「野牡丹」が、紫紺色濃く咲いていた。
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車で出掛ける際に、綺麗に咲いているのを見かけたので、昼過ぎに帰宅してそそくさと観に行った。花びらの周辺がすでに縮み始めていて、写真に写すのは気の毒だったので、日を改めて午前中に訪ねた。「お待ちしてました」という雰囲気で、見事であった。紫紺の花びらは、光線の加減で赤味を帯びたり、青味が勝ったり、微妙な色合いを見せて愉しませて呉れる。
花びらも美しいが、大きな釣り針のように湾曲して、先の鋭く尖った蕊も面白い。少年のころ鰻釣りをして遊んだが、鰻針そのものといった感じである。
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紫紺野牡丹を観て、鰻釣りを思い出すのも誠に不粋だが、少年がそのままジイサマ・虚庵居士になったのだから、仕方あるまい。
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野牡丹と刻を契るにあらねども
あわれ花びら縮みて待ちにし
日を代えて野牡丹朝に訪ひしかば
紫紺に咲きて待つぞいとしき
大いなる蕊のつり針 野牡丹は
たぎるこころを釣らむとするにや