知識は豊富なのだが世間に疎い人がいる。
何かの国家資格を持っているのだが、その国家資格に沿う知識
は備わっているのだが現実の世の中を知らない、世間知らず、融
通がきかない、そういうタイプの人に出会う時がある。
10年程前、酒席が続いて私は倦怠感と疲労を覚えたので念のた
めにと現住所からは遠く離れた他府県の総合病院へ検診に訪れた
ことがあった。
一通りの検査を終えて担当の医師の診察を受けるべく呼ばれた。
私より少し年上の医師が私と向き合った。
「うん、特にどこにも異常はありませんね。」
と医師は言うのだが、私は内臓が酒が続いたことで倦怠感があり
自分の感覚では少し腫れているような自覚があったので、体がだる
いとか胃がもたれるようにしんどい等々と自覚症状を説明した。
しかしその医師はどこかポカンとした顔をしている。
カルテに書きかかっている手が全く動かない。
「いや、ですからこう、酒が続きましてね、内臓が腫れた感じがして
だるいのですよ。ほら、こう。何というのですか、内側から引っ張られ
るように重くて、ほてるのですよ。」
と私が説明しても、その医師は何かキョトンとしていた。
数値ではどこにも異常はないと説明されても、現実に自分の体が
とてつもなく気だるいのと内臓が疲れた感じだったので万が一にも
どこかに異常や支障がないかと私も念を入れて医師に説明をしたの
だが、その医師は何かポカンとしてカルテに全く何も記さない。
10分程、一方的に私が説明していたのだが無反応で無表情のそ
の医師の姿に私は次第にある疑問を抱き始めて、ふと質問をした。
「先生、すいませんが常日頃、お酒を飲まれますか?」
その私の問いかけにその医師は得意気な表情を浮かべて
「いいえ。私はですねお酒が嫌いですので全くお酒は飲みません。」
と答えた。
その瞬間、私はその医師が何故、私の説明に無反応だったのか
カルテに記入する手が止まったまま動かなかったのか理解した。
その医師はお酒を飲まないために、酒を飲み続けることによる体の
違和感や不調、酒で体調を崩すという体感が理解できないのである。
従って検査で出た各数値のみを見て、それだけで判断していたので
あり内臓がだるいとか、体が気だるいという私の説明は言葉の意味とし
ては通じても自分の体感にまで落ちてこないために無表情になりポカン
としたままであったのである。
数値ではどこにも異常がないというのだから、これ以上は会話しても
無駄だと感じた私はたまにはお酒でも飲んでくださいと言い残して診察室
を後にしたことを思い出す。
また以前に、車線変更をしようとして右にハンドルを切ろうとした瞬間に
同じく左に車線変更をしようとした車が左にハンドルを切ってきて漢字の
「人」の文字のような形で車同士が接触事故になった人に同席をしてある
弁護士に過失割合の相談に訪れた時のことである。
「こういうふうに運転していてハンドルを切ると、いきなり相手がこちらの
角度から突っ込んできたのです。」
と説明する同席した方の話をじっとその弁護士は聞いていた。
「ですからバックミラーを見ても大丈夫、サイドミラーを見ても大丈夫、そし
て目視で右横を見ても大丈夫だったのでハンドルを右に切ったのです。
そうしたらいきなり死角から車が左にハンドルを切ってきて・・・・・こう・・・。」
とその方が説明するのだが、その弁護士は何か無反応であった。
やがてその弁護士が車のおもちゃを2つ持ち出してきて
「こういうことですか?こういうふうに走っていたら、こっちがこう出てきて。」
と確認しているのだが、説明しているその方は
「いやいや違います。そうではなくてこう運転していたらこういう視野になる
でしょう、だからバックミラーで確認してサイドミラーで確認して横を見て、
そしてハンドルを右に切ったら・・・・。」
と何度も説明しているのだが、その弁護士はなかなか腑に落ちないような
状況だった。
次第に説明している方の語気も荒くなっていく。
「いやいや、そういう意味ではなくて、こう運転していたんですよ、こう。
そうしたら相手がこう来たわけですよ。」
と何度も語気を荒げながらその方は説明を繰り返すのだが、その弁護士が
何度も2つの車のおもちゃを手にして、こうかな、こういう感じかな、すると
こういうことかな、等と腑に落ちないことをブツブツ言っているので私はふと
疑問に感じてその弁護士に尋ねてみた。
「先生、日常で車を運転していますか?」
そう尋ねた私の問いかけにその弁護士はすまし顔で
「いえ、私は車の免許証を持っていませんから運転なんかしませんよ。」
という信じられない返事を返してきた。
車の免許証を持っていない弁護士が交通事故で相談者が運転状況を
身振り手振りでいくら白熱の説明をしても、車を自分で運転したことがない
弁護士が状況や感覚、ましてや死角の問題や状況が分かるはずがない
と私は愕然としたものである。
世間は弁護士と聞くだけでその人を万能だと思いがちであるが、弁護士
でもそれぞれに得手不得手の分野があり、得意分野もあれば疎い分野も
ある。ましてや自分が経験していない日常の場面や体感もあり、時に相談
者の説明に自分の体感が伴わないためにちぐはぐな対応になる事もある
という事を私は体感した。
医師も同様にそのような状況になる時もある。
私はその方に損害保険会社を通じて弁護士を他の弁護士に交代したほ
うが良いと述べたことを思い出す。
知識は多いのだが世間に疎いというのか、自身に日常の中でそのような
体験が欠落している専門家の、ふとしたやり取りの中で感じた姿を思い出し
少し述べてみた。
何かの国家資格を持っているのだが、その国家資格に沿う知識
は備わっているのだが現実の世の中を知らない、世間知らず、融
通がきかない、そういうタイプの人に出会う時がある。
10年程前、酒席が続いて私は倦怠感と疲労を覚えたので念のた
めにと現住所からは遠く離れた他府県の総合病院へ検診に訪れた
ことがあった。
一通りの検査を終えて担当の医師の診察を受けるべく呼ばれた。
私より少し年上の医師が私と向き合った。
「うん、特にどこにも異常はありませんね。」
と医師は言うのだが、私は内臓が酒が続いたことで倦怠感があり
自分の感覚では少し腫れているような自覚があったので、体がだる
いとか胃がもたれるようにしんどい等々と自覚症状を説明した。
しかしその医師はどこかポカンとした顔をしている。
カルテに書きかかっている手が全く動かない。
「いや、ですからこう、酒が続きましてね、内臓が腫れた感じがして
だるいのですよ。ほら、こう。何というのですか、内側から引っ張られ
るように重くて、ほてるのですよ。」
と私が説明しても、その医師は何かキョトンとしていた。
数値ではどこにも異常はないと説明されても、現実に自分の体が
とてつもなく気だるいのと内臓が疲れた感じだったので万が一にも
どこかに異常や支障がないかと私も念を入れて医師に説明をしたの
だが、その医師は何かポカンとしてカルテに全く何も記さない。
10分程、一方的に私が説明していたのだが無反応で無表情のそ
の医師の姿に私は次第にある疑問を抱き始めて、ふと質問をした。
「先生、すいませんが常日頃、お酒を飲まれますか?」
その私の問いかけにその医師は得意気な表情を浮かべて
「いいえ。私はですねお酒が嫌いですので全くお酒は飲みません。」
と答えた。
その瞬間、私はその医師が何故、私の説明に無反応だったのか
カルテに記入する手が止まったまま動かなかったのか理解した。
その医師はお酒を飲まないために、酒を飲み続けることによる体の
違和感や不調、酒で体調を崩すという体感が理解できないのである。
従って検査で出た各数値のみを見て、それだけで判断していたので
あり内臓がだるいとか、体が気だるいという私の説明は言葉の意味とし
ては通じても自分の体感にまで落ちてこないために無表情になりポカン
としたままであったのである。
数値ではどこにも異常がないというのだから、これ以上は会話しても
無駄だと感じた私はたまにはお酒でも飲んでくださいと言い残して診察室
を後にしたことを思い出す。
また以前に、車線変更をしようとして右にハンドルを切ろうとした瞬間に
同じく左に車線変更をしようとした車が左にハンドルを切ってきて漢字の
「人」の文字のような形で車同士が接触事故になった人に同席をしてある
弁護士に過失割合の相談に訪れた時のことである。
「こういうふうに運転していてハンドルを切ると、いきなり相手がこちらの
角度から突っ込んできたのです。」
と説明する同席した方の話をじっとその弁護士は聞いていた。
「ですからバックミラーを見ても大丈夫、サイドミラーを見ても大丈夫、そし
て目視で右横を見ても大丈夫だったのでハンドルを右に切ったのです。
そうしたらいきなり死角から車が左にハンドルを切ってきて・・・・・こう・・・。」
とその方が説明するのだが、その弁護士は何か無反応であった。
やがてその弁護士が車のおもちゃを2つ持ち出してきて
「こういうことですか?こういうふうに走っていたら、こっちがこう出てきて。」
と確認しているのだが、説明しているその方は
「いやいや違います。そうではなくてこう運転していたらこういう視野になる
でしょう、だからバックミラーで確認してサイドミラーで確認して横を見て、
そしてハンドルを右に切ったら・・・・。」
と何度も説明しているのだが、その弁護士はなかなか腑に落ちないような
状況だった。
次第に説明している方の語気も荒くなっていく。
「いやいや、そういう意味ではなくて、こう運転していたんですよ、こう。
そうしたら相手がこう来たわけですよ。」
と何度も語気を荒げながらその方は説明を繰り返すのだが、その弁護士が
何度も2つの車のおもちゃを手にして、こうかな、こういう感じかな、すると
こういうことかな、等と腑に落ちないことをブツブツ言っているので私はふと
疑問に感じてその弁護士に尋ねてみた。
「先生、日常で車を運転していますか?」
そう尋ねた私の問いかけにその弁護士はすまし顔で
「いえ、私は車の免許証を持っていませんから運転なんかしませんよ。」
という信じられない返事を返してきた。
車の免許証を持っていない弁護士が交通事故で相談者が運転状況を
身振り手振りでいくら白熱の説明をしても、車を自分で運転したことがない
弁護士が状況や感覚、ましてや死角の問題や状況が分かるはずがない
と私は愕然としたものである。
世間は弁護士と聞くだけでその人を万能だと思いがちであるが、弁護士
でもそれぞれに得手不得手の分野があり、得意分野もあれば疎い分野も
ある。ましてや自分が経験していない日常の場面や体感もあり、時に相談
者の説明に自分の体感が伴わないためにちぐはぐな対応になる事もある
という事を私は体感した。
医師も同様にそのような状況になる時もある。
私はその方に損害保険会社を通じて弁護士を他の弁護士に交代したほ
うが良いと述べたことを思い出す。
知識は多いのだが世間に疎いというのか、自身に日常の中でそのような
体験が欠落している専門家の、ふとしたやり取りの中で感じた姿を思い出し
少し述べてみた。