九月に入るのを待ちかねて、「萩」が咲いた。
古来、萩は秋の七草の名花である。
かつて萩は何処にでも見かけたが、昨今は野に咲く萩を探すのは容易ではないし、更には、萩を観に行くこころの余裕もないのが、大いに反省させられるところだ。
秋のお彼岸に供える「おはぎ」餅は、「お萩」だと昔聞いたのを思い出して、「大辞林」をひもといた。「おはぎ・御萩」、もと女房詞で「萩の餅」。
うるちともち米を混ぜて炊き、軽く搗いて外側に餡・黄な粉をつけるとある。対比して「ぼたもち」は、「牡丹餅」。春のお彼岸のお供えだ。「おはぎ」には未だ穫れたての、皮の柔かな小豆を「粒餡」にしてまぶし、春の「ぼたもち」には、冬を経て小豆の皮が硬くなるので「さらし餡」を使う。現代ではその様な使い分けはしないだろうが、古人の驚くべき生活の知恵だ。
田舎育ちの虚庵居士の子供のころは、「おはぎ」作りを良く手伝った。鉄釜で蒸かしたご飯を、軽く搗くのが役目だったが、「おはぎ」も「ぼたもち」も懐かしい「ごちそう」だ。
流れ来る汗を拭きつつ歩み来れば
さ枝に咲き初む萩の花かも
長月を待ちかねつるに鄙の萩も
同じ思ひかさ枝に花つけ
夕されば萩と聴かましわぎもこの
琴の調べと虫の集きを