活も10年となると・・・

2008-03-05 22:57:48 | Weblog
もう6時を回った。でも裏山が残光の空にくっきりと浮かび上がっている。いつの間にか日の落ちるのが遅くなってきている。今朝、7時過ぎに起きてから考えてみるとほとんど休みなしに何かをしてきた。ほぼ11時間、働きずくめで私が労働者だとすると完全に労働基準法の休憩の定めを犯していることになる。ところがそんなことてんで気にならない。自分の好きなこと、やりたいことをしているので、無為の時間がただただ惜しいのである。

朝6時過ぎに目を覚ました。寝床の中で読みさしのMichael Crightonの「Rising Sun」を読む。30分ほど読んでパタンと本を取り落とすこともなかったので二度寝もなく、今朝は素直に起床した。

朝食は新聞に目を通しながら、というのが私の長年の習慣で、テレビにもちょこちょこ目をやる。食事が終わったら、早速昨日稽古をつけていただいた一弦琴のお浚いである。記憶がまだ残っている間にお浚いをしてなんとか身体に覚えさせないといけない。

お師匠さんのところでは「一絃琴清虚洞新譜」で演奏するが、家では徳弘太著「清虚洞一絃琴譜」を最近では使うようになった。今お浚いしている譜が三枚にわたるので今朝はそれをコピーして貼り合わせ、横長の一枚の譜に仕上げた。はるかに見やすい。今やキャノンのPIXUS MP610で簡単にコピーが出来るので、仕事がやりやすくなった。それまではスキャナーでいったん取り込んだ画像を印刷していたのである。

曲を身体に覚え込ませるには、短い楽節を何回も何回も繰り返して演奏しては全体の中に置いていく。自分にあった息継ぎ場所を定めるにも結構時間がかかることもある。そして譜に心覚えを書き込んでいく。こうしていると一二時間はあっという間に過ぎていく。それでも演奏を録音出来るのはまだ先の話である。

時間を見るとまだお昼までには小一時間ある。そこでMozartのオペラのある場面で歌われる重唱の譜をコピー(これは内緒)することにした。重唱に新たに挑戦することになり、ヴォイストレーニングの先生からお借りしたものである。17ページ分を音楽ソフト「スコアメーカーFX2 Pro」に取り込むのである。後でいろいろと加工や操作ができるので都合がいい。出来上がった頃にちょうどお昼となった。

となると食事を摂りながらDVDでそのオペラの鑑賞、というよりは場面のチェックである。DVDだと場面をチャプターで探し出せるのでとても便利である。しかし譜とにらめっこしてもなかなか歌を追うこと自体が難しい。それに気を遣うことがあるのだ。「食事くらい落ち着いてしなさい」といつ妻の小言が飛び出るか、そうはさせじと気迫で押し返しながらの取り組みだからまさに真剣勝負である。それにしてもこの伯爵夫人(これで何のオペラかお分かりだろう)のとてつもないグラマー姿には視線が引き寄せられる。ちらちら見ているうちに譜のどの場所なのかが分からなくなってしまった。素晴らしく歌がうまい。それも当然、調べてみるとこの役でオペラ・デビューを果たしたルネ・フレミングだったのである。今の体型からは思いもよらなかったが顔は確かにそうであった。

食事が済めば休む間もなく洋楽の実技である。昨日塩田美奈子さんと歌った「津軽のふるさと」をアップロードしたが、できがあまりよくない。マイクの位置が悪くて折角の彼女の歌声が背景に追いやられているのである。CDで彼女の歌を流し、それに合わせて私が歌い録音するので、スピーカー、録音機、私のそれぞれの位置を調整しないといけない。これを試行錯誤で決めるのである。自分の歌に決して満足することがないから、出来上がりはどこかで妥協することになるがそれは仕方がない。それでも今日はブレスに少々神経を使った。録音を連続的に何回も行い、そのなかでましなものをアップロードして、昨日の演奏と差し替えた。

「津軽のふるさと」を歌っていると今度は韓国の民謡をSumi Joと歌いたくなった。世界のプリマドンナが母国の民謡を格調高く歌っているのが実に素晴らしい。タイトルの英訳は「Spiritual Love」というのがまたいい。歌はもちろん韓国語なのでなんとか韓国語の発音をマスターして一緒に歌いたいものである。今日のところは「アーアー」で声あわせだけにとどめた。

このようなことをしているうちに6時を回ったのである。考えてみたら仕事?の密度は現役時代を遙かに上回っていると思う。今はすべてが自分の思いのままであるが、月給を貰っている間はやりたくないことでも職務上やらざるをえなかったから、力の入れ方が違うのは当然だろう。ただこのような毎日だけだと「冥土の旅へまっしぐら」になってしまうのでそれでは呆気ない。だから気分転換で外に出かける時は足の向くまま気の向くままを心がけている。

塩田美奈子さんと歌う「津軽のふるさと」

2008-03-04 13:19:12 | My Song
6月下旬に西宮の芸文センターで佐渡裕プロデュースの「メリー・ウィドウ」が上演される。オペレッタは大好きなので先行予約受付の初日にチケットを予約しようとしたが、相変わらずインターネットは止まるし電話は繋がらない。10時から電話をかけ始めて午後1時前にようやく繋がった。私が狙っていた佐藤しのぶ・森麻季が出るほうのチケットは早くも完売だったが、ダブルキャストで塩田美奈子がハンナ役を演じる方のチケットは確保できた。もっとも私が購入したのはC席なので、それより高い席はあったのかも知れない。

実は塩田美奈子さんも私の好きな歌手の一人でCDはほとんど買っている。それにもう何年も前になるが兵庫県の確か社町にあるホールでのリサイタルには車で駆けつけたこともある。田園の中にあるホールで長靴をはいた野良着姿の観客が印象的だった。軽トラックでやってくる、そういうとてもアットホーム的な雰囲気がよかった。塩田美奈子さんのトークも面白く、カルメン役だかで踊りを習っていたスペイン人ダンサーと出来てしまった、なんて話に一挙に親近感を抱いてしまった。今度「メリー・ウィドウ」役をするのに旦那と別れたりするんだろうか。

その彼女の歌で絶品なのが「津軽のふるさと」である。その味を壊して申し訳ないが、ついつい一緒に歌ってしまった。

「大本営発表」と防衛省発表

2008-03-03 20:59:33 | Weblog
前の戦争中、大本営発表というものが国民に戦況を伝えた。今のNHKの前身、日本放送協会のアナウンサー(戦時中の名称は記憶にない)が報道を読み上げたり、また陸海軍の報道部長が直接放送した。なぜか大本営海軍部報道部長平出大佐という名前は今でも私の記憶に残っている。最初は戦捷ニュースが多かったが、やがては「玉砕」も報じられるようになった。そして、これは戦後の検証で明らかになったことではあるが、いつのまにか実際の戦況とは全く異なる報道が横行するようになった。

米軍に押されっぱなしで気勢の上がらなくなった戦争末期で、私たちが喝采したのは台湾沖航空戦の大戦果であった。昭和19(1944)年10月に台湾方面に来襲した米機動艦隊を迎え撃ったわが海軍が次のような大戦果を挙げたと大本営が発表したのである。

①我が方の収めたる戦果綜合次の如し
 轟撃沈 航空母艦11隻、戦艦2隻、巡洋艦3隻、巡洋艦もしくは駆逐艦1隻
 撃破 航空母艦8隻、戦艦2隻、巡洋艦4隻、巡洋艦もしくは駆逐艦1隻、艦種不詳13隻
 撃墜 112機(基地における撃墜を含めず)
②我が方の損害
 飛行機未帰還312機

この通りだと米海軍機動部隊はまさに壊滅状態であった。しかし実際は空母1隻小破、重巡キャンベラと軽巡ヒューストンを大破させたに過ぎなかったという。ここまで壮大な嘘をつかれると、その創造意欲をほめてあげたいくらいになる。戦後の検証でこのような大虚構が明らかになってから、「大本営発表」は《“内容を全く信用できない虚飾的・詐欺的な公式発表”の代名詞ともなっている》(ウィキペディア)のである。

今回のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故は、このような本物の戦闘とくらべるべくもないが、自衛隊にとっては「有事」であったに違いない。かっての「大本営発表」に代わるものとして、せっかく映像が流れるご時世になったのだから、制服姿のピリッとした報道官にニュースの時間にお出ましを願いたかったのに、出てくるのは冴えない文官ばかりで残念であった。今回初めてテレビでお目にかかった防衛事務次官はまことに軽い人物との印象を最初から植え付けられたのはこれまた残念だった。ただ「大本営発表」に代わるものとして防衛省・自衛隊のホームページの「お知らせ」はまあまあだったと思う。リアルタイムで報道を追ったわけではないが、『海上自衛隊護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事案について』の第一報が平成20年2月19日に現れてから続報があい続き、最低限必要な情報はそれなりに伝えていると感じた。「大本営発表」よりはるかにまともである。

清徳丸と衝突した「あたご」のなすべきこと、これは素人目にも一目瞭然で、まず即刻遭難者の救助にあたらねばならない。一方、「あたご」の艦底に爆薬類が仕掛けられていないかどうかを被害状況と併せて点検する。そして事故発生時の定められた「手続き」に従い、海上保安庁と海上自衛隊に状況報告をする。早ければ早いほどよい。指揮を執るのはもちろん「あたご」艦長である。このように緊急事態への対応が最優先事項であることは言うまでもない。海上自衛隊と海上保安庁が事故原因解明に向けてそれぞれの立場で調査を行うのはそれ以降のことになる。事故原因の公表などはかなり先の事になるだろう。

一方防衛大臣と防衛事務次官の記者会見の概要もホームページに掲載されている。報道メディアの記者との質疑応答も含まれるが、防衛省の事後の事務処理の不手際などを記者がこと細かく問いただしているのが私には目障りだった。そんなことはどうでもいいことである。実際の戦争で砲弾が一発でも艦橋に飛び込んできたら、大臣への報告が何分遅れたとか、言っている場合でないことぐらいすぐに分かるではないか。読み通す暇のある方には記者の脳天気ぶりを見るのに便利な質疑応答集である。

脳天気と言えば衆議院予算委員会での衝突事故に関する質疑応答がそうであった。衆議院予算委員会は国の予算案を審議をする場のはずである。ところがその委員会で防衛省が発表した「漁船発見時間は事故発生2分前」だとか「清徳丸の発見は衝突の12分前だった」の矛盾点の追求や時間の前後関係や、防衛省が「あたご」乗組員から事情聴取した時間とかそのやり方、さらには海上保安庁との連携のまずさなどについて質疑応答が繰り返された。予算委員会では慣例として予算の執行を伴う国政の重要事項について審議が行われてきているが、事故発生2分前とか12分前とか、またその情報がどう流れたのかを問いただすことが、どうして予算案審議に結びつくのか。「風が吹けば桶屋が儲かる」程度の話にすぎないではないか。特に今の通常国会では目前に迫った来年度の予算案成立の最後の追い込み時期に入っていたと言うのに・・・。このような枝葉末節のことに貴重な時間を使って、予算案の審議時間がまだ不十分であると強弁する国会議員の顔を私はしっかりと見届けたつもりである。

それにしても締まらない海上自衛隊である。軍国少年の頃に歌った「♪海の男の艦隊勤務 月月火水木金金」の代わりに、戦後の替え歌、「♪ルンペン生活なかなかつらい ケツケツカイカイのみしらみ」なんて歌がつい口から飛び出た。