Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

逗子の写真展

2006-01-08 11:12:51 | 写真展・雑誌掲載
僕の写真展が逗子で開かれている。

人ごとのように書いてしまったが、「僕の」というよりは「じょじょさんの写真展」、といったほうがしっくりくるからかも知れない。

じょじょさんという女性は、90年代(だと思う)に海外青年協力隊として西アフリカのリベリアに赴任していた助産師だ。その後、旦那さんの仕事の関係もあって2年程おなじ西アフリカのコートジボアールで生活し、昨年の夏に日本に帰られた。

内戦後1年がたったリベリアを再び訪れるところだった2004年8月のある日、パリの空港で乗り継ぎの飛行機を待っていると、ふと僕の耳に日本語がはいってきた。アフリカ行きの飛行機を待つゲートで日本人と出会うことはほとんどない。子供連れの家族だったこともあって、めずらしくてちょっと声をかけてみた。それがじょじょさんの一家だった。

リベリアの取材が終わってから、コートジボアールのお宅で日本食を御馳走になったりしてお世話になった。その後はメールでお付き合いさせていただいているが、アフリカ、特に西アフリカにとても強い思い入れをもっている女性である。

そのじょじょさんが、企画してくれた僕の写真展が先週の木曜日から開かれている。

彼女の人徳で集まった友人、知人達からのサポートもあっただろうが、写真に関して全くの素人の彼女が、たった一人で企画からビラ配り、展示までをおこなってくれた。たびたび彼女のホームページで準備期間の近況を拝見させていただいていたが、その情熱にはなみなみならぬものがあり、だからついに開催にこぎつけたときはまさに「じょじょさんの写真展」というべきものになっていたのだ。

2年前に拙書「ぼくの見た戦争」が出版されたあとも、多くのボランティアの人々の手によって日本の各地で僕の写真展を開くことができた。なかにはじょじょさんのようにたった一人で企画し、開催してくれた場所もあった。

本のあとがきにも記したように、以前の僕には「自己満足」のために写真を撮っている、という気持ちが強かった。いまでもそういう気持ちがあることには変わりはないし、自己満足なくしては人の心も動かせないと思っている。しかし、激しい内戦を経験し、その後のリベリアの人々と接していくうちに、だんだんと別な感情も芽生えてきた。

撮る者には撮ることに対する責任がある。

僕の撮った写真を見た人達の気持ちを、結果として紛争地で苦しむ人々を助ける行動に結びつけること。。。そんな当たり前とでもいえる「撮る者の責任」が最近ようやく明白に見えるようになってきたような気がするのだ。新聞や雑誌の読者や、写真展に足を運んでくれた人々からの募金で、少数ではあるにせよリベリアの子供達の学費をまかなったり、家庭を助けることができるようになった。

写真を撮るときにはたった一人でも、どんな形であれそれが公の場に発表されるまでには多くの人々が関わることになる。じょじょさんをはじめ、こういった人達の尽力があるからこそ僕の写真の存在価値がでてくる、ともいえるのだ。



(写真展の詳細はじょじょさんのページへ)

http://plaza.rakuten.co.jp/shasintenseikou/