アメリカでは今、法の規制をかいくぐる「脱法ドラッグ」の問題が深刻化しています。先月、アメリカで起きたショッキングな事件をきっかけに規制の動きも出てきています。警官に名前を問われ、にやにやと笑う男。そのわずか数十秒後には、おびえた様子を見せ、動物のように吠え始めました。取り締まりの警察官が撮影したこの映像。男は「バスソルト」と呼ばれるものを服用していました。直訳すれば「入浴剤」ですが、実は「脱法ドラッグ」の一種を表す隠語です。この「バスソルト」をめぐって、あるショッキングな事件が南部のフロリダ州で起きました。
先月26日、マイアミの高速道路脇で、ホームレスの男性の顔にかみついていた全裸の男が、通報で駆けつけた警察官に射殺されました。被害者の男性は、顔の4分の3を失いながらも一命をとりとめましたが、この一件は、「マイアミ・ゾンビ事件」と呼ばれ、全米に衝撃を与えました。男は犯行前に「バスソルト」を服用したと報じられています。
首都ワシントンから車で3時間。バージニア州オーガスタ郡にある保安官事務所にその「バスソルト」がありました。
「ここにあるのが全部バスソルトです。(Q.これは入浴剤ですか?)いや、入浴剤ではないです。これは薬物です。何のため、どのように作ったかも分かりません」(ロイド捜査官)
この白い粉の乱用が全米で大きな問題になっているといいます。
「捜査のためにこれを40ドル(約3200円)で、この地区で買いました。安く、入手が簡単です。ポケットに入れていても捜査員は何もできません。違法ではないので」(ロイド捜査官)
「バスソルト」は服用後の症状として、興奮、そして極度の不安が交互に襲ってくるといいます。
「覚醒剤やコカインの9~13倍の効き目といわれています。17年、麻薬捜査に関わってきたが、こんなに人をダメにする薬は見たことない」(ロイド捜査官)
このオーガスタ郡で「バスソルト」の乱用が初めて確認されたのは2010年のこと。それからわずか2年弱で、数にして人口の2割が手を出すという信じられない事態に陥りました。今では、職務質問の際に、わざわざ「バスソルト」の使用を確認しています。この問題、ついには司法長官が警鐘をならす事態にまでなりました。
「バスソルトと呼ばれる合成ドラッグは、幅広い年齢層に広まっている。すぐに対策にあたらないと他の麻薬のように広がってしまう」(ホルダー司法長官)
実は「バスソルト」の乱用はすでに日本でも始まっています。広島では、形状が小麦粉=メリケン粉に似ているとして「メリーちゃん」などの隠語で呼ばれ、乱用が急増しているのを捜査当局が把握。厚生労働省は5月、「バスソルト」の多くに含まれる「MDPV」と「メフェドロン」という薬物を麻薬指定する方針を固めました。しかし、すでに「MDPV」を規制しているバージニアでは限界に直面していました。
「規制しても、すぐまがい物、類似品が出回る。製造・販売業者を摘発して供給源を絶たなければならない」(ロイド捜査官)
一部の州では、「バスソルト」の使用や販売を規制する動きも出ていますが、「脱法ドラッグ」や「脱法ハーブ」を根絶する手立てはないのが実情です。
@すごい事になっていますね。