Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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マリアナの子供たちと

2009-06-11 11:35:10 | 中南米
マリアナの家族と4日間を過ごし、シカゴに戻ってきた。2ヶ月前に比べて格段に暑くなっていたのと、年甲斐もなく子供たちと遊びすぎて疲労困憊してしまった。

村に到着してすぐに、 女の子たちがダンスを披露してくれた。僕が戻ってくると聞いて、2週間前から練習していてくれたそうだ。

この家族を訪れるのはこれで4度目になったが、取材抜きで訪れたのは勿論初めて。写真の事をあまり考えずに今回ゆっくり彼らと時間を共にして、あらためて「家族」というものを考えさせられた。

彼らは経済的には非常に貧しいし、家などぼろぼろで家具や所持品などほとんどない。トイレを流すのも、身体を洗うのもその度にバケツで汲んでいかなくてはならないし、テレビだって3世帯にひとつあるだけだ。しかしそんな物質的な貧しさとは関係なく、ここには家族のあるべき姿、というようなものが存在している気がするのだ。

祖父さんと祖母さんをはじめとして孫、ひ孫までの代までがみな近所に住み、毎日顔を合わせながら助け合って生活している。マリアナが病に伏せっているときも、家族がそれぞれ村を募金してまわって薬代などを調達してきたし、現在も少しでも余裕のある者が子供たちの学費や必要な生活費を工面する。女たちはみなよく冗談を言っては笑い、子供たちもみな実に素直だ。テレビゲームなど持っていなくても、小川で泳いだり釣りをしたり、またバレーボールや縄跳びなど、遊びには事欠かない。家事の手伝いを命じられれば嫌な顔をする訳でもなく、目上の者を敬うということも自然と身に付いている。

所持するものは少なくても、彼らはとても豊かな心を持っている。恐らくそんな彼らに魅せられて、僕は仕事とは関係なしにまたこの家族を訪れたくなるのだと思う。

日本でも一昔前まではこういう家族の形態があたりまえだったのだろう。僕がまだ小学生だったころ、夏休みにはいつも母親の実家に戻り、親戚一同みな一つ屋根の下で数週間を過ごした楽しい記憶が残っているが、マリアナの家族は毎日がそんな感じなのだ。

僕は別にここで、どんな生活が人間にとって一番幸せなのか、などと問題提起をするつもりはない。ただ、僕にとってこの家族と過ごす数日間はいつも、普段の生活の中で忘れてしまっていることを思い出させてくれる貴重な時間、という気がするのだ。

こんな家族と巡り会わせてくれたマリアナに、あらためて感謝したいと思う。