これ程に、変化の烈しい花を知らない。
夕暮れともなると、トランペットを吹き鳴らす風情で、それぞれの方向にむけて、咲き競う。
一般的にどんな草花でも花は太陽に向かうが、夕暮れに咲く「おしろい花」であれば、太陽を求めないのは至極当たり前かもしれない。しかも早々に夕陽を受ける花の色は、千変万化だ。素人カメラマンにとって、その色合いをバカチョンカメラで写し撮るのは殆ど不可能だ。
日本女性の表情の変化自在も、自然の草花の移り行く様を、何時からか身に付けたのではなかろうか。四季の変化の豊かな日本ならではと、虚庵居士には思われるのだが、如何であろうか。
あくる朝になれば、全ての花は口を閉ざして、儚く散り行く様は、桜の「いさぎよさ」と通じるのではあるまいか。
夕されば刻を違えず急き咲くや
今宵をかぎりのおしろいばなは
宵なれば色競ふらむおしろいの
花の命は 明日を待たずも
明けぬれば 燃ゆる夕べの証とや
花の名残は散りにけるかも