Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

不思議な経験

2009-03-13 01:18:52 | 中南米
マリアの命があと2、3日かも知れないという彼女の弟からの電話をうけて、慌てて先週金曜の夜にメキシコに戻ってきたが、 彼女は体調の善し悪しを繰り返しながらもなんとか持ち直している。

メールのチェックと、写真の編集および電送をしなくてはならなかったので、昨夜都市部に戻ってきた。彼女の家の庭に置かれたベッドで、毎晩襲ってくる蚊と格闘しながらろくに眠れない6日間を過ごしたので、ちょっとした息抜きもしようと思っている。数日間ここで過ごしてから、また来週マリアの村へ戻る予定だ。昨夜は久しぶりにお湯のシャワーを浴びられたのも助かった。

数日前に、実に興味深い体験をした。

マリアのために、地元の教会のメンバーたちが彼女の家を訪れた。ベッドサイドで歌を唱い、聖書を読んで一通りの礼拝をおこなうと、司祭がマリアの額に手を置き、他のメンバーたちもみな彼女に向かって手をかざしながら、熱心に祈りはじめた。

マリアは眼をつぶり、しばらくの間じっとそれを受け止めていたが、突然身体が拒絶反応をしめしたように、司祭の手を激しく振り払い身悶えだした。そんなマリアの反応にも関わらず、司祭たちが強い調子で祈りを続けると、次第に身体から力が抜けて彼女はぐったりとなり、まるで眠っているかのように静かになった。

祈りが終わると、なんとマリアはまるで憑き物がとれたかのようにすっきりとした顔になり、元気を取り戻したのだ。

その日は一日中彼女の体調は悪く、寝たきりだったにも関わらず、祈りが終わってからのマリアは笑顔でペラペラとよく喋るまでに元気になった。

余命を数日と宣告された末期のがん患者だ。数分の祈りをうけただけでそう簡単に体調が良くなるとは信じ難かったが、それでも目の前で見せられた現実は否定しようがない。僕はなんともいいようのない驚きにつつまれてしまった。

「私にもどうしてかわからないんだけど、祈りを受けた後に急に元気になったのよ。。。」

翌日マリアにそのときの感じを尋ねたのだが、彼女自身にも説明がつかないようだった。

彼女のがんが完治したとかいう奇跡がおこったわけではないが、それでもそれは驚愕に値する光景だったし、まだまだ医学や科学では説明できないこともあるものだとあらためて思い知らされた一夜だった。