日々是好日

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総選挙雑感(2) 『風見鶏のヤス』の子は不肖の子

2005-09-14 11:26:56 | 社会・政治
中曽根氏、郵政法案に賛成表明 法案成立は決定的 (朝日新聞) - goo ニュース


《郵政民営化法案の参院採決で反対票を投じた自民党の中曽根弘文元文相は13日、都内で記者会見し、同法案について「総選挙で明らかになった国民の意思を重く受け止め尊重したい」と述べ、特別国会で再提出されれば賛成する意向を示した。さらに自らが所属する旧亀井派で反対した12人のうち離党した荒井広幸氏を除く参院議員11人は、意思確認の結果、全員が賛成に転じる意向であることも明らかにした。》そうである。

『風見鶏のヤス』こと中曽根康弘氏の血脈につながる中曽根弘文氏であるからこの『変節』は異とするに当たらないが、風の吹き抜いていった方向しか向けなかったのが『大勲位』との器量の差である。

総選挙において与党が衆議院の三分の二を上まわる議席数を獲得したことで、衆議院を通過した法案がたとえ参議院で否決されても再び衆議院の賛成で法案が成立する。その歴史的イベントを目の当たりにせんものとワクワクとして待ちかまえている多くの国民の期待をも裏切る変節的行為である。「総選挙で明らかになった国民の意思を重く受け止め尊重したい」と述べているにもかかわらず、ここでも中曽根弘文氏はこの国民の意思を取り違えているといいたい。

私は「郵政民営化関連六法案」が上程された参議院における世耕弘成議員の賛成討論は名演説であると感じ入った。その同じ演説を参議院の議場で直接耳にした中曽根弘文氏とその一党が確固たる信念をもって「青票」を投じたのである(と思った)。

その結果がどうであったか。風向きが変わったから今度は「白票」という程度の軽佻浮薄な「青票」数十票のために、国費数百億をかけての解散総選挙となったのである。「国民に意思を重く受け止め尊重したい」のなら、その国民の意思を受け止めることの出来なかった不明を恥じ、義務の放棄を国民に謝し議員を直ちに辞職することである。私見では選挙費用を弁済させたいぐらいである。

昭和47年に刊行された「現代世界大百科事典」(講談社)の参議院の項に「当初の職能代表的機能がうすれ、政党化の現象が著しい」と記されている。それから33年、今や参議院の政党化は行き着くところまで行き着き、だから完全に衆議院のコピーと化して不要の長物となっている。

両院制をもつ国家では第二院の設置の目的として以下のようなことが考えられている。

①特権的少数者の利益保護を目的とする貴族院型
②社会の職能的集団を代表させようとする職能代表型
③高い知性・専門知識の会議体として構成しようとするブレーン・トラスト型
④他院のコントロールを目的とする期間内統制型
⑤連邦を構成する各邦を代表する連邦型
(世界大百科事典、平凡社)

現行の参議院は②に加えて③④の役割を果たすことが期待されていた。
しかし現状はどうか、誰が考えても同じ結論しか出ない。何一つ当初の期待に応えていないのである。

戦後60年の長い実験期間と膨大な国費をかけて、わが国は第二院である参議院が衆議院のコピーと化した現実を国民の前に明瞭に示した。そして本来その役割を期待された第二院が不在であっても国政の遂行になんら支障のないことをも実証した。この成果の上に立てばだれが参議院の廃止に躊躇するだろう。この大きな無駄の解消を憲法の改正で実現すべきであると私は主張する。

憲法制定過程で占領軍総司令部は当初一院制の構想を日本側に提示した。それを日本側が巻き返して、両院を民選議員で構成するとの条件の下に両院制の採用を総司令部に認めさせて参議院の設置が決まった経緯がある。

アメリカは連邦制を採っている。連邦制を採らない日本が一院制で十分であることは民主主義の本場アメリカにとっては自明の理であったのである。その占領軍さえ出来かねたことを実現できる政治家こそ次代を担う資格がある。