子供の感性とウルトラマン

　今の幼児や子供達はどういう娯楽や視覚に生きている
のだろうか。私が子供の頃、今この季節は緑の濃い匂い
と波の音、潮の香りと蛙の鳴き声などに包まれていた。
　大阪などの都市圏に、この匂いや香りがあるだろうか。

　憧れの眺めについても同様である。
　先日、映画のスピルバーグ監督がインタビューで日本
のウルトラマンが好きだった旨の発言をしていたが、空想
科学特撮で子供達に夢や憧れを勧善懲悪の主題に乗せて
提供していた円谷プロとウルトラマンの作者の才能は素晴
らしいと思う。映像も限りなく現実的で私が幼児の頃は
あの山の向こうから怪獣が現れても風景として違和感が
無かった、つまりあの頃の円谷プロダクションの作品は
傑作であり優秀であったと改めて感じている。
　今日の子供達に、ウルトラマンのような憧れを満たす
作品があるだろうか。

　物語性も当時のウルトラマンシリーズは優れていた。歌も
歌詞も素朴だが綺麗で素朴な世界観が描かれている。みすず
児童合唱団、少年少女合唱団みずうみ等のガラスのような
合唱の歌声とオーケストラが阿久悠、すぎやまこういち等の
才能が歌詞を綴り、尾崎紀世彦、団次郎、真夏竜などの歌声
で子供達が耳にするという今の時代ではなかなか生まれにくい
豪華な陣容で創作されている。
　今、三十代以上の世代がウルトラマンシリーズの歌を聴けば
当時の様々な記憶が触発されて当時の時代背景や生活環境と
共に戻ってくるのではないか。大人として聴いてみても勧善懲
悪や人間性、生きることなどを歌い上げている大人にも通じる
歌として見直すこともできるだろう。
　その思いで次世代を思いやれば良い。

　子供達に夢を。
　最近のウルトラマン云々がたまたま画面に流れていたので
しばらく見たが、当時のウルトラマンシリーズより作品に重み
を感じないのは何故だろうか。何かが違う。歌も質が劣る。
怪獣自体に夢が無い。
　子供ながらにウルトラマンシリーズのお陰で宇宙空間を想像
することが出来たし、地球の外の空間を自然環境の一環として
描かれていた当初の円谷プロ作品と今の時代のウルトラマン云々
の宇宙の描き方は全く違っている。
　さて、子供達がどのように感受しているだろうか。

　モノづくり日本。製造業の心。
　次世代対策としても作品や憧れという存在を「つくる」という
心も大切ではなかろうか。